国税庁の2027年度予算概算要求額は6570億4700万円です。
そのうち人件費は5571億円に達します。
予算全体のおよそ85パーセントです。
税務行政ではデジタル化が進み、電子申告やキャッシュレス納付なども普及しています。それでも、なぜ国税庁の予算の大部分を人件費が占めるのでしょうか。
その理由を考えると、税務行政には機械だけでは完結しにくい仕事が数多く残っていることが分かります。
国税庁の予算は何に使われるのか
2027年度の国税庁の予算概算要求額6570億4700万円のうち、人件費は5571億円です。
残る一般経費は999億円となっています。
単純に見ると、国税庁の予算は設備やシステムより、人に対して多く使われていることになります。
税金を扱う行政機関という性格を考えると、この構造には理由があります。
税務では大量の情報を処理する一方、最終的には個々の事実関係や法律関係を確認しなければならない場面が多いからです。
税務署の仕事は申告書を受け取るだけではない
税務署の仕事というと、確定申告書を受け取る場所というイメージがあるかもしれません。
実際の仕事はそれだけではありません。
納税者からの相談に対応する。
提出された申告内容を確認する。
税金が納付されているかを管理する。
必要に応じて税務調査を行う。
滞納が発生すれば徴収に対応する。
さらに税制改正があれば、新しい制度を周知する必要もあります。
こうした幅広い業務を全国で行うため、多くの職員が必要になります。
税務調査は人による判断が重要
特に人の役割が大きいのが税務調査です。
申告書の数字だけで課税関係のすべてを判断できるわけではありません。
帳簿や請求書を確認する。
契約内容を確認する。
取引先との関係を調べる。
資金の流れを確認する。
そして、それらの事実に税法を当てはめます。
同じ金額の取引であっても、その契約内容や実態によって税務上の扱いが異なることがあります。
税法の知識だけでなく、事実関係を把握して判断する能力が必要になります。
不正還付対策ではさらに人手が必要になる
国税庁が2027年度に重点を置いている分野の一つが消費税の不正還付対策です。
この分野だけで185人の増員を要求しています。
不正還付を確認する場合、申告書の数字だけでは判断できないことがあります。
本当に仕入れが行われたのか。
取引先は実在するのか。
商品は実際に移動したのか。
資金はどのように動いたのか。
こうした点を確認する必要があります。
複数の法人や取引先が関係すれば、さらに調査範囲が広がります。
データ分析によって疑わしい申告を抽出することはできても、その先の事実確認には人による調査が必要になる場合があります。
租税回避対策では専門性も必要になる
租税回避スキームへの対応では、さらに高度な専門性が求められます。
国税庁はこの分野で57人の増員を要求しています。
複数の法人や契約、金融取引などを組み合わせたスキームでは、一つ一つの取引だけを見ても全体像が分からない場合があります。
取引を一連のものとして分析し、その経済的な意味や税務上の扱いを検討する必要があります。
さらに現行税制で対応できない問題であれば、財務省主税局と連携して制度改正につなげることも考えられます。
税務職員には単なる事務処理能力だけではなく、分析力や専門知識も求められるようになっています。
納税者への相談対応も人の仕事
税務行政には、不正を見つける仕事だけではありません。
正しい申告を支援することも重要な仕事です。
2027年度の納税者利便向上経費として36億2000万円が要求されています。
そのうち電話相談センターの運営経費は22億円です。
税制は複雑で、個人や事業者によって事情も異なります。
一般的な情報はインターネットで提供できても、自分の場合はどうなるのかという個別の疑問は残ります。
こうした相談への対応にも人員が必要になります。
税制改正のたびに仕事が増える
税制は毎年のように改正されます。
制度が変われば、国税庁は新しい制度を実際に動かさなければなりません。
例えば、飲食料品に係る消費税率の引下げへの対応として、国税庁は74人の時限定員を要求しています。
個別相談窓口を設置する。
説明会へ講師を派遣する。
増加が見込まれる還付申告に対応する。
法律を改正するだけでは制度は動きません。
全国の納税者へ新しい制度を適用するためには、実務を担う人が必要になります。
デジタル化すれば人は不要になるのか
税務行政のデジタル化が進めば、人員を大幅に減らせるようにも思えます。
確かに、電子申告やオンライン手続き、自動処理などによって効率化できる業務はあります。
しかし、デジタル化によって人の仕事がすべてなくなるわけではありません。
むしろ単純な事務処理を機械に任せることで、職員をより高度な仕事へ振り向けることができます。
大量の申告データから調査対象を絞り込む。
その後、職員が取引実態を詳しく調査する。
こうした役割分担が進む可能性があります。
デジタル化は人を完全に置き換えるというより、人が担当する仕事を変えていくものと考えた方が分かりやすいでしょう。
人数だけでなく専門性が重要になる
今後の税務行政では、職員数だけでなく職員の専門性がより重要になります。
取引の国際化。
金融商品の複雑化。
デジタル資産の普及。
租税回避スキームの巧妙化。
こうした変化に対応するには、高度な税法知識や会計知識、データ分析能力などが必要になります。
国税庁が税務大学校の体制強化を要求していることも、人材育成の重要性が高まっていることを示しています。
税務行政は大量の人員を必要とするだけでなく、その人員を高度化する必要もあるのです。
結論
国税庁の2027年度予算概算要求額6570億4700万円のうち、人件費は5571億円です。
予算全体のおよそ85パーセントを占めます。
この数字から分かるのは、税務行政が依然として人の知識と判断に大きく依存しているということです。
税務調査では取引の実態を確認する必要があります。
不正還付では商品の流れや資金の動きを追う必要があります。
租税回避対策では複雑な取引を分析する専門性が求められます。
さらに納税者からの相談や税制改正への対応もあります。
デジタル化によって単純な仕事は効率化されていくでしょう。
その一方で、職員にはより高度な分析や判断が求められるようになります。
国税庁の予算の85パーセントが人件費であるという数字は、税務行政が単なる事務処理ではなく、人による判断と専門性によって支えられていることを表しているのです。
参考
税のしるべ 2026年9月7日 国税庁の9年度予算概算要求と定員・機構要求、租税回避対策企画官の新設を