株式や投資信託へ家計のお金が流れる一方で、もう1つ存在感を高めている金融商品があります。
国債です。
2026年6月末に家計が保有する国債と財投債の残高は21.9兆円となりました。
2013年6月以来の高い水準です。
株式や投資信託のように大きな値上がりを狙う金融商品ではありません。
それでも家計のお金が国債へ戻っている背景には、日本の金利環境の変化があります。
長く続いた超低金利の時代には、預金だけでなく国債から得られる利息も非常に小さなものでした。
しかし金利が上昇すると、安全性を重視しながら利息も受け取りたい家計にとって、国債を改めて検討する余地が生まれます。
国債とは何か
国債は、国が資金を調達するために発行する債券です。
国が投資家からお金を借り、その代わりに利子を支払い、原則として満期になると元本を返します。
家計が国債を購入するということは、国へお金を貸していると考えると分かりやすくなります。
株式では企業の所有権の一部を持つことになりますが、国債では国に対する債権を持つことになります。
そのため、株式と国債では金融商品としての性格が大きく異なります。
個人向け国債とは何か
個人が利用しやすいように設計された国債が個人向け国債です。
国が個人投資家から直接資金を集めるための商品で、一定の条件のもとで利子を受け取ることができます。
株式や投資信託のように大きな値上がりを期待する商品というより、安全性を重視しながら一定の利息を得たい場合に利用されます。
銀行預金だけに資金を置くのではなく、国債も資金の置き場所として考えることができます。
金利が上昇すると、この選択肢の存在感が高まりやすくなります。
なぜ低金利時代には魅力が薄かったのか
長く続いた低金利の時代には、国債の利回りも非常に低い状態が続きました。
安全性を重視して国債を購入しても、受け取れる利息が小さければ、預金との違いを感じにくくなります。
そのため、わざわざ国債を購入せず、銀行預金としてお金を置いておく家計も多くなります。
一方、株式や投資信託へ投資する人にとっては、低い利回りの国債よりも高い収益を期待できるリスク性資産の方が魅力的に見える場合があります。
低金利は家計にとって国債を選ぶ理由を弱くしていました。
金利上昇で国債の利回りも変わる
金利環境が変化すると、国債の条件も変わります。
市場金利が上昇すれば、新しく発行される国債の利回りも上昇する方向に働きます。
これまでほとんど利息を期待できなかった金融商品から、一定の利息を受け取れるようになれば、家計にとって選択肢としての魅力が高まります。
特に、株式ほど大きな価格変動を取りたくないものの、現預金だけで保有することにも物足りなさを感じる家計にとって、国債はその中間的な選択肢になり得ます。
金利のある世界への変化が、家計のお金の置き場所を増やしているのです。
21.9兆円まで残高が増えた
2026年6月末に家計が保有する国債と財投債の残高は21.9兆円となりました。
2013年6月以来の高水準です。
家計金融資産全体の2519兆円と比較すれば、国債の割合はまだ大きくありません。
しかし、長期間存在感が低下していた国債へ家計のお金が戻ってきたことには意味があります。
家計のお金が現預金から株式や投資信託だけへ向かっているわけではないことを示しているからです。
安全性を重視する資金についても、預金以外の選択肢が利用され始めています。
預金と国債は何が違うのか
預金と国債は、どちらも株式などと比べれば安全性を重視した資金の置き場所として利用されます。
しかし仕組みは異なります。
預金では銀行などの金融機関へお金を預けます。
国債では国へお金を貸します。
適用される金利の仕組みや途中換金の条件なども異なります。
したがって、単純に金利の数字だけを比較するのではなく、いつ使う予定のお金なのか、どの程度の流動性が必要なのかを考える必要があります。
株式と国債は役割が違う
株式や投資信託への資金流入が増えているからといって、家計のすべてのお金をリスク性資産へ移す必要はありません。
株式は企業の成長による値上がりや配当などを期待できますが、価格が大きく下落することがあります。
国債は、大きな値上がりを狙うより、比較的安定した運用を目的として利用されます。
長期間使わないお金の中でも、どの程度の価格変動を受け入れられるかによって、適した金融商品は変わります。
資産形成では、株式か国債かという二者択一ではなく、それぞれの役割を考えることが重要です。
金利上昇は家計の選択肢を増やす
低金利時代には、安全性を重視するとほとんど利息を得られず、収益を求めるなら株式などの価格変動を受け入れる必要がありました。
金利が上昇すると、この構図が変わります。
預金金利が上昇する可能性があります。
国債の利回りも上昇します。
生命保険では、新しく販売される商品の予定利率が引き上げられる場合があります。
家計は安全性と収益性のバランスを考えながら、複数の商品から資金の置き場所を選べるようになります。
これは金利上昇が家計金融資産へ与える大きな変化です。
国も個人による国債保有を後押しする
国も個人による国債保有を増やすことを検討しています。
財務省と金融庁は、2027年度の税制改正要望に個人向け国債の保有を促す税制優遇措置を盛り込みました。
家計が国債を保有することは、家計の資産形成だけの問題ではありません。
国にとっては、国債を誰が保有するのかという国債市場の構造にも関係します。
個人が国債を購入する動きがさらに広がるのかは、今後の金利や制度変更を考えるうえでも注目されます。
国債を買えばよいという意味ではない
家計の国債保有が増えているからといって、すべての人に国債が適しているわけではありません。
必要な資金の時期や目的によって金融商品の選択は変わります。
すぐに使う生活資金なら現預金が便利です。
長期間の資産成長を目指すなら株式や投資信託を利用する方法があります。
価格変動を抑えながら一定期間運用したい資金では、国債が選択肢になる場合があります。
大切なのは、国債という商品の人気ではなく、自分のお金の目的に合っているかどうかです。
結論
2026年6月末に家計が保有する国債と財投債の残高は21.9兆円となり、2013年6月以来の高水準となりました。
背景にあるのは、日本の金利環境の変化です。
長く続いた超低金利の時代には、安全性の高い金融商品から得られる利息は非常に小さなものでした。
しかし金利が上昇すると、国債も家計のお金の置き場所として再び検討されるようになります。
現在の家計では、株式や投資信託への資金流入が増える一方、国債の保有も増えています。
これは貯蓄から投資へという一方向の変化だけでは説明できません。
現預金、国債、保険、株式、投資信託という複数の選択肢の中から、お金の目的に応じて置き場所を選ぶ時代へ変わりつつあります。
金利がある世界では、安全性を重視するお金にも選択肢が増えます。
国債保有残高21.9兆円という数字は、家計の資産運用が株式や投資信託だけでなく、より幅広い金融商品へ広がっていることを示す変化として見ることができます。
参考
日本経済新聞 2026年9月18日 朝刊 家計、株式・投信へシフト