ピロティ構造とは何か マンションの一階を柱だけにすると耐震上の弱点になりやすい理由編

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築古マンションの耐震性を考えるときには、旧耐震基準か新耐震基準かだけでなく、建物そのものの形や構造を見ることも重要です。

その一つがピロティ構造です。

マンションの一階部分に住戸を設けず、柱を中心とした開放的な空間にして、駐車場や駐輪場、エントランスなどとして利用している建物があります。

限られた敷地を有効に利用できる便利な構造ですが、上階と比べて一階部分の壁が少なくなるため、建物の構造によっては地震時に一階へ変形が集中しやすくなる場合があります。

特に築年数の古いマンションを購入するときには、築年数だけを見るのではなく、一階部分がどのような構造になっているかにも目を向ける必要があります。

ピロティとは何か

ピロティとは、建物の一階部分などを柱で支え、壁の少ない開放的な空間として利用する建築形式です。

建物の二階以上には住戸などがありますが、一階には壁で囲まれた住戸を設けず、柱が並んでいるような形になります。

マンションでは、一階部分を駐車場や駐輪場、エントランスなどとして利用するために採用されることがあります。

特に都市部では土地が限られています。

建物とは別の場所に大きな駐車場を確保することが難しい場合でも、建物の一階部分を駐車場にすれば土地を有効に利用できます。

道路から建物内部へ車を出入りさせやすいこともメリットです。

ピロティはなぜ駐車場に利用されるのか

マンションには住戸だけでなく、駐車場や駐輪場などの共用施設が必要です。

敷地に余裕があれば建物の外に設けられますが、都市部では土地の価格が高く、十分なスペースを確保できない場合があります。

そこで一階部分を開放し、その上に住戸を設けることで、同じ敷地を立体的に利用できます。

駐車場として使う場合には、車が出入りするために大きな開口部が必要です。

壁が多いと車の動線を確保しにくくなるため、柱を中心とした開放的な空間が適しています。

マンションの利便性や土地利用という面では合理的な設計なのです。

しかし、地震に対する建物の動きを考えると、この一階部分の壁の少なさが重要になります。

地震では建物に横方向の力が加わります

建物には普段、自分自身の重さや家具、人などによる主に縦方向の力が加わっています。

一方、大きな地震が発生すると建物は横方向にも激しく揺さぶられます。

耐震設計では、この地震による横方向の力に建物全体でどのように抵抗するかが重要になります。

建物の各階に壁や柱などがバランスよく配置されていれば、地震の力を建物全体で受け止めやすくなります。

ところが、一階だけ壁が少なく、二階以上には多くの壁があるような建物では、上下階で構造上の硬さに大きな違いが生じることがあります。

この違いが大きいと、地震の際に特定の階へ変形が集中する可能性があります。

一階に変形が集中することがあります

ピロティ形式のマンションで注意したいのは、壁の少ない一階部分が上階と比べて変形しやすくなる場合があることです。

二階以上には住戸を区切る壁などが多く存在する一方、一階の駐車場には大きな開口部があり、柱が中心になっている場合があります。

このように上下階で構造的な特徴が大きく異なると、地震の際に一階部分へ負担が集中する可能性があります。

建物の上部が大きな一つのかたまりのように動き、その下にある一階の柱へ大きな力が加わるイメージです。

柱などが十分な耐力を持っていなければ、大きな損傷につながる可能性があります。

このような特定の階への変形の集中が、ピロティが耐震上の弱点になり得るといわれる理由の一つです。

ピロティがあれば危険という意味ではありません

ここで注意したいのは、ピロティ形式を採用しているマンションがすべて危険ということではありません。

ピロティは現在でも建築物に利用される一般的な設計方法の一つです。

重要なのは、建物全体がどのように設計され、必要な耐震性能が確保されているかです。

一階部分の壁が少なくても、それを前提として柱や梁などに必要な強度を持たせることができます。

また、建築された年代によって適用された耐震基準も異なります。

したがって、中古マンションの外観を見てピロティがあるという理由だけで、その建物の安全性を判断することは適切ではありません。

あくまで耐震性を確認するときに注目すべき要素の一つとして考える必要があります。

旧耐震基準のピロティではより詳しい確認が重要です

前回取り上げたように、1981年6月に新しい耐震基準が施行されました。

それ以前の旧耐震基準で建てられた築古マンションを検討する場合には、耐震診断や耐震改修の実施状況を確認することが重要です。

そこにピロティのような構造上の特徴がある場合には、建物の耐震性についてより具体的に確認した方がよいでしょう。

耐震診断が行われているのであれば、その結果を確認します。

