無期雇用フルタイム社員にも同一労働同一賃金は適用されるのか 正社員同士の待遇差も問題になる可能性編

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同一労働同一賃金というと、

正社員とパート社員

正社員と契約社員

の待遇差を規制する制度だと考えることが多いでしょう。

しかし、企業にはもう一つ判断が難しい雇用区分があります。

無期雇用のフルタイム社員です。

たとえば正社員と同じように期間の定めなく雇用され、週5日、1日8時間働いているものの、

転勤がない

職種が限定されている

管理職への昇進がない

賃金制度が正社員とは違う

という社員です。

このような社員は、いわゆる非正規社員とは少し性格が違います。

有期雇用ではありません。

短時間労働者でもありません。

では、正社員との間に大きな待遇差があったとしても、同一労働同一賃金の問題にはならないのでしょうか。

参考資料では、無期雇用フルタイム社員についてはパートタイム有期雇用労働法の直接の対象とはならない一方、同一労働同一賃金ガイドラインの趣旨を考慮することが考えられるとされています。

ただし、この問題については裁判例の判断も分かれているため、単純に結論を出すことはできません。

無期雇用フルタイム社員とは何か

無期雇用フルタイム社員とは、その名前の通り、

雇用期間の定めがなく

フルタイムで働く

社員です。

一般的な正社員も無期雇用フルタイムです。

しかし企業によっては、一般的な正社員とは別に、

限定正社員

職種限定社員

勤務地限定社員

無期契約社員

などの雇用区分を設けている場合があります。

たとえばA社員とB社員がいたとします。

A社員は一般的な正社員です。

全国転勤があり、将来的には管理職になる可能性があります。

B社員も期間の定めなく働き、勤務時間もA社員と同じです。

しかし勤務地が限定され、管理職への昇進も予定されていません。

この場合、A社員もB社員も無期雇用フルタイムですが、会社の人事制度上は別の社員区分になっていることがあります。

パート有期労働法の対象との違い

同一労働同一賃金を考えるときに重要になる法律が、パートタイム有期雇用労働法です。

この法律では、短時間労働者や有期雇用労働者と通常の労働者との間の不合理な待遇差などが問題になります。

ところが無期雇用フルタイム社員は、

短時間労働者ではない

有期雇用労働者でもない

という場合があります。

そのため、参考資料では、こうした無期雇用フルタイム社員については、パートタイム有期雇用労働法の直接の対象とはならないことが説明されています。

ここは一般的な契約社員との大きな違いです。

1年契約のフルタイム契約社員であれば有期雇用労働者です。

一方、期間の定めがなく、正社員と同じ時間働く社員であれば、その法律の直接の対象から外れる場合があります。

無期転換した社員はどうなるのか

この問題が分かりやすく表れるのが、有期契約から無期契約へ転換した社員です。

たとえば1年契約で働いていた契約社員が、無期労働契約へ転換したとします。

働く時間は変わりません。

担当している仕事もほとんど変わりません。

賃金制度も従来の契約社員用の制度がそのまま使われています。

しかし、雇用契約だけは有期から無期に変わりました。

有期雇用だったときにはパートタイム有期雇用労働法との関係を検討する必要がありましたが、無期雇用フルタイムになれば、その法律による不合理な待遇差の禁止がそのまま適用されるわけではありません。

ここに制度上の難しさがあります。

法律の直接適用とガイドラインの趣旨は別問題

では、無期雇用フルタイム社員については同一労働同一賃金をまったく考えなくてよいのでしょうか。

参考資料では、そのようには整理されていません。

無期雇用フルタイム社員についても、同一労働同一賃金ガイドラインの趣旨を考慮することが考えられるとされています。

つまり、

法律が直接適用されるか

という問題と、

同一労働同一賃金という考え方をまったく無視してよいか

という問題は分ける必要があります。

参考資料では、無期雇用フルタイム社員についてもガイドラインの趣旨を考慮することが考えられる一方、裁判例の判断が分かれていることが指摘されています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…

