国税庁の2027年度予算概算要求には、数字以上に注目したい変化があります。
それが、補正予算依存から脱却し、恒常的な施策は当初予算に計上するという方針です。
これまで補正予算で対応していた職場環境整備・安全対策経費や酒類業振興事業経費が、2027年度は当初予算の概算要求に盛り込まれました。
その結果、一般経費は前年度当初予算より24.2パーセント増えています。
では、そもそも当初予算と補正予算は何が違うのでしょうか。
この違いを知ると、予算の増減率を見るときに注意すべきポイントも分かります。
当初予算とは何か
当初予算とは、新しい年度が始まる前に、その年度に必要になる歳入と歳出をあらかじめ見積もって編成する予算です。
国の行政機関は、翌年度にどのような仕事を行い、そのためにいくら必要になるのかを検討します。
その過程の一つが概算要求です。
国税庁も2027年度に必要となる予算として6570億4700万円を要求しています。
つまり当初予算は、その年度の行政を運営するための基本となる予算と考えると分かりやすいでしょう。
補正予算とは何か
一方、補正予算は年度の途中で予算を追加したり変更したりするためのものです。
当初予算を編成した時点では予想できなかった出来事が起きることがあります。
経済情勢が急激に変化する。
大規模な災害が発生する。
緊急の政策対応が必要になる。
こうした場合、当初予算だけでは十分に対応できないことがあります。
そこで年度途中に必要な予算を追加するのが補正予算です。
本来は、当初段階では見込みにくかった事情へ対応するための重要な仕組みです。
なぜ補正予算への依存が問題になるのか
問題になるのは、毎年必要になることが分かっている経費まで補正予算で対応するようになる場合です。
例えば、ある施策を毎年実施することが事前に分かっているのであれば、本来は年度開始前から必要な金額を見積もることができます。
それでも当初予算には十分な金額を計上せず、後から補正予算で追加する状態が続けば、年度当初の予算だけを見ても実際に必要となる支出の全体像が分かりにくくなります。
そのため、恒常的な施策は当初予算に計上するという考え方が重要になります。
今回は二つの経費が当初予算へ
国税庁の2027年度予算概算要求では、これまで補正予算で対応していた二つの経費が当初予算に盛り込まれています。
一つが職場環境整備・安全対策経費です。
もう一つが酒類業振興事業経費です。
この変更によって、前年度当初予算との比較では大幅な増額となりました。
ここに予算数字を見るときの注意点があります。
職場環境整備・安全対策経費は約2.6倍
職場環境整備・安全対策経費は180億6600万円が要求されています。
前年度当初予算より111億7500万円増え、約2.6倍です。
数字だけを見ると、国税庁が突然、職場環境や安全対策への支出を大幅に拡大したように見えます。
しかし、今回の増額には、これまで補正予算で対応していた経費を当初予算へ移した影響があります。
したがって、約2.6倍という数字をそのまま新しい支出の増加と考えることはできません。
予算をどこに計上するかが変わった影響も含まれているからです。
酒類業振興事業経費も約2.4倍
酒類業振興事業経費は53億2200万円です。
前年度当初予算より31億2000万円増え、約2.4倍となっています。
この経費についても、従来補正予算で対応していたものが当初予算に盛り込まれています。
さらに、53億2200万円については成長投資などを重点的に推進するための強く豊かな日本投資枠を活用して要求されています。
ここでも、単純な前年比だけでは予算の実態を読み取れません。
一般経費24.2パーセント増にも影響する
2027年度の国税庁の一般経費は999億円です。
前年度当初予算より195億円増え、増加率は24.2パーセントとなっています。
非常に大きな伸び率です。
しかし、その背景には今回説明した予算区分の変更があります。
これまで補正予算に計上されていたものを当初予算に移せば、当然ながら当初予算だけを比較した増加率は大きくなります。
予算の記事を読むときには、前年比何パーセント増という数字だけを見るのではなく、その増加理由まで確認する必要があります。
当初予算へ移すと何が分かりやすくなるのか
恒常的な施策を当初予算へ計上すれば、その年度に通常必要となる行政コストが見えやすくなります。
毎年100必要になる事業について、当初予算に60しか計上せず、残り40を後から補正予算で追加していたとします。
当初予算だけを見ると、その事業には60しか必要ないように見えます。
最初から100を計上すれば、年間に必要となる金額を把握しやすくなります。
行政が通常どの程度のお金を必要としているのかを知るうえでも、当初予算への計上は重要です。
補正予算そのものが悪いわけではない
ここで注意したいのは、補正予算そのものに問題があるわけではないということです。
災害や急激な経済変動など、年度開始前には予測できない出来事があります。
そうした事態に迅速に対応するため、補正予算は必要な制度です。
重要なのは、緊急的、一時的な支出と、毎年必要となる恒常的な支出をできるだけ区別することです。
恒常的な経費を当初予算へ計上することで、補正予算を本来必要となる緊急対応などに使いやすくするという考え方もできます。
予算は前年比だけで判断しない
今回の国税庁の概算要求は、予算数字の読み方を考えるうえでも分かりやすい例です。
一般経費が24.2パーセント増えた。
職場環境整備・安全対策経費が約2.6倍になった。
酒類業振興事業経費が約2.4倍になった。
数字だけを並べれば大幅な予算拡大です。
しかし、前年まで補正予算に入っていた経費が当初予算へ移っているのであれば、比較する基準そのものが変わっています。
予算を見るときには、金額、増減率、増減理由の三つをセットで確認することが重要です。
結論
国税庁の2027年度予算概算要求では、補正予算依存から脱却し、恒常的な施策を当初予算へ計上する方針が明確になりました。
その結果、これまで補正予算で対応していた職場環境整備・安全対策経費と酒類業振興事業経費が当初予算に盛り込まれています。
これが一般経費24.2パーセント増という数字にも影響しています。
当初予算は、その年度に通常必要になる支出を年度開始前に見積もる基本的な予算です。
補正予算は、年度途中に生じた新しい事情などへ対応するために予算を追加、変更する仕組みです。
毎年必要になる支出をできるだけ当初予算へ計上すれば、年間に必要となる行政コストの全体像が見えやすくなります。
予算を見るときに大切なのは、前年より何パーセント増えたかだけではありません。
なぜ増えたのか。
新しい支出が増えたのか。
それとも補正予算から当初予算へ移ったのか。
そこまで確認することで、予算数字の本当の意味が見えてくるのです。
参考
税のしるべ 2026年9月7日 国税庁の9年度予算概算要求と定員・機構要求、租税回避対策企画官の新設を