品質保証とは何か 製品を検査するだけでは品質を守れない理由編

会計
グレーとモスグリーン WEBデザイン 特集 ブログアイキャッチ - 1

工場で品質を守る仕事と聞くと、完成した製品の寸法を測ったり、強度を調べたり、正常に動くかを確認したりする検査を思い浮かべるかもしれません。

基準に合わない製品を見つけて出荷を防ぐことは、もちろん重要です。

しかし、品質は完成品を検査するだけでは守れません。

そもそもの設計に問題があれば、設計図どおりに作られているかを確認する検査では問題を見つけられない場合があります。製造工程の管理が不十分なら、検査を通過してしまう不良品が生まれる可能性もあります。

さらに、材料や部品が顧客に無断で変更されていれば、完成品が性能試験に合格していても、顧客との約束を守った製品とはいえません。

こうした問題を防ぐために必要になるのが品質保証です。

完成品だけでなく作られる過程を保証する

品質保証とは、製品やサービスが求められている品質を満たしていることについて、顧客が信頼できる状態を作るための活動です。

対象になるのは最終検査だけではありません。

製品の企画や設計から始まり、材料や部品の調達、製造、検査、出荷に至るまで、一連の流れを管理します。

設計段階では顧客が求めている内容が正しく設計へ反映されているかを確かめます。

調達では、仕入先から購入した材料や部品が要求された品質を満たしているかを確認します。

製造では、定められた工程や作業方法が守られているかを見ます。

そして検査では、決められた方法によって適切な検査が実施されていることを確認します。

完成後に不良品を探すだけではなく、そもそも不良品や不適切な製品を生み出しにくい仕組みを整えることが品質保証の大切な役割なのです。

品質管理と品質保証はどう違うのか

品質保証と似た言葉に品質管理があります。

実務では重なる部分も多く、企業によって部署の名称や担当する範囲も異なりますが、両者には視点の違いがあります。

品質管理では、製品や製造工程を適切に管理し、要求される品質を安定的に実現することが重要になります。

製造設備に異常がないか確認する。

不良率の推移を調べる。

製品の寸法にばらつきがないかを見る。

不良品が増えた原因を分析し、製造工程を改善する。

こうした取り組みが品質管理に当たります。

一方の品質保証では、顧客と約束した品質が適切な仕組みによって実現されていることを保証するという視点が強くなります。

品質管理が品質を安定して作り込むための活動だとすれば、品質保証はその品質を顧客が信頼できる状態にする活動と考えると分かりやすいでしょう。

大切なのは部署の名称ではありません。製品を作る側とは別の立場から品質を確かめる機能が、本当に働いているかどうかです。

全製品を検査すれば解決するわけではない

では、完成品を徹底的に検査すれば品質保証は必要ないのでしょうか。

例えば、1日に1万個の製品を作る工場があるとします。

1万個すべてについて、あらゆる性能を詳しく確認できれば理想的に見えます。

ところが現実には、検査には時間と費用がかかります。

強度などを調べるために製品を壊して確認する破壊検査もあります。そのような検査なら、出荷する製品をすべて調べることはできません。

だからこそ、完成品だけでなく製造工程そのものを管理する必要があります。

正しい材料が使われているか。

指定された設備を使用しているか。

定められた条件で加工されているか。

作業手順が守られているか。

設備の点検が適切に行われているか。

こうした一つ一つを管理することで、最終検査だけに依存せず品質を確保します。

品質は完成品を検査する段階で初めて生まれるものではありません。設計や調達、製造といった前段階から作り込まれていくものなのです。

製造部門と品質保証部門には異なる役割がある

製造部門には、決められた数量の製品を作り、納期を守り、生産性を高め、製造原価を下げ、不良品を減らすという重要な役割があります。

どれも企業が利益を確保して事業を続けるために欠かせません。

これに対して品質保証部門は、顧客との約束や品質基準が守られているかを確認します。

通常であれば、製造部門と品質保証部門が目指す方向は同じです。高品質な製品を効率よく作ることができれば、企業にも顧客にもメリットがあります。

ところが品質上の問題が発生すると、両者の立場がぶつかることがあります。

明日の納期か品質確認か

例えば、明日までに大量の製品を顧客へ納入しなければならない状況で、出荷直前になって一部の検査結果に疑問が見つかったとします。

製造部門にとって、出荷停止は大きな問題です。

納期に間に合わなくなり、顧客へ迷惑をかけます。売上高にも影響し、工場の業績評価が悪くなる可能性もあります。

しかし品質保証の立場から考えれば、問題が解消されるまで出荷を止める必要があります。