耐震性能に問題があると診断された場合には、その後にどのような耐震改修が行われたのかも重要です。

単に築年数と外観だけを見るのではなく、専門的な診断結果や改修履歴を利用して判断する必要があります。

耐震改修によって補強されることもあります

既存マンションの耐震診断によって弱点が確認された場合には、耐震改修によって補強する方法があります。

具体的な補強方法は建物によって異なります。

柱を補強したり、耐震壁などを追加したり、建物の揺れに対する抵抗力を高める部材を設置したりする方法があります。

ピロティ部分についても、必要に応じて補強工事が行われることがあります。

したがって、旧耐震基準でピロティがあるというだけでは、現在の耐震性能は分かりません。

建設当初の構造だけでなく、その後どのような診断や補強が行われてきたかを見ることが重要です。

一階を実際に見て確認します

中古マンションを内覧すると、多くの人は購入予定の住戸へ直接向かいます。

しかし、築古マンションでは建物全体を見ることも重要です。

エントランスへ入る前に建物の一階部分を見てみます。

一階に住戸が並んでいるのか、それとも駐車場などの大きな開放空間になっているのかを確認します。

柱がどのように配置されているかも見ることができます。

もちろん、一般の購入者が外観を見ただけで耐震性を判断することはできません。

しかし、建物の特徴を把握しておけば、仲介会社や専門家に確認すべき事項を見つけることができます。

住戸内部だけを内覧して帰るのではなく、建物を一周して全体を見るという姿勢が重要です。

耐震診断の有無を確認します

築古マンションで耐震性が気になる場合には、管理組合などが耐震診断を実施しているか確認します。

特に旧耐震基準のマンションでは重要な情報になります。

耐震診断を実施しているのであれば、診断結果を確認できるか仲介会社などを通じて問い合わせます。

耐震改修が行われている場合には、工事内容や実施時期も確認します。

さらに今後耐震改修を予定している場合には、工事費をどのように負担する予定なのかも重要です。

大規模な耐震改修には相応の費用がかかる可能性があるため、修繕積立金の状況などにもつながってきます。

耐震性能は安全性だけでなく、マンションの将来の資金計画にも関係する問題です。

建物の形状だけでなく地盤も確認します

地震への強さを考える場合、建物の構造だけを確認すればよいわけではありません。

マンションが建っている地盤の状態も重要です。

同じような構造の建物でも、建設されている土地の条件によって地震時の影響は異なります。

地盤の情報や液状化の可能性などについては、公的機関や自治体などが公開している情報から確認できる場合があります。

建物の耐震基準、構造、耐震診断、耐震改修、地盤などを組み合わせて考えることが重要です。

一つの条件だけで安全か危険かを判断しないことが、築古マンション選びでは特に大切になります。

室内のリノベーションでは建物の弱点は変えられません

築古マンションを全面的にリノベーションすれば、住戸内部は大きく変わります。

古い間取りを現代的に変更し、新しいキッチンや浴室を設置すれば、新築住宅のように見えることもあります。

しかし、住戸内部をリノベーションしても、マンション一階の構造が変わるわけではありません。

耐震性に関係する建物の柱や梁、耐力壁などはマンション全体の問題です。

個人の区分所有者が自分の住戸だけを工事して解決できるものではありません。

築古マンションでは、室内の新しさと建物全体の安全性を切り離して考える必要があります。

結論

ピロティとは、マンションなどの一階部分を柱で支え、壁の少ない開放的な空間として利用する建築形式です。

駐車場や駐輪場などとして利用できるため、限られた土地を有効活用できるメリットがあります。

一方で、二階以上と比べて一階の壁が少ない建物では、上下階の構造的な硬さに大きな違いが生じ、地震時に一階部分へ変形が集中する場合があります。

ただし、ピロティがあるから危険ということではありません。

重要なのは、その建物がどのような耐震基準で設計され、どの程度の耐震性能を持ち、その後どのような診断や補強が行われてきたかです。

築古マンションを購入するときには、購入予定の部屋だけを見るのではなく、一階部分を含めて建物全体を確認することが重要です。

特に旧耐震基準の物件では、耐震診断や耐震改修の有無についても確認する必要があります。

室内はリノベーションによって変えられますが、マンション全体の基本構造は一人の所有者では変えられません。

だからこそ築古マンションでは、購入後に変えられない建物の構造を購入前に確認することが重要なのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月18日 夕刊 築古物件 リノベ不可の盲点

日本経済新聞 2026年8月18日 夕刊 耐震性、地盤の固さも重要

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