正社員が病気になって長期間働けなくなった場合には、病気休職制度を利用できる。
一方、契約社員やパート社員が同じように病気になった場合には、休職制度を利用できない。
このような制度を設けている会社があります。
病気休職は基本給や賞与とは違い、仕事の成果に対して支給される待遇ではありません。
病気などによって一時的に働けなくなった従業員について、すぐに雇用関係を終了させず、回復後に再び働けるようにするための制度です。
そのため、正社員と非正規社員の仕事内容や責任に違いがあったとしても、それだけで病気休職の待遇差を説明できるとは限りません。
特に契約更新を繰り返し、相応に長期間の勤務が見込まれている非正規社員については、
なぜ正社員には休職制度があり、自分にはないのか
という問題が生じます。
2026年の同一労働同一賃金ガイドライン改正では、病気休職や休暇についての記載も充実されています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…
病気休職とは何か
病気休職とは、従業員が病気やけがなどによって一定期間働けなくなった場合に、労働契約を終了させず、一定期間仕事を休むことを認める制度です。
会社の就業規則などで定められていることがあります。
たとえば従業員が長期療養を必要とする病気になったとします。
すぐに復職することはできません。
しかし数カ月療養すれば回復して再び働ける可能性があります。
この場合、病気休職制度があれば、一定期間休職したうえで復職を目指すことができます。
つまり病気休職には、
病気になったら会社を辞める
という結果を避け、雇用関係を維持する役割があります。
ここに同一労働同一賃金を考えるうえで重要なポイントがあります。
継続勤務との関係
病気休職について重要になるのが、従業員の継続勤務です。
病気休職制度によって一時的に仕事を休ませても、回復後に再び働いてもらうことができます。
会社から見れば、経験や知識を持つ従業員を失わずに済みます。
従業員から見れば、病気になったことだけを理由に、それまで続けてきた仕事を失わずに済みます。
つまり病気休職には、従業員の継続雇用を支える性質があります。
ここで、
正社員は長く働くから休職制度が必要だが、有期雇用社員は必要ない
と単純に考えることはできません。
有期雇用社員でも契約更新を繰り返し、相応に継続して勤務することが見込まれている場合があるからです。
有期雇用だから短期間とは限らない
たとえば1年契約の契約社員がいたとします。
契約書だけを見れば、雇用期間は1年間です。
しかし、その社員が毎年契約を更新し、すでに何年も同じ会社で働いている場合があります。
今後も契約更新が見込まれているかもしれません。
このような場合、
有期雇用だから短期的な雇用である
とは必ずしもいえません。
病気休職制度が継続雇用を確保するための制度であるならば、相応に継続的な勤務が見込まれる非正規社員についても、その制度の目的が当てはまる可能性があります。
参考資料でも、継続雇用確保目的との関係で、病気休職などについて長期的な勤務が見込まれる非正規社員との待遇差を検討する必要性が示されています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…
正社員と仕事内容が違っていても問題になる
病気休職の特徴は、仕事内容そのものへの対価ではないことです。
たとえば正社員には管理業務があり、契約社員には管理業務がないとします。
正社員には転勤があり、契約社員は勤務地限定だとします。
両者には明らかな働き方の違いがあります。
基本給や役職に関する待遇なら、こうした違いが重要な判断材料になります。
しかし病気休職についてはどうでしょうか。
病気になって一定期間働けなくなる可能性は、正社員にも契約社員にもあります。
また、病気から回復した後に再び働いてもらうという制度の目的も、継続勤務が見込まれる社員であれば共通する可能性があります。
そのため、
仕事内容が違うから休職制度も違ってよい
とは当然にはいえないのです。
日本郵便事件から分かること
病気休職について考えるうえでも、日本郵便事件に関する最高裁判例が重要になります。
この一連の裁判では、正社員と有期契約労働者との間に設けられた複数の待遇差が問題となりました。
参考資料では、この最高裁判例などを踏まえて2026年のガイドライン改正が行われ、病気休職や休暇についての記載が充実したことが説明されています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…
ここで重要なのは、病気休職について、
正社員か非正規社員か
という雇用区分だけで考えるのではなく、
相応に継続的な勤務が見込まれているか
という実態を見ることです。
継続勤務が見込まれているのであれば、病気になった際に雇用を維持し、回復後の復職につなげるという制度の目的は非正規社員にも当てはまり得ます。
給与保障とは分けて考える必要がある
病気休職を考える際には、
休職できるかどうか
と、
休職期間中に給与が支払われるかどうか
を分けて考えることも重要です。
病気休職制度があるからといって、必ず休職期間中の給与が全額支払われるというわけではありません。
