東京のマンション価格は高い。
多くの日本人はそう感じています。
都心の新築マンションは1億円を超えることが珍しくなくなり、タワーマンションの高層階や最上階になると数億円に達します。
「とても買えない」
そう思う人も少なくないでしょう。
ところが同じ物件を見て、海外の富裕層は「意外に安い」と感じることがあります。
なぜ同じ不動産を見て評価がこれほど違うのでしょうか。
その背景には、多くの日本人が気づいていない「為替錯覚」があります。
価格は同じでも価値は違って見える
例えば東京都心に3億円のマンションがあるとします。
日本人にとっては3億円です。
しかし海外の投資家は自国通貨で考えます。
1ドル100円の時代なら3億円は300万ドルでした。
ところが1ドル160円なら約187万ドルです。
物件価格は変わっていません。
それでもドルを持つ人にとっては約4割も安くなったように見えるのです。
これは不動産が値下がりしたわけではありません。
円の価値が下がった結果です。
しかし購入者の立場から見れば、実質的なバーゲンセールに映ります。
日本人は円で考え、外国人はドルで考える
私たちは日常的に円で生活しています。
給料も円です。
預金も円です。
住宅価格も円で判断します。
しかし海外投資家は違います。
彼らはドルやシンガポールドル、人民元などで資産を管理しています。
つまり同じ東京のマンションでも、
日本人は「3億円」
外国人は「187万ドル」
として見ているのです。
視点が違えば評価も変わります。
私たちが高いと感じるものを、海外投資家は安いと感じる理由がここにあります。
東京は世界主要都市の中ではまだ割安
さらに海外投資家は東京だけを見ていません。
比較対象はニューヨークやロンドン、シンガポールです。
世界の超一等地では、高級マンションが10億円、20億円を超えることも珍しくありません。
その中で東京を見ると、
「治安が良い」
「インフラが優れている」
「政治が安定している」
「所有権が守られている」
にもかかわらず価格は相対的に安いと映ります。
日本人は日本国内の物件同士を比較しますが、海外投資家は世界中の都市と比較しているのです。
所得の差も大きい
為替だけではありません。
所得の差もあります。
日本では30年間、賃金上昇が限定的でした。
一方で米国やシンガポールなどでは高所得層の収入が大きく増えています。
年収100万ドル以上の経営者や投資家にとって、数億円の不動産購入は資産配分の一部に過ぎません。
しかし日本の一般的な会社員にとっては人生最大の買い物です。
同じ価格でも負担感が全く異なります。
ここにも認識のズレが生まれます。
世界のお金が東京へ流れ込む理由
投資資金は常に有利な場所を探しています。
現在の東京は、
円安
政治的安定
高い生活水準
世界都市としての魅力
という条件を兼ね備えています。
海外から見れば非常に魅力的な投資先です。
そのため富裕層や投資ファンドの資金が流入します。
結果として価格が押し上げられます。
日本人が高いと感じる価格でも、海外投資家が買い続けるため価格が下がりにくくなるのです。
これは不動産だけの話ではない
実は同じ現象は株式市場でも起きています。
日本人は日経平均株価が高いと感じても、ドル建てで見るとまだ割安と評価されることがあります。
企業買収でも同じです。
円安になると日本企業が海外企業から安く見えるため、買収対象になりやすくなります。
つまり為替は不動産だけでなく、日本の資産全体の価値を変えてしまうのです。
日本人に必要な視点とは
この現象から学ぶべきことがあります。
それは「円だけで物事を見ない」ということです。
私たちは無意識のうちに円を基準に考えています。
しかし世界の資産市場はドルを中心に動いています。
これからの資産形成では、
円でいくらか
だけでなく、
世界から見てどう評価されるか
という視点が重要になります。
国際分散投資が注目される理由もここにあります。
結論
日本人が東京の不動産を高いと感じ、外国人が安いと感じる最大の理由は為替にあります。
円安によって東京の不動産は海外投資家から見ると大幅な割安商品になっています。
さらに世界主要都市との比較や所得格差も加わり、日本人と外国人の価格感覚は大きく異なっています。
私たちが感じている「高い」という感覚は、日本国内だけを見た視点かもしれません。
資産形成を考えるうえでは、円の物差しだけでなく世界の物差しで価値を見ることがますます重要になっていくのではないでしょうか。
参考
日本経済新聞 2026年6月22日 朝刊
「タワマン最上階、6割が現金購入 富裕層らがマネーゲーム 東阪都心部、高騰の一因 日経調査」