詳しく調べた結果、実際には何の問題もなかったということもあるでしょう。それでも、確認しないまま出荷することはできません。

このような場面で品質保証部門が製造部門の判断に簡単に従ってしまうのであれば、独立した品質保証機能を置く意味が薄れてしまいます。

品質保証には問題を止める権限も必要になる

品質保証部門は、ときには会社にとって都合の悪い判断をしなければなりません。

出荷を止めたり、生産を止めたり、追加の検査を求めたりすることがあります。

顧客への報告を求める場合もあれば、不適切な変更を元へ戻すよう求めることもあります。

短期的に見れば、利益を減らす判断になる可能性があります。

それでも品質上必要なのであれば、止めることが求められます。

したがって、品質保証部門には問題を発見して指摘するだけでなく、必要な是正を求められるだけの権限が重要になります。

問題を把握していても、製造部門に反対されれば何もできないのであれば、十分な品質保証とはいえません。

顧客に代わって製造過程を確かめる

顧客側から考えると、品質保証の役割がさらに分かりやすくなります。

顧客が供給企業の工場へ毎日出向き、製品がどのように作られているかをすべて監視することは現実的ではありません。

使用した材料は正しいのか。

作業手順は守られたのか。

必要な検査は実施されたのか。

途中で勝手に設計が変更されていないか。

顧客自身がすべて確認することは困難です。

そこで顧客は、供給企業が持つ品質保証の仕組みを信頼して製品を購入します。

製造記録や検査記録を残すことも、この仕組みの一部です。

後から問題が起きた場合に、いつ、どこで、どのような方法で作られた製品なのかをたどることができます。

つまり品質保証には、顧客から直接は見えない製造過程についても安心できる状態を作る役割があります。

品質保証部門があれば安心とは限らない

ここで注意したいのは、品質保証という名前の部署を設置しただけでは品質不正を防げないことです。

品質保証部門自身が納期や業績目標を過度に重視するようになれば、製造部門と同じ方向へ判断が傾くことがあります。

この程度なら問題ない。

顧客へ知らせれば大きな問題になる。

出荷を止めると今月の業績が悪化する。

今回は出荷して次回から改善すればよい。

こうした判断が積み重なると、本来は不適切な行為を止める側だった品質保証部門が、それを追認する側になってしまう可能性があります。

今回参考にしたニデックの品質不正問題でも、品質保証部門が十分な牽制機能を発揮できなかったことが重要な論点になっています。

品質保証部門が存在することと、品質保証が実際に機能していることは別なのです。

品質保証を単なるコストと考えてよいのか

品質保証部門は製品そのものを製造しません。

営業部門のように直接売上高を作る部署でもありません。

短期的な損益だけを見れば、費用がかかる部門に見えることがあります。

しかし、品質保証を弱くした結果として大規模な品質不正が発生すれば、企業には別の負担が生じます。

過去に出荷した製品を調査し、顧客へ説明し、必要なら製品を交換し、生産を停止することになります。取引そのものを失う可能性もあり、企業の信用にも影響します。

品質保証に必要な人員や費用を減らして目先の利益を増やしたとしても、後になってそれを大きく上回る損失が発生する可能性があります。

品質保証は単なる費用ではなく、企業が長期にわたって事業を続けるための基盤として考える必要があります。

結論

品質保証とは、完成品を検査して不良品を見つけるだけの活動ではありません。

設計から調達、製造、検査、出荷までの一連の過程について、顧客との約束や品質基準が守られる仕組みを作り、それを維持することが重要です。

品質は最終検査だけで決まるものではありません。

適切に設計し、正しい材料や部品を調達し、定められた工程で製造し、必要な検査を実施する。その積み重ねによって初めて品質が成り立ちます。

さらに、納期や利益と品質がぶつかったとき、品質上の問題があれば止められる仕組みも必要です。

そのためには、品質保証部門が製造部門から一定の独立性を持ち、問題を指摘するだけでなく、必要な是正を求められる権限を持つことが重要になります。

完成した製品を調べることだけではなく、問題のある製品を作らない、そして出荷しない仕組みを構築すること。

そこに品質保証の重要な役割があるのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月5日朝刊 ニデック、品質不正850件

日本経済新聞 2026年9月5日朝刊 ニデックの品質不正「業績圧力が原因」 コスト低減、強く要求

日本経済新聞 2026年9月5日朝刊 ニデック社長「顧客の信頼失った」 一問一答

日本経済新聞 2026年9月5日朝刊 調査報告書要旨

タイトルとURLをコピーしました