金利が上昇すると、住宅ローンや企業の借入金だけでなく、家計が持つ金融資産にも大きな変化が起きます。
銀行預金の金利が上がります。
国債から得られる利息も増える方向に動きます。
生命保険では、新しく販売される商品の予定利率が引き上げられる場合があります。
一方、株式は金利上昇によって企業の資金調達コストや株価評価に影響を受けます。
つまり、金利が上がると預金、国債、保険、株式という主要な金融商品の条件が同時に変わります。
2026年6月末の家計金融資産は2519兆円に達しました。
そのお金がこれからどこへ向かうのかを考えるうえで、金利と金融商品の関係を理解することが重要になります。
金利が上がると預金の魅力が変わる
長く続いた超低金利の時代には、銀行にお金を預けても受け取れる利息はごくわずかでした。
そのため預金は、お金を増やす商品というより、安全に保管して必要なときに使うための商品という性格が強くなっていました。
しかし市場金利が上昇すると、銀行の預金金利も引き上げられる可能性があります。
預金から受け取れる利息が増えれば、価格変動を避けたい家計にとって預金の魅力は高まります。
金利上昇は、投資を促すだけではなく、預金を再評価するきっかけにもなります。
それでも現預金比率は45パーセントまで低下した
2026年6月末に家計が保有する現預金は1131兆円でした。
前年同期比では0.5パーセント増えています。
ところが家計金融資産全体に占める割合は45パーセントまで低下しました。
現預金が減っているのではなく、それ以上の速度で株式や投資信託などが増えているからです。
家計金融資産全体は前年同期比11.0パーセント増え、株式と投資信託は44パーセント増えました。
金利が上昇して預金の条件が改善しても、他の金融資産との比較によって家計のお金の配分は変化します。
金利が上がると国債にもお金が向かう
国債も金利上昇の影響を受けます。
国債は国が資金を借りるために発行する債券です。
市場金利が上昇すると、新しく発行される国債の利回りも上昇する方向に働きます。
長い低金利時代には、国債を購入しても得られる利息が小さく、家計にとって魅力を感じにくい状況が続いていました。
しかし金利が上がれば、安全性を重視しながら一定の利息を得たい家計にとって、国債が再び選択肢になります。
国債保有残高は21.9兆円まで増えた
2026年6月末に家計が保有する国債と財投債の残高は21.9兆円となりました。
2013年6月以来の高水準です。
家計金融資産2519兆円の中ではまだ小さな割合ですが、長く存在感が低下していた国債へ家計のお金が戻り始めています。
金利が上昇すると、現預金か株式かという2つの選択肢だけではなくなります。
預金よりも一定の利回りを求めながら、株式ほど大きな価格変動を取りたくない資金の置き場所として、国債が意識されるようになります。
金利上昇は生命保険にも影響する
生命保険と金利も深く関係しています。
生命保険会社は、契約者から受け取った保険料の一部を長期間運用しています。
金利が上昇すると、新しく購入する債券などの運用利回りが高くなる可能性があります。
運用環境が改善すれば、新しく販売する保険商品の予定利率を引き上げる余地が生まれます。
その結果、貯蓄型保険などの商品条件が変化することがあります。
金利上昇は預金や国債だけでなく、生命保険にも波及するのです。
古い保険を見直す動きも起きる
新しい保険商品の条件が変わると、既存契約との比較が始まります。
低金利時代に加入した保険をそのまま保有するのか。
新しい保険へ切り替えるのか。
保障は保険で確保し、資産形成部分を投資信託などへ移すのか。
こうした選択を考える家計が増えます。
2026年1月から6月に生命保険会社が支払った解約返戻金は7.2兆円となり、同期間として2020年以降で過去最高になりました。
金利環境の変化が保険契約を見直すきっかけの1つになっています。
金利上昇は株式には逆風になることがある
預金や国債では、金利上昇は受け取れる利息の増加につながる方向に働きます。
一方、株式にとって金利上昇は必ずしもプラスではありません。
企業が銀行から借り入れたり、社債を発行したりするときの資金調達コストが上昇する可能性があります。
利払い負担が増えれば、企業利益を圧迫することがあります。
さらに、国債など安全性の高い金融商品から一定の利回りを得られるようになると、投資家が株式に求める収益率も変わります。
そのため、金利上昇が株価の重荷になる場合があります。
金利が上がっても株価が上昇することはある
ただし、金利上昇イコール株価下落ではありません。
金利が上昇する背景も重要です。
景気が拡大し、企業業績や賃金が伸び、物価も適度に上昇する中で金利が上がるのであれば、企業利益の増加が株価を支える場合があります。
一方、企業業績が伸びないのに金利だけが大きく上昇すれば、株式市場への負担は大きくなります。
金利の水準だけでなく、なぜ金利が上昇しているのかを見る必要があります。
家計は金融商品を比較するようになる
超低金利の時代には、預金や国債から得られる収益が非常に小さかったため、資産を増やそうとすれば株式や投資信託などのリスク性資産を検討する必要がありました。
金利が上昇すると、この関係が変わります。
預金金利が上がります。
国債の利回りも上がります。
新しい生命保険の条件が改善する場合があります。
その結果、家計は安全性の高い金融商品とリスク性資産を改めて比較するようになります。
金融商品同士のお金の移動が活発になる可能性があります。
すべてのお金が同じ方向へ動くわけではない
金利が上がったからといって、家計のお金が一斉に預金や国債へ移るわけではありません。
家計には目的の異なるお金があります。
毎日の生活に使うお金があります。
数年以内に使う予定のお金があります。
10年後や20年後に使うお金もあります。
万一に備えるためのお金も必要です。
それぞれの目的によって適した金融商品は違います。
金利上昇によって選択肢が増えるほど、お金を目的別に分けることが重要になります。
結論
金利が上昇すると、家計が保有するさまざまな金融商品の条件が変わります。
預金では金利上昇によって受け取れる利息が増える可能性があります。
国債では新しく発行される商品の利回りが上昇し、安全性を重視する資金の選択肢として存在感が高まります。
生命保険では運用環境の改善によって、新しい商品の予定利率などが変化する場合があります。
一方、株式では企業の資金調達コストや投資家が求める収益率を通じて、金利上昇が株価の重荷になることがあります。
2026年の家計では、株式や投資信託への資金流入が続く一方、国債の保有残高も21.9兆円まで増えています。
保険の見直しも活発になっています。
これは家計のお金が1つの方向へ動いているのではなく、金利のある世界の中で金融商品の選び直しが始まっていることを示しています。
これから重要になるのは、預金か投資かという単純な二者択一ではありません。
使う時期や目的、必要な安全性、受け入れられる価格変動に応じて、現預金、国債、保険、株式、投資信託を使い分けることです。
金利上昇とは、家計にとって負担が増えるだけではなく、お金の置き場所の選択肢が増える変化でもあります。
参考
日本経済新聞 2026年9月18日 朝刊 家計、株式・投信へシフト