会社によって休職制度の内容は異なります。
無給の休職制度もあり得ます。
したがって、
非正規社員にも病気休職を認めること
と、
正社員とまったく同じ給与保障をすること
は同じ問題ではありません。
同一労働同一賃金では待遇ごとの性質や目的を確認する必要があるため、休職制度そのものと休職中の金銭的な待遇について、それぞれの制度内容を確認することが重要になります。
継続雇用確保目的から考える
前の記事で取り上げた継続雇用確保目的は、病気休職を理解するうえで重要な考え方です。
継続雇用確保目的とは、従業員に長く働いてもらうことを目的として待遇を設ける考え方です。
病気休職によって、
一時的に働けなくなっても雇用関係を維持する
回復後に職場へ戻ってもらう
ことができるのであれば、継続雇用を支えることにつながります。
そのため、同じように継続勤務が見込まれている非正規社員を制度から除外すると、
なぜその社員については継続雇用を確保する必要がないのか
という説明が必要になる場合があります。
ここは、正社員だけを将来の中核人材として確保する正社員人材確保目的とは区別して考える必要があります。
正社員人材確保目的とは違う
正社員人材確保目的では、正社員について幅広い配置転換を行ったり、管理職候補として育成したりするなど、人材活用の違いが問題になります。
賞与や退職金では、このような正社員人材確保目的が待遇差を考える事情になる場合があります。
一方、病気休職では、
病気になった従業員との雇用関係を維持し、回復後も働いてもらう
という継続雇用の側面が重要になります。
そのため、
正社員は将来の管理職候補だが、契約社員は違う
という事情だけで病気休職の待遇差まで当然に説明できるとは限りません。
待遇ごとに性質や目的が違うからです。
すべての非正規社員に同じ休職期間が必要とは限らない
一方で、非正規社員であれば必ず正社員とまったく同じ病気休職制度にしなければならないという意味でもありません。
たとえば契約期間との関係など、実際の雇用条件によって事情は異なります。
重要なのは、
非正規社員だから一律に休職制度の対象外
という形式的な扱いだけで終わらせないことです。
その非正規社員についてどの程度の継続勤務が見込まれているのか。
病気休職制度は何を目的としているのか。
正社員との待遇差にはどのような理由があるのか。
こうした事情を具体的に確認する必要があります。
待遇ごとに目的を見る
病気休職は、同一労働同一賃金では待遇を一つずつ見る必要があることを理解しやすい例でもあります。
正社員と非正規社員で基本給に差があることに合理的な理由があったとしても、
だから病気休職にも差があってよい
ということにはなりません。
基本給には基本給の目的があります。
賞与には賞与の目的があります。
住宅手当には住宅手当の目的があります。
病気休職には病気休職の目的があります。
参考資料でも、不合理性については基本的に待遇ごとに判断し、仕事側の事情だけでなく待遇の性質や目的も考慮することが重要とされています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…
すべての待遇を正社員と非正規社員という二つの箱だけで分けるのではなく、一つずつ理由を確認する必要があるのです。
2026年改正を機に休職規程も確認する
2026年のガイドライン改正への対応では、賃金規程だけを確認しても十分ではありません。
就業規則や休職規程についても確認する必要があります。
たとえば、
正社員には病気休職制度がある
有期雇用社員には制度がない
パート社員には適用しない
という違いがあれば、その理由を確認します。
さらに非正規社員の実際の契約更新状況も重要です。
長期間更新を繰り返している社員がいるのであれば、制度上の雇用区分と実際の雇用実態との間にずれがないかも確認する必要があります。
参考資料でも、2026年改正への実務対応として、正社員と非正規社員との間に存在する待遇差を一つずつ確認することが出発点とされています。 02121ea7-51b0-43f2-ab19-7ccfb5f…
病気休職も、その点検対象の一つなのです。
結論
病気休職について、正社員と非正規社員の制度が違っていることが直ちに不合理になるわけではありません。
しかし、
非正規社員だから病気休職を認めない
というだけでは、待遇差を十分に説明できない場合があります。
病気休職には、一時的に働けなくなった従業員との雇用関係を維持し、回復後の復職につなげるという性質があります。
そのため、契約更新を繰り返し、相応に継続的な勤務が見込まれる非正規社員については、継続雇用を確保するという制度の目的が同じように当てはまる可能性があります。
また、正社員と非正規社員で仕事内容や責任が違っていても、その違いだけで病気休職の待遇差まで当然に合理的になるわけではありません。
同一労働同一賃金では、
仕事にどのような違いがあるのか
だけではなく、
その待遇は何のために存在するのか
を見ることが重要です。
病気休職は、給与ではない待遇についても一つずつ目的を確認する必要があることを示す代表的な制度なのです。
参考
企業実務 2026年9月号 同一労働同一賃金改正対応の総点検