空き家対策に税金と補助金を組み合わせるのはなぜか 負担と支援の両方で所有者を動かす仕組み編

税理士
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空き家を減らすのであれば、所有者に税金をかければよい。反対に、売却や解体に補助金を出せばよい。

どちらも空き家対策として考えられる方法ですが、大阪府寝屋川市が進めているのは、そのどちらか一方ではありません。

所有者を支援する仕組みを用意したうえで、それでも利用されない住宅には空き家税によって行動を促し、さらに税収を除却などの支援へ戻す考え方です。

空き家問題では、負担を求める政策と支援する政策を組み合わせることが重要になります。

空き家は所有者の意思だけでは動かない

空き家が市場に出ない理由を、所有者が住宅を手放したくないからだと単純に考えることはできません。

親から実家を相続したものの、何から始めればよいのか分からない人もいます。

大量の家財道具が残っている場合もあります。

相続関係が複雑になっているケースも考えられます。

建物が老朽化して売却できるのか判断できないこともあります。

つまり所有者に売却する意思があっても、実際の行動まで進めないことがあるのです。

寝屋川市は先に支援策をつくった

寝屋川市は2020年、不動産や法律などの専門家団体と空き家流通推進プラットフォームを設立しました。

空き家について、処分や相続など案件に応じた支援を受けられる仕組みです。

空き家を所有した人に対して、まず問題を解決するための手段を用意したことになります。

いきなり税負担を求めるのではなく、最初に所有者へ手を差し伸べる政策を実施したわけです。

支援だけでは動かない住宅もある

しかし支援制度を用意すれば、すべての空き家が市場へ出るわけではありません。

売却や賃貸について相談できる環境があっても、所有者が判断を先送りすることがあります。

空き家をそのまま保有しても大きな不都合を感じなければ、急いで処分する必要性がないからです。

家財整理や売却手続きには時間も労力も必要です。

その結果、利用されない住宅が長期間残ることになります。

寝屋川市は数年間支援策を続けたうえで、それだけでは十分な行動変容を起こしにくいと判断しました。

そこで空き家税を組み合わせる

次に登場するのが空き家税です。

空き家税によって、利用されない住宅を持ち続けることに追加的な負担を設けます。

所有者から見れば、何もしないという選択にも毎年コストが発生するようになります。

売却する。

賃貸する。

自分や家族が利用する。

解体する。

こうした選択肢を改めて比較するきっかけになります。

支援によって動きやすくし、税によって判断を促すという組み合わせです。

税だけでは所有者を追い込む可能性がある

逆に、支援制度を用意せず税金だけを課すことにも問題があります。

例えば老朽化した実家を相続したものの、解体費を用意できない所有者がいるかもしれません。

売却しようとしても買い手が見つからない住宅もあります。

相続関係が複雑で、すぐに処分できない場合もあります。

こうした所有者に税負担だけを求めても、問題が解決するとは限りません。

そのため税による負担と、問題を解決するための支援をセットで考える必要があります。

約1億4000万円の税収を再び支援へ使う

寝屋川市では、空き家税による税収を約1億4,000万円と見込んでいます。

市は、この税収を建物の除却への補助などに使う考えを示しています。

ここが空き家税の特徴的な部分です。

空き家から集めた税金を一般的な行政サービスだけに使うのではなく、空き家問題を解決するための支援へ戻します。

所有者に負担を求め、その財源を別の所有者が住宅を動かすための支援にも使う循環をつくろうとしているのです。

解体補助が必要になる理由

老朽化した住宅では、売却や賃貸より解体した方がよい場合があります。

しかし建物の解体にはまとまった費用が必要です。

さらに建物を取り壊すと住宅用地特例を受けられなくなり、土地の固定資産税負担が増える場合があります。

所有者にとっては、解体費を負担したうえで、その後の税負担が増える可能性があります。

そのため除却費用の一部を補助することには、所有者の行動を後押しする意味があります。

負担と支援はアクセルとブレーキではない

税金と補助金は反対方向の政策のように見えます。

税金は負担を増やし、補助金は負担を減らすからです。

しかし空き家政策では、両者が同じ目的に使われることがあります。

空き家税は何もしない状態を続けるコストを高めます。

補助金や専門家支援は、住宅を動かすためのコストや手間を軽くします。

つまり両方とも、所有者が空き家を放置する状態から次の行動へ移ることを促す仕組みなのです。

政策効果は税収ではなく空き家の減少で見る

この仕組みでは、税収が増え続けることが成功とは限りません。

所有者が行動し、課税対象となる空き家が減れば、将来的には空き家税の税収も減る可能性があります。

それでも住宅が売却されたり、賃貸されたり、適切に解体されたりすれば政策目的は達成されています。

評価すべきなのは、税収額ではありません。

何戸の空き家が市場へ動いたのか。

何戸が再利用されたのか。

どれだけ危険な住宅が除却されたのか。

こうした数字を見る必要があります。

結論

空き家問題は、税金だけでも補助金だけでも解決することが難しい問題です。

所有者が動かない理由には、判断の先送りだけでなく、相続、家財整理、売却、解体などさまざまな障壁があります。

寝屋川市はまず専門家による支援の仕組みをつくり、それだけでは動かない住宅について空き家税によって行動変容を促そうとしています。

さらに約1億4,000万円を見込む税収を、建物の除却補助などへ活用する考えです。

支援によって動ける環境をつくり、税によって判断を促し、集めた税収を再び支援へ戻す。

空き家対策では、所有者に負担を求めることと手を差し伸べることを対立させるのではなく、両方を組み合わせて住宅を動かすという視点が重要になっています。

参考

日本経済新聞 2026年9月19日 朝刊 直言 眠る空き家、若者に回せ

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