なぜ経理と営業はすれ違うのか 同じ会社なのに見えている景色が違う理由

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経理と営業は、同じ会社で働いているにもかかわらず、ときとして対立しやすい関係になります。

経理からは「なぜ期限までに書類を出してくれないのか」と見えます。一方、営業からは「なぜ細かいことばかり要求されるのか」と見えているかもしれません。

どちらかが間違っているとは限りません。

むしろ問題なのは、経理と営業では日々見ている景色が大きく違うことです。

この違いを理解することが、部門間のすれ違いを減らす第一歩になります。

経理は会社全体を数字と書類から見る

経理の仕事では、正確性や期限が非常に重要です。

請求書、領収書、経費精算書、契約関係の資料などが期限までにそろわなければ、会計処理を進めることができません。

1件の提出遅れは小さな問題に見えるかもしれません。

しかし、それが何十件、何百件と積み重なれば、月次決算や年度決算にも影響します。

そのため経理担当者にとって、提出期限や社内ルールを守ってもらうことは、単なる形式的な要求ではありません。

会社全体の数字を正しくまとめるために必要な仕事なのです。

営業は顧客との関係から会社を見る

一方、営業が日々向き合っているのは顧客です。

商談をまとめる。

問い合わせに対応する。

トラブルが起きれば顧客のもとへ向かう。

出張先では複数の予定をこなし、場合によっては会食にも参加します。

資料では、バックオフィス側から見ると出張や会食が華やかに見えていたものの、実際に営業の商談や地方イベント、経営会食などへ同行すると、食事を楽しむ余裕がなく、生活リズムも崩れ、精神的にも負担の大きい仕事だったことが紹介されています。

外から見えている営業の姿と、実際の営業の仕事には差があるということです。

同じ領収書でも見え方が違う

経理と営業の違いは、1枚の領収書を考えると分かりやすいでしょう。

経理にとって領収書は会計処理に必要な証憑です。

いつ、誰が、何の目的で支出したのかを確認し、適切に処理しなければなりません。

しかし営業にとって、その領収書は商談や出張という仕事の結果として発生したものです。

営業担当者の頭の中では、

「顧客への提案をどうするか」

「次の商談をどう進めるか」

「売上目標をどう達成するか」

といったことの優先順位が高くなりやすくなります。

その結果、経費精算が後回しになることがあります。

もちろん、それで提出期限を守らなくてもよいという話ではありません。

重要なのは、なぜそうなるのかを双方が理解することです。

経理には営業の苦労が見えにくい

経理は基本的に、営業活動が終わった後に書類を受け取ります。

そのため、その書類ができるまでに何があったのかを見る機会は多くありません。

何時間もかけて顧客と交渉したのかもしれません。

遠方まで移動したのかもしれません。

予定外のトラブルに対応していたのかもしれません。

それを知らずに書類だけを見ると、

「また提出が遅れている」

という評価になりがちです。

書類の向こう側にある仕事を想像できるかどうかで、相手への接し方は大きく変わります。

営業にも経理の苦労が見えにくい

もちろん逆も同じです。

営業担当者から見れば、

「領収書を1枚出すのが少し遅れただけ」

かもしれません。

しかし経理では、その後に確認や仕訳、承認、保存などの処理があります。

さらに月次決算には締切があります。

営業担当者1人の数日の遅れでも、それが多数の社員に広がれば経理部門全体の残業や決算遅延につながる可能性があります。

営業からは、その後工程が見えにくいのです。

つまり、経理と営業のすれ違いは、お互いの仕事が見えていないことから生まれている面があります。

正論だけではすれ違いは解消しない

経理が営業に対して、

「ルールですから守ってください」

と言うこと自体は間違いではありません。

しかし、それだけでは相手との関係が改善しないことがあります。

例えば、

「大変な交渉をお疲れさまでした。こちらの処理上、この書類が必要なのでご協力いただけますか」

と伝えれば、同じ依頼でも受け取る印象は違います。

相手の仕事を認めたうえで、自分たちの事情も説明するからです。

相手への敬意とルールの厳格な運用は、決して矛盾するものではありません。

相手の仕事を知る機会をつくる

では、経理と営業のすれ違いを減らすにはどうすればよいのでしょうか。

有効なのは、相手の仕事を見る機会を意識的につくることです。

資料では、フロントのメンバーと会話する、申請書だけで判断せず背景を直接聞く、稟議などを読んで状況を把握する、可能であれば現場へ同行する、イベントの手伝いを申し出るといった行動が挙げられています。

特に経理担当者にとって、営業の現場を見る経験には大きな意味があります。

売上という数字が、どのような活動によって生まれているのかを実感できるからです。

営業側も経理の決算業務や締切の意味を知れば、「経理が細かい」のではなく、「会社の数字を正しくまとめるために必要なのだ」と理解しやすくなるでしょう。

経理と営業は本来同じ方向を向いている

経理と営業は、対立するために存在しているわけではありません。

営業は売上をつくります。

経理はその売上や費用を正しく把握し、会社の資産や数字を守ります。

役割は違いますが、最終的には会社を継続的に成長させるという同じ目的につながっています。

だからこそ、「営業対経理」という構図にしてしまわないことが重要です。

相手が何を守ろうとしているのか。

なぜその行動を取っているのか。

そこまで想像できるようになると、部門間の関係は変わってきます。

結論

経理と営業がすれ違う大きな理由の1つは、同じ会社にいても見えている景色が違うことです。

経理は数字や書類、決算期限から会社を見ています。

営業は顧客や商談、売上から会社を見ています。

どちらも会社に必要な視点です。

だからこそ、自分の立場から相手を評価するだけではなく、相手の仕事の背景まで想像することが大切です。

経理が営業の現場を知り、営業も経理の仕事を知る。

その積み重ねによって、「書類を催促する経理」と「提出が遅れる営業」という関係から、互いに会社を支えるパートナーへ変わっていくのではないでしょうか。

参考

企業実務 2026年10月号
松岡俊「フロントへの想像力と敬意が、バックオフィスの信頼をつくる」

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