札幌駅周辺では大規模な再開発が進められています。
ところがJR北海道は、札幌駅直結の再開発計画について、完成時期を2028年度から2034年度へ変更しました。
6年もの延期です。
背景にある大きな問題が建築費の高騰です。
再開発は一度計画すれば、そのまま予定通り進むとは限りません。
建築費が大幅に上昇すると、設計や建物の規模、資金計画、完成後の賃料などを改めて検討する必要があります。
建築費高騰は建物の値段を上げるだけではなく、都市が変わる時期そのものを遅らせる可能性があります。
札幌駅再開発は2034年度へ
JR北海道は札幌駅直結の再開発計画について、完成時期を見直しました。
当初は2028年度の完成を予定していました。
これが2034年度へ変更されました。
6年の延期です。
大規模な駅前再開発は、建物1棟だけの問題ではありません。
オフィスや商業施設などが整備されれば、駅周辺の人の流れや企業活動にも影響します。
その完成時期が6年延びるということは、街が新しくなる時期も6年先になるということです。
建築費が上がると計画をそのまま実行できない
再開発計画では、事業を始める段階で建築費や将来の収入などを見積もります。
例えば一定の建築費を前提として、完成後のオフィス賃料や店舗賃料から投資資金を回収できると判断して計画を立てます。
ところが計画後に建築費が大幅に上昇すると、この計算が崩れます。
当初の予算では建物を完成させられなくなる可能性があります。
だからといって、増加した建築費をそのまま追加して事業を進めればよいとは限りません。
投資額が増えれば、その資金をどのように回収するのかを考え直す必要があるからです。
設計変更には時間がかかる
建築費を抑える方法の1つが設計の見直しです。
建物の規模を変更する。
使用する設備を見直す。
建物の用途構成を変える。
工事方法を変更する。
こうした見直しによって総事業費を抑えられる可能性があります。
しかし大規模な再開発では、設計変更をすぐに実行できるわけではありません。
設計を変更すれば、工事計画や資金計画なども再検討する必要があります。
1つの変更がほかの部分にも影響するため、計画全体を組み直す時間が必要になります。
建築会社の確保も重要になる
建築費高騰の背景には、資材価格だけでなく人件費などさまざまな要因があります。
大規模再開発では、多くの建設会社や作業員が長期間にわたって必要になります。
建設需要が強い時期には、工事を担当できる企業や人員を確保すること自体が難しくなることがあります。
予定していた時期に必要な工事体制を整えられなければ、工期を変更する必要があります。
つまり再開発の時間を左右するのは資金だけではありません。
実際に建物をつくるための人や設備を確保できるかどうかも重要です。
完成後の賃料も計算し直す必要がある
建築費が増えた場合、その分を完成後の収入で回収できるのかを考えなければなりません。
オフィスならオフィス賃料です。
商業施設なら店舗賃料です。
ホテルなら宿泊収入です。
マンションなら販売価格や賃料です。
建築費が30%上昇したからといって、完成後の賃料を30%引き上げられるとは限りません。
地域の企業や住民が負担できる金額には限界があります。
建築費と将来の収益のバランスが取れなければ、再開発計画そのものを変更する必要があります。
地方都市では建築費を賃料へ転嫁しにくい
建築費高騰は東京でも札幌でも起こります。
しかし完成後に設定できる賃料には地域差があります。
東京ではオフィス需要が強く、賃料上昇によって建築費の増加を吸収できる場合があります。
一方、地方都市では建築費が東京と同じように上昇しても、賃料を同じように引き上げられるとは限りません。
建築費は全国的に上昇する。
しかし賃料の上昇力には地域差がある。
この組み合わせが地方都市の再開発を難しくします。
札幌のような地方中核都市でも、この問題を避けることはできません。
再開発の延期は地価にも影響する
再開発が予定されると、完成後の街の姿を期待して周辺の土地需要が強くなることがあります。
新しいオフィスができれば働く人が増える。
商業施設ができれば買い物客が増える。
ホテルができれば観光客が増える。
駅周辺の利便性が高まれば住宅需要も増える。
こうした将来への期待が地価に反映されることがあります。
ところが完成時期が2028年度から2034年度へ延びれば、期待されていた効果が実現する時期も後ろへずれます。
不動産の価値は、将来どれだけ収益を生むかだけではなく、いつから収益を生むのかにも左右されます。
6年という時間には大きな意味がある
同じ再開発が実現するとしても、2028年度に完成する場合と2034年度に完成する場合では意味が違います。
周辺の店舗が新しい人流の恩恵を受ける時期も遅れます。
企業が新しいオフィスへ入居できる時期も遅れます。
周辺不動産の賃料上昇が期待されている場合、その実現時期も先になります。
投資では時間そのものに価値があります。
早く収益を得られる投資と、何年も待たなければ収益を得られない投資では評価が変わります。
そのため再開発の延期は、単なるスケジュール変更ではありません。
不動産市場にも影響する重要な変更です。
地価上昇率の鈍化ともつながる
2026年の札幌、仙台、広島、福岡の地方4市の全用途平均は前年比4.1%上昇しました。
依然として地価は上昇しています。
しかし2025年の5.3%から上昇率は縮小しました。
地方4市の地価上昇率は2023年をピークに鈍化しています。
建築費高騰によって再開発が延期されたり、住宅購入が控えられたりすれば、土地に対する需要も以前ほど強くならない可能性があります。
札幌駅再開発の延期は、建築費高騰と地価上昇率鈍化の関係を考える具体的な事例です。
延期は必ずしも再開発の失敗ではない
完成時期が延びると、再開発が失敗したように見えるかもしれません。
しかし企業にとって重要なのは、予定通り完成させることだけではありません。
採算の取れない計画をそのまま実行すれば、完成後に大きな負担を抱える可能性があります。
建築費や金利、将来の需要を改めて検討し、持続可能な事業計画に変更することも必要です。
延期によって建築費や市場環境が変化するのを待つという考え方もあります。
大規模再開発では、完成時期より事業全体の持続可能性が重要になる場合があります。
結論
JR北海道は札幌駅直結の再開発計画について、完成時期を2028年度から2034年度へ変更しました。
6年の延期です。
背景にある重要な問題が建築費の高騰です。
建築費が大幅に上昇すれば、当初の予算や設計をそのまま使うことが難しくなります。
建物の規模や設計を見直し、資金計画を組み直し、完成後に得られる賃料とのバランスも再検討しなければなりません。
その作業には時間がかかります。
そして再開発が6年遅れれば、新しいオフィスや商業施設によって生まれる人の流れや経済効果も6年先になります。
周辺地価を支えていた将来への期待にも影響する可能性があります。
建築費高騰は単に建物を高くする問題ではありません。
再開発の規模を変え、採算を変え、完成時期を変え、最終的には都市が成長する時間軸そのものを変える問題なのです。
参考
日本経済新聞 2026年9月16日 朝刊 基準地価、5年連続上昇 建築費高騰