2026年の基準地価では、名古屋圏の全用途平均が前年比1.9%上昇しました。
地価そのものは上昇しています。
しかし2025年の2.1%上昇から比べると、上昇率は縮小しました。
東京圏や大阪圏では地価上昇が加速している一方、名古屋圏では少し違った動きが出ています。
その背景にあるのが、中心部のマンション価格の高騰です。
住宅価格が高くなり過ぎると、購入希望者が消えるとは限りません。予算に合う住宅を求めて、郊外や隣接県へ移動することがあります。
名古屋中心部から愛知県郊外や岐阜県の戸建てへ住宅需要が移る動きは、住宅価格が人の住む場所を変えていく仕組みを示しています。
名古屋圏は1.9%上昇
2026年の名古屋圏の全用途平均は前年比1.9%上昇しました。
2025年は2.1%上昇だったため、上昇率は0.2ポイント縮小しています。
地価が下落へ転じたわけではありません。
地価は上昇しているものの、その勢いが弱くなっている状態です。
この違いは重要です。
地価が1.9%上昇したという数字だけを見ると不動産需要は引き続き強いように見えます。
しかし前年の上昇率と比較すると、市場の勢いに変化が出始めていることが分かります。
中心部のマンション価格が高くなった
名古屋圏で起きている変化の1つが、中心部のマンション価格の上昇です。
土地価格だけでなく、建築費や人件費なども上昇しています。
マンションを開発する事業者は、土地代と建築費などを回収できる価格で住宅を販売する必要があります。
土地代が上がる。
建築費も上がる。
その結果、新築マンションの販売価格も高くなります。
しかし購入する側の所得がマンション価格と同じ速度で増えるとは限りません。
ここで住宅価格と家計の購入能力との間に差が生まれます。
実需層には購入できる価格の限界がある
自分で住むために住宅を購入する人を実需層と呼ぶことがあります。
実需層には購入できる住宅価格の上限があります。
年収や自己資金、住宅ローンの借入可能額などによって予算が決まるからです。
例えば希望するマンションが5000万円なら購入できた世帯でも、同じような物件が7000万円や8000万円になれば購入できなくなることがあります。
価格が上昇したからといって、住宅ローンを無制限に増やせるわけではありません。
毎月返済できる金額には限界があります。
マンション価格が実需層の購入能力を超え始めると、住宅需要に変化が起こります。
住宅を諦めるとは限らない
中心部のマンションを購入できなくなった人が、住宅購入そのものを諦めるとは限りません。
予算の範囲内で購入できる別の住宅を探します。
そこで選択肢となるのが郊外です。
同じ5000万円でも、中心部では比較的小さなマンションしか購入できなくても、郊外ならより広いマンションや戸建て住宅を購入できる可能性があります。
子育て世帯などでは、通勤時間が多少長くなっても住宅の広さを優先することがあります。
住宅価格が上昇すると、需要そのものがなくなるのではなく、需要する場所や住宅の種類が変わるわけです。
愛知県郊外へ需要が移る
名古屋中心部の住宅価格が上昇すれば、購入希望者は愛知県内の郊外へ目を向けます。
重要になるのが名古屋中心部への交通アクセスです。
鉄道などを利用して通勤できる地域であれば、中心部から距離があっても住宅地として選ばれる可能性があります。
さらに郊外では土地価格が中心部より低いため、マンションではなく戸建て住宅を購入できる場合があります。
同じ住宅予算でも、場所を変えることで広い住宅を確保できるからです。
このような需要の移動によって、中心部の価格上昇が周辺住宅地へ波及することがあります。
岐阜県まで住宅需要が広がる
住宅需要の移動は愛知県内だけで完結するとは限りません。
名古屋中心部への交通アクセスが確保できれば、岐阜県も住宅の選択肢になります。
県境は行政上の区切りですが、住宅購入者にとって重要なのは通勤時間や住宅価格、生活環境です。
例えば名古屋市内のマンションより岐阜県の戸建ての方が大幅に安く、通勤時間も許容できるのであれば、岐阜県を選択する人が出てきます。
大都市の住宅価格上昇が隣接県の住宅需要を増やすことがあるのです。
不動産市場を見るときには、都道府県単位だけで考えないことも重要です。
マンションから戸建てへの移動も起きる
需要が移るのは地域だけではありません。
住宅の種類も変わります。
中心部では土地価格が高いため、限られた土地を効率よく利用できるマンションが中心になります。
一方、郊外では土地価格が比較的低いため、戸建て住宅を購入しやすくなります。
中心部のマンション価格が高くなれば、同じ予算で郊外の戸建てを選ぶという選択肢が魅力的になります。
マンションから戸建てへ。
中心部から郊外へ。
愛知県内から岐阜県へ。
価格上昇によって複数の需要移動が同時に起こる可能性があります。
需要の移動は地価にも波及する
住宅購入者が郊外へ移れば、その地域で土地や住宅を購入したい人が増えます。
土地の需要が増えれば地価には上昇圧力がかかります。
つまり中心部の地価上昇が止まったとしても、その影響が郊外の地価上昇として現れることがあります。
これは不動産市場で起きる価格の波及です。
中心部が高くなる。
購入できない人が周辺へ移る。
周辺の需要が増える。
周辺の地価も上昇する。
すると、さらに外側へ需要が移る可能性があります。
住宅価格は人がどこに住むのかを変えながら、地価上昇を周辺地域へ広げることがあります。
金利上昇は購入可能額をさらに小さくする
今後の名古屋圏の住宅市場を見るうえでは、住宅ローン金利も重要です。
住宅価格が同じでも、住宅ローン金利が上昇すれば毎月の返済額は増えます。
家計が負担できる毎月の返済額が変わらなければ、借りられる金額を減らす必要があります。
つまり住宅価格の上昇と金利上昇が同時に起きれば、実需層の購入能力には二重の負担になります。
その結果、中心部から郊外へ住宅需要が移る動きがさらに強まる可能性があります。
一方、郊外の住宅価格まで上昇すれば、住宅購入そのものを延期する世帯も増えるかもしれません。
地価上昇率の鈍化は需要消失とは限らない
名古屋圏の地価上昇率が2.1%から1.9%へ縮小したからといって、住宅需要そのものがなくなったとは限りません。
需要する場所が変わっている可能性があります。
不動産価格が高くなれば、人は予算に合わせて行動を変えます。
中心部から郊外へ移る。
マンションから戸建てへ移る。
県境を越えて住宅を探す。
こうした行動変化を見ることで、地価統計だけでは分からない住宅市場の実態が見えてきます。
結論
2026年の名古屋圏の全用途平均は前年比1.9%上昇しました。
地価上昇は続いていますが、2025年の2.1%から上昇率は縮小しています。
背景にある変化の1つが、名古屋中心部のマンション価格の高騰です。
住宅価格が実需層の購入能力を超えてくると、購入希望者は住宅購入をすぐに諦めるのではなく、より手頃な地域や住宅へ移ります。
名古屋中心部から愛知県郊外へ。
さらに岐阜県へ。
マンションから戸建てへ。
このように住宅需要は価格に応じて場所と住宅の種類を変えていきます。
地価上昇率が鈍っているという数字を見るときには、需要が弱くなったのか、それとも需要が別の地域へ移動しているのかを分けて考えることが重要です。
住宅価格が上がり過ぎると、人の住む場所そのものが変わります。
名古屋圏の地価の動きは、住宅価格と家計の購入能力のバランスが都市圏の広がり方まで変えていくことを示しています。
参考
日本経済新聞 2026年9月16日 朝刊 基準地価、5年連続上昇 建築費高騰