住宅ローンの金利表を見ると、フラット35には融資率9割以下と9割超という区分があります。
初めて住宅ローンを利用する人には、少し分かりにくい言葉かもしれません。
融資率とは、購入する住宅の価格などに対して、住宅ローンでどれだけ借りるのかを示す割合です。
例えば5000万円の住宅を購入するとき、4500万円を借りれば融資率は9割です。
一方、4800万円を借りれば融資率は9割を超えます。
フラット35では、この融資率によって適用される金利が異なる場合があります。
なぜ頭金を多く用意すると住宅ローンの条件が変わるのでしょうか。
そこには、住宅ローンを貸す側が負うリスクが関係しています。
融資率とは何か
融資率は、住宅の建設費または購入価額に対するフラット35の借入額の割合です。
例えば5000万円の住宅を購入するとします。
自己資金を500万円用意し、残りの4500万円をフラット35で借りれば、融資率は9割となります。
自己資金が1000万円あり、4000万円を借りるなら融資率は8割です。
反対に自己資金が200万円で、4800万円を借りるなら融資率は96%となり、9割を超えます。
つまり融資率を見ると、住宅購入資金のうちどの程度を借金で賄っているのかが分かります。
融資率が低いほど自己資金の割合が大きく、融資率が高いほど住宅ローンへの依存度が高いことになります。
9割以下と9割超で何が違うのか
フラット35では、融資率が9割以下の場合と9割を超える場合で借入金利が異なります。
一般に融資率9割超の方が、9割以下より金利が高く設定されます。
理由は、融資率が高くなるほど貸し手側のリスクも大きくなるためです。
例えば5000万円の住宅を4500万円の住宅ローンで購入した人と、5000万円近くを住宅ローンで借りた人を比べてみます。
住宅価格が将来下落した場合、借入額が大きい人ほど住宅の売却価格だけではローン残高を返済できなくなる可能性が高くなります。
金融機関や住宅金融支援機構から見ると、自己資金を多く入れている人の方が一定の余裕があります。
こうしたリスクの違いが金利にも反映されるわけです。
頭金1割が一つの境目になる
融資率9割という基準を住宅購入者側から見ると、頭金をおおむね1割用意できるかどうかが一つの境目になります。
例えば住宅価格が4000万円なら400万円、5000万円なら500万円、6000万円なら600万円が1割に相当します。
住宅価格が高くなるほど、1割の自己資金を準備するために必要な金額も大きくなります。
ただし、単純に住宅価格の1割を現金で用意すれば必ず融資率9割以下になると考えるのは注意が必要です。
住宅購入には物件価格以外にもさまざまな諸費用がかかるためです。
登記費用や融資手数料、火災保険料、仲介手数料などを含めて、必要な現金を考えなければなりません。
住宅購入では頭金だけではなく、購入後に手元へどれだけ現金を残せるかも重要です。
なぜ自己資金が多いとリスクが下がるのか
住宅ローンは非常に長期間の融資です。
35年間には、住宅価格が下落したり、借り手の収入が変化したりする可能性があります。
例えば5000万円で購入した住宅の価値が、数年後に4000万円へ下がったとします。
その時点の住宅ローン残高が4500万円なら、住宅を4000万円で売却しても500万円のローンが残ります。
このように住宅の売却価格より住宅ローン残高の方が大きい状態になることがあります。
最初から自己資金を多く入れて借入額を抑えていれば、この状態になる可能性を低くできます。
そのため融資率は、貸し手が住宅ローンのリスクを判断する重要な指標の一つになります。
頭金を増やすと利息も減る
頭金を入れる効果は金利だけではありません。
借入額そのものを減らすことができます。
例えば5000万円の住宅を全額借りる場合と、500万円の自己資金を入れて4500万円だけ借りる場合では、元本が500万円違います。
住宅ローンの利息は借入残高に対して発生するため、借入額が少なければ支払う利息も少なくなります。
さらに融資率を9割以下にすることで適用金利まで低くなれば、借入額の減少と金利低下という二つの効果が期待できます。
長期間の住宅ローンでは、わずかな金利差でも総返済額に大きな差が生じることがあります。
頭金には住宅ローンの負担を小さくする役割があるのです。
頭金を入れすぎればよいわけではない
ただし、自己資金をできるだけ住宅購入に投入すればよいということではありません。
例えば貯蓄が1000万円ある人が、そのほとんどを住宅購入の頭金に使ってしまったとします。
住宅を購入した直後に病気や失業、家電製品の故障、子どもの教育費など大きな支出が発生すれば、手元資金が不足する可能性があります。
マンションであれば管理費や修繕積立金が必要です。
戸建て住宅でも将来の修繕費を自分で準備しなければなりません。
住宅購入後にも現金は必要になります。
したがって頭金については、住宅ローンを減らすことだけでなく、購入後の生活防衛資金を確保することとのバランスが重要です。
頭金ゼロという選択も家計全体で考える
住宅ローンによっては、頭金をほとんど用意せずに住宅を購入できる場合もあります。
手元資金を残せることはメリットです。
しかし借入額が増えれば、毎月の返済額や総返済額も大きくなります。
さらに住宅価格が下落した場合には、売却しても住宅ローンを完済できないリスクも高まります。
大切なのは、頭金が多いほど正解、少ないほど間違いと単純に考えないことです。
手元に残す現金、住宅ローン金利、毎月の返済額、教育費、老後資金などをまとめて考える必要があります。
融資率は住宅購入の安全余裕を見る数字でもある
融資率は単に住宅ローン金利を決めるためだけの数字ではありません。
家計が住宅をどの程度借金に依存して購入しているのかを見る数字でもあります。
住宅価格5000万円に対して5000万円を借りる家計と、3000万円を借りる家計では、同じ5000万円の住宅を所有していても家計の財務状態は大きく違います。
住宅購入では、買えるかどうかだけではなく、購入した後も無理なく保有し続けられるかを考える必要があります。
融資率を見ることは、その安全余裕を確認する一つの方法になります。
結論
フラット35の融資率とは、住宅の建設費や購入価額に対して、どの程度を住宅ローンで借りるのかを示す割合です。
融資率9割以下と9割超では適用される金利が異なり、一般に9割超の方が高い金利となります。
融資率が高いほど借入額が住宅価格に近づき、住宅価格が下落した場合などのリスクが大きくなるためです。
頭金を用意して融資率を下げれば、借入額を減らせるだけでなく、金利面でも有利になる可能性があります。
ただし頭金を入れすぎて手元の現金を失ってしまえば、住宅購入後の家計が不安定になることもあります。
住宅購入で重要なのは頭金を最大化することではありません。
住宅ローンを減らすことと、生活防衛資金を残すことのバランスを考えながら、無理のない融資率を選ぶことが大切です。
参考
日本経済新聞 2026年9月10日朝刊 「フラット35」、子育て世帯の優遇拡充 中古住宅購入の金利下げ