労働契約法との関係

無期雇用フルタイム社員については、パートタイム有期雇用労働法の直接の適用がないからといって、会社がどのような待遇差でも自由に設けられるということにはなりません。

参考資料では、このような社員の待遇差をめぐって労働契約法上の問題が争われる場合があることが取り上げられています。

ここで注意したいのは、

正社員と待遇が違う

という事実だけで直ちに違法になるわけではないことです。

なぜ別の社員区分を設けているのか。

職務内容はどのように違うのか。

責任はどのように違うのか。

転勤や配置転換の範囲は違うのか。

昇進や人材育成の仕組みは違うのか。

こうした実態が重要になります。

正社員同士でも待遇が違う会社は多い

現在の企業には、一種類の正社員しかいないとは限りません。

たとえば、

全国転勤型の正社員

地域限定正社員

職種限定正社員

一般職

専門職

など、複数の社員区分を設けている会社があります。

いずれも無期雇用でフルタイムということがあります。

この場合、

無期雇用だから全員同じ待遇にしなければならない

というわけではありません。

社員区分によって職務や責任、人材活用の仕組みが違えば、待遇にも違いが生じることがあります。

重要なのは、その待遇差と社員区分の違いとの間に、どのような関係があるのかということです。

社員区分の名前だけでは判断できない

たとえば会社が、

総合職

地域限定職

という二つの社員区分を設けているとします。

制度上、総合職には全国転勤があります。

地域限定職には転勤がありません。

そのため賃金にも差があります。

この場合、制度上の違いだけを見ると、待遇差にも一定の理由があるように見えます。

しかし実際には、総合職の大部分が長期間同じ勤務地で働き、地域限定職とほぼ同じ仕事をしているかもしれません。

逆に、総合職には実際に全国規模の配置転換があり、管理職候補として教育や経験を積ませている場合もあります。

同じ社員区分でも、制度と実態が一致しているかどうかで事情は変わります。

これは、これまでの記事で取り上げてきた正社員人材確保目的の問題にも共通します。

参考資料でも、正社員の人材活用については、責任や配置転換、賃金制度、採用、人材育成などの客観的な実態が重視されることが説明されています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…

裁判例で判断が分かれている

無期雇用フルタイム社員の問題が難しい理由の一つが、裁判例の判断が必ずしも一つに固まっていないことです。

参考資料でも、この点について裁判例が分かれていることが指摘されています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…

したがって、

無期雇用フルタイムだから同一労働同一賃金とは無関係

とも、

正社員と同じ仕事なら必ず同じ待遇にしなければならない

とも単純にはいえません。

具体的な社員区分や待遇制度、働き方などを確認する必要があります。

ガイドラインにも限界がある

さらに注意したいのは、同一労働同一賃金ガイドライン自体の位置付けです。

前の記事で説明したように、ガイドラインは法律そのものではありません。

裁判所を法的に拘束するものでもありません。

そのため、

無期雇用フルタイム社員にもガイドラインの考え方をそのまま当てはめれば結論が出る

というわけではありません。

参考資料では、ガイドラインが厚生労働省による法律の解釈を示す重要な資料である一方、裁判所が必ずその通りに法律を解釈、適用するわけではないことも説明されています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…

無期雇用フルタイム社員では、この点を特に慎重に考える必要があります。

企業は無期雇用社員も含めて制度を見る

2026年改正への対応では、企業は有期雇用社員やパート社員だけを確認して終わりにしないほうがよいでしょう。

自社にどのような社員区分があるのかを整理することも重要です。

正社員。

地域限定正社員。

職種限定正社員。

無期契約社員。

有期契約社員。

パート社員。

このように複数の雇用区分がある場合、それぞれについて、

仕事は何が違うのか

責任は何が違うのか

配置変更の範囲は何が違うのか

待遇は何が違うのか

を整理します。

参考資料でも、2026年改正を契機として、職群、責任、職務や配置変更の範囲などを含め、人材活用や賃金制度そのものを見直すことが提案されています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…

雇用区分だけが残っていないかを確認する

特に確認したいのが、昔作った雇用区分がそのまま残っているケースです。

制度を作った当初は、

正社員は幅広い仕事を担当する

契約社員は限定された仕事を担当する

という明確な違いがあったとします。

その後、契約社員の仕事が広がりました。

無期転換した社員も増えました。

長期間勤務する人も増えました。

その結果、現在では正社員とほとんど同じ仕事をしている無期雇用社員が存在しているかもしれません。

それにもかかわらず、

昔から別の社員区分だから

という理由だけで待遇差を維持していれば、制度と実態のずれが大きくなります。

2026年改正を機に確認したいのは、まさにこのような部分です。

正社員への転換も選択肢になる

無期雇用フルタイム社員が長期間にわたって正社員と同じような仕事をしている場合には、雇用区分そのものを見直す方法もあります。

参考資料でも、長期間雇用され、正社員と同じような業務を担当している非正規社員については、正社員への転換も選択肢として示されています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…

待遇差を一つずつ修正するより、

なぜ別の社員区分にしているのか

という根本的な問題を見直したほうがよい場合もあります。

同一労働同一賃金への対応は、単なる賃金調整ではなく、人材活用の仕組みそのものを見直すきっかけにもなるのです。

結論

無期雇用フルタイム社員は、有期雇用労働者でも短時間労働者でもないため、パートタイム有期雇用労働法による同一労働同一賃金の規制がそのまま直接適用されるとは限りません。

しかし、

無期雇用フルタイムだから正社員との待遇差はまったく問題にならない

と考えるのも適切ではありません。

参考資料では、こうした社員についても同一労働同一賃金ガイドラインの趣旨を考慮することが考えられる一方、裁判例の判断は分かれているとされています。

そのため企業が確認すべきなのは、雇用区分の名前ではなく実態です。

正社員と仕事はどのように違うのか。

責任は違うのか。

配置転換の範囲は違うのか。

人材育成や昇進の仕組みは違うのか。

そして、その違いが実際の待遇差とどのようにつながっているのか。

無期雇用フルタイム社員の問題は、同一労働同一賃金が単純な正社員対非正規社員という二つの区分だけでは整理できなくなっていることを示しています。

2026年改正を契機として、企業には待遇だけでなく、そもそも自社の社員区分が現在の働き方の実態に合っているのかまで確認することが求められるのです。

参考

企業実務 2026年9月号 同一労働同一賃金改正対応の総点検

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