会社で働き続けたいと思っていても、生活環境が変わることで、それまでと同じ働き方を続けることが難しくなる場合があります。
代表的なのが結婚や出産などのライフイベントです。
子どもが生まれれば、保育園への送迎や学校行事など、それまでにはなかった時間的な制約が生まれます。
問題は、仕事そのものを続けられないことではありません。
会社が求める働き方と、新しい生活との両立が難しくなることです。
元記事で紹介されているカオナビでは、社員が時間や場所にとらわれず、自分のワークスタイルに合った環境で働けるMy Work Styleを導入しています。
働き方を一つに固定するのではなく、生活が変化したときに働き方を変えられるようにすることが、社員が仕事を続けるための選択肢になります。
ライフイベントと離職の関係
入社したときに適していた働き方が、その後もずっと適しているとは限りません。
社員自身の生活が変化するからです。
独身のときには、毎日決まった時間に出社することに大きな問題がなかった人でも、結婚や出産によって状況が変わることがあります。
元記事でも、結婚や出産などのライフイベントをきっかけに、キャリアや働き方を見直さざるを得ない場合があることが指摘されています。
ここで会社側の勤務制度が一つしかなければ、社員には難しい選択が生まれます。
従来の働き方に生活を合わせるのか。
それができなければ、仕事そのものを変えるのか。
一方、会社の中に複数の働き方が用意されていれば、会社を辞める前に働き方を変更するという選択肢が生まれます。
働き方を変更する選択肢がある
カオナビのMy Work Styleでは、複数の柔軟な働き方が用意されています。
出社勤務に加えて、自宅または許可された就業スペースで働けるハイブリッド勤務があります。
勤務時間中に家事や育児などのため一時的に仕事を抜けられるスイッチワークがあります。
月間の所定労働時間をプラスマイナス20時間の幅で調整できる仕組みがあります。
さらに、コアタイムを廃止したスーパーフレックスがあります。
生活上の問題によって必要になる働き方は、人によって違います。
通勤が負担になる人もいます。
子どもの送迎などによって特定の時間に働けない人もいます。
勤務途中で一時的に仕事を抜ける必要がある人もいます。
複数の選択肢があれば、自分が抱えている問題に合わせて働き方を変更しやすくなります。
子育てでは時間の細かな調整が必要になる
子育てと仕事の両立というと、育児休業が注目されがちです。
もちろん、子どもが生まれた直後には育児休業が重要です。
しかし、育児休業から職場に復帰した後も子育ては続きます。
元記事では、カオナビの社員の平均年齢は34.6歳で、子育て世代も多いことが紹介されています。
2025年度の育児休業取得率は女性が100%、男性も80%を超えています。
そして、育児と仕事の両立に効果が大きいと分析されているのが、スイッチワークとスーパーフレックスです。
子どもの学校行事があります。
送迎が必要になることもあります。
家庭の予定によって、一日の一部分だけ仕事ができないこともあります。
このような場合、一日単位で休むだけではなく、時間単位で働き方を調整できることに意味があります。
学校行事のたびに半休を取らなくてもよくなる
元記事では、実際に制度を利用している社員の声も紹介されています。
子どもの学校行事に参加するとき、スイッチワークがなければ一日休暇や半日休暇を取得する必要があったため、本当に助かっているという内容です。
学校行事が数時間で終わるのであれば、その時間だけ仕事を抜け、前後の時間に働くという方法が考えられます。
一日すべてを休む必要はありません。
こうした細かな調整ができることは、子育てをしている社員にとって大きな意味を持ちます。
仕事を続けることと家庭を優先することを、毎回二者択一にしなくて済むからです。
会社を辞めなければ子育てができない。
あるいは、家庭を犠牲にしなければ仕事を続けられない。
こうした状態を減らすためには、日常の小さな時間調整ができることも重要になります。
育児休業だけでは両立支援は終わらない
企業の子育て支援を見るときには、育児休業取得率だけを見てしまいがちです。
しかし、社員が長く働き続けるという観点では、休業後の働き方も重要です。
