国税庁の一般経費が24.2パーセント増えたのはなぜか 999億円の使い道を読み解く編

政策

国税庁の2027年度予算概算要求額は6570億4700万円です。

このうち人件費は5571億円で、全体のおよそ85パーセントを占めています。

一方、人件費以外の一般経費は999億円です。

注目したいのは、その増え方です。

人件費が前年度当初予算より14億円減少しているのに対し、一般経費は195億円増え、増加率は24.2パーセントに達しています。

なぜ一般経費だけがこれほど大きく増えているのでしょうか。

数字の中身を見ると、国税庁の予算編成の変化が見えてきます。

一般経費とは何か

国税庁の予算を大きく分けると、人件費とそれ以外の一般経費があります。

人件費は税務職員などの給与を中心とする費用です。

一方の一般経費には、税務行政を実際に運営するために必要となるさまざまな費用が含まれます。

納税者への相談対応。

納付手段の整備。

税務署などの運営。

職場環境や安全対策。

酒類業の振興。

こうした費用が一般経費として計上されます。

職員がいても、仕事をするための施設やシステム、設備などがなければ税務行政を動かすことはできません。

一般経費は999億円へ

2027年度の一般経費の要求額は999億円です。

前年度当初予算から195億円増えました。

増加率は24.2パーセントです。

これだけを見ると、国税庁が新しい事業を大量に始めるために経費が急増したようにも見えます。

しかし、今回の増加には予算の計上方法を変更した影響があります。

重要なのが、補正予算への依存から脱却するという方針です。

補正予算から当初予算へ

2027年度の予算概算要求では、恒常的な施策について当初予算に計上する方針が明確になりました。

これまで補正予算で対応していた経費の一部が、最初から当初予算に盛り込まれるようになったのです。

代表的なのが職場環境整備・安全対策経費と酒類業振興事業経費です。

そのため、前年度の当初予算だけと比較すると大幅な増加に見えます。

予算を見るときには、金額だけでなく、これまでどの予算で支出されていたのかも確認する必要があります。

職場環境整備と安全対策が大幅増

職場環境整備・安全対策経費は180億6600万円が要求されています。

前年度当初予算に比べて111億7500万円増え、約2.6倍となっています。

非常に大きな増加です。

ただし、これまで補正予算で対応していた経費が当初予算へ移ったことが大きく影響しています。

毎年必要になる可能性が高い支出であれば、補正予算ではなく当初から必要額を見込んでおくという考え方です。

予算額の増加と実際の行政サービスの拡大を区別して見る必要があります。

酒類業振興事業経費も約2.4倍

酒類業振興事業経費は53億2200万円が要求されています。

前年度当初予算と比べると31億2000万円増え、約2.4倍です。

この53億2200万円については、成長投資などを重点的に推進するための強く豊かな日本投資枠を活用して要求されています。

国税庁というと税金を徴収する行政機関という印象がありますが、酒類行政も重要な業務の一つです。

予算の内訳を見ると、国税庁の仕事が税務調査や徴収だけではないことも分かります。

納税者利便向上経費も30.1パーセント増

一般経費の中で、納税者に直接関係しやすいのが納税者利便向上経費です。

2027年度は36億2000万円が要求されています。

前年度当初予算より8億3700万円増え、増加率は30.1パーセントです。

このうち22億円が電話相談センターの運営経費です。

さらに、キャッシュレス納付など納付手段の多様化に関係する経費として9億円が要求されています。

税務行政では、正しく税金を徴収するだけでなく、納税者が正しく申告し、納付しやすい環境を整えることも重要になっています。

税務署などを動かす経費は660億円

庁局署一般経費は660億2500万円です。

前年度当初予算より39億3100万円増え、6.3パーセントの増加となっています。

この中には、能登半島地震で被災した石川の輪島税務署について、合同庁舎への移転に関係する経費1000万円も含まれています。

全国に税務行政の拠点を持つ国税庁では、施設の維持や災害への対応も必要です。

税務行政を継続するための基盤を維持する費用も、一般経費の重要な部分になります。

一般経費の増加をどう見るか

一般経費が24.2パーセント増えたという数字だけを見ると、国税庁の支出が急激に膨張しているように感じるかもしれません。

しかし、今回の場合には注意が必要です。

従来、補正予算に計上されていた経費が当初予算へ移されたため、当初予算同士を比較すると増加率が大きく見えるからです。

これは予算を見るうえで重要なポイントです。

前年比だけではなく、何が増えたのか。

新しい事業なのか。

既存事業の拡充なのか。

それとも計上する予算の区分が変わったのか。

そこまで確認することで、数字の意味を正しく理解できます。

当初予算に計上する意味

恒常的な施策を当初予算に計上することには意味があります。

本来、毎年必要になることが分かっている支出であれば、年度途中の補正予算に頼るより、最初から年間の予算に組み込んだ方が予算の全体像を把握しやすくなります。

どの政策にどれだけのお金を使うのかが、年度開始前から見えやすくなるからです。

国税庁の一般経費が大きく増えた背景には、単なる支出増だけでなく、予算をどのように組むのかという考え方の変化もあるのです。

結論

2027年度の国税庁の一般経費は999億円となり、前年度当初予算より195億円、24.2パーセント増加しました。

しかし、この24.2パーセントという数字だけで国税庁の経費が急拡大したと判断するのは早計です。

大きな要因となっているのが、これまで補正予算で対応していた職場環境整備・安全対策経費や酒類業振興事業経費を当初予算へ計上するようになったことです。

一方で、納税者利便向上経費は36億2000万円となり、電話相談センターに22億円、キャッシュレス納付など納付手段の多様化に9億円が要求されています。

国税庁の予算を見ると、税務調査や徴収だけではなく、納税者サービス、デジタル化、施設、安全対策など幅広い分野にお金が必要であることが分かります。

予算を読むときに重要なのは増減率だけではありません。

そのお金が何に使われるのか、そして前年と比べて予算の計上方法が変わっていないかまで確認することが、数字の意味を理解するために重要なのです。

参考

税のしるべ 2026年9月7日 国税庁の9年度予算概算要求と定員・機構要求、租税回避対策企画官の新設を

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