育児休業を取得できても、復職後に以前とまったく同じ勤務方法しか選べなければ、仕事と育児の両立が難しくなる可能性があります。
カオナビの事例では、育児休業だけではなく、復職後の日常的な働き方にも柔軟性があります。
リモートワークを利用する。
働く時間帯を変更する。
必要な時間だけ仕事を抜ける。
こうした選択肢を組み合わせることで、生活環境が変わった後も仕事を続けやすくしています。
ライフイベントへの対応を、一時的な休業だけで考えないところがポイントです。
会社を変えるのではなく働き方を変える
生活と仕事が両立できなくなった場合、社員が取れる方法の一つは転職です。
現在の会社では働き続けられなくても、より柔軟な働き方ができる会社へ移れば仕事を続けられるかもしれません。
しかし、企業側から見ると、これは人材の流出になります。
それまで仕事を経験し、知識や技能を蓄積してきた社員が退職することになります。
そこで重要になるのが、会社を変える前に働き方を変えられる環境です。
生活環境が変わったからといって、必ずしも社員の能力や仕事への意欲まで失われるわけではありません。
問題が勤務場所や勤務時間にあるのであれば、その部分を柔軟にできれば仕事を続けられる可能性があります。
元記事では、社員が自分のライフスタイルに合った働き方を自発的に選択しながら働ける環境が紹介されています。
人材定着は企業にも意味がある
柔軟な働き方は社員だけのための制度ではありません。
企業にとっても、人材を確保するという意味があります。
元記事では、カオナビは急成長段階にあり、この1年間で社員数が約100人増加したことが紹介されています。
さらに、My Work Styleによる働き方の環境整備は、生産性向上だけでなく、人材確保という採用面にも恩恵をもたらしていると考えられています。
採用した人材に長く働いてもらうためにも、生活の変化に対応できる環境は重要です。
ただし、元記事ではMy Work Styleの導入によって離職率が具体的に何%低下したというデータまでは示されていません。
そのため、柔軟な働き方による離職防止効果を数値として断定することはできません。
それでも、生活環境が変わった社員に会社を辞める以外の選択肢を提供するという意味で、人材定着につながる仕組みと考えることができます。
柔軟性は社員を特別扱いすることではない
子育てなどに合わせて勤務時間を変更できる制度について、一部の社員だけを優遇する制度のように感じる場合もあるかもしれません。
しかし、元記事で紹介されているMy Work Styleは、特定の社員だけを対象にした働き方として説明されているわけではありません。
社員がそれぞれのワークスタイルに合った環境でパフォーマンスを発揮することを目指しています。
現在は子育ての必要がない社員でも、将来生活環境が変わる可能性があります。
働き方の選択肢があることは、現在その制度を必要としている社員だけではなく、将来働き方を変更する可能性のある社員にとっても意味があります。
長い職業人生を考えれば、ずっと同じ生活条件で働ける人ばかりではありません。
働き方を変更できる余地を会社側が持っていることが、社員が長く働ける環境につながります。
結論
働き方の柔軟性が離職防止につながる理由は、生活環境が変化したときに、会社を辞める以外の選択肢を持てるからです。
結婚や出産などのライフイベントが起きれば、それまでと同じ勤務時間や勤務場所では働きにくくなることがあります。
しかし、それは仕事そのものができなくなったことを意味するわけではありません。
リモートワークを利用する。
働く時間帯を変更する。
家庭の用事がある時間だけ仕事を抜ける。
こうした選択肢があれば、生活に合わせて働き方を変えながら仕事を続けることができます。
元記事では、カオナビの柔軟な働き方について、具体的な離職率低下のデータまでは示されていません。
それでも、社員がライフスタイルに合った働き方を自発的に選択できる環境は、生活の変化によって仕事を諦めなければならない状況を減らすことにつながります。
社員に会社の働き方へ合わせてもらうだけではなく、生活が変わったときには働き方の方を変える。
人材を長く活用するという意味でも、これからの企業にはこうした発想が重要になっていくと考えられます。
参考
企業実務 2026年9月号 場所と時間に縛られない働き方で生産性向上を目指す