フラット35は、最長35年間にわたって金利が変わらない全期間固定金利型の住宅ローンです。
ところがニュースを見ると、フラット35の金利が上昇したという話が出てきます。
固定金利なのに、なぜ金利が上がるのでしょうか。
ここで重要なのは、すでに住宅ローンを借りている人の金利と、これから住宅ローンを借りる人に提示される金利を分けて考えることです。
フラット35では借入後の金利は原則として変わりません。しかし、新しく借りる人に適用される金利は市場金利などを反映して変化します。
この違いを理解すると、固定金利型住宅ローンと長期金利の関係が見えてきます。
借入後の金利は固定される
フラット35の大きな特徴は、資金を受け取る時点で返済終了までの借入金利が確定することです。
例えば35年間の返済期間で年3%の金利が適用されたとします。
その後、日本の市場金利が上昇して、新しくフラット35を借りる人の金利が年4%になったとしても、すでに年3%で借りている人の金利が年4%になるわけではありません。
反対に市場金利が低下して、新規のフラット35が年2%になったとしても、既存の借入金利が自動的に年2%へ下がるわけでもありません。
これが全期間固定金利です。
借入後の金利が市場環境によって変化しないため、将来の返済計画を立てやすくなります。
新しく借りる人の金利は変わる
一方、フラット35という商品そのものの金利が永久に一定という意味ではありません。
新しく住宅ローンを借りる人に提示される金利は変化します。
フラット35の借入金利は、取扱金融機関や融資率、返済期間などによって異なります。
さらに、その時点の市場金利の動向も大きく影響します。
例えば、ある時期にフラット35を借りた人の金利が年2%だったからといって、1年後に借りる人も年2%で借りられるとは限りません。
住宅購入を決めてから実際に融資が実行されるまで時間がかかる場合には、この点が特に重要になります。
住宅ローンでは、検討を始めた時点の金利だけで資金計画を固定的に考えると、実際の借入時には想定より金利が高くなっている可能性があります。
長期金利との関係
フラット35の金利を理解するうえで重要なのが長期金利です。
日本では10年物国債の利回りが長期金利の代表的な指標として使われています。
国債は国が発行する債券です。
国債の利回りが上昇すると、企業などが発行する債券にもより高い利回りが求められやすくなります。
フラット35では、民間金融機関が融資した住宅ローン債権を住宅金融支援機構が買い取り、それをもとに資産担保証券を発行して投資家から資金を調達する仕組みがあります。
投資家に資産担保証券を購入してもらうには、他の債券との比較で魅力のある利回りを提示する必要があります。
長期金利が上昇すれば、住宅金融支援機構が市場から長期資金を調達する際の金利にも上昇圧力がかかります。
その結果、新たに提供されるフラット35の金利にも上昇圧力がかかることになります。
国債金利が住宅ローンにつながっている
国債と住宅ローンはまったく別の商品に見えます。
しかし金融市場ではつながっています。
投資家は国債だけに投資しているわけではありません。
さまざまな債券について、利回りや信用リスク、期間などを比較しながら投資先を選びます。
安全性の高い国債で高い利回りを得られるようになれば、それ以外の債券にはそれに見合った利回りが求められます。
そのため長期金利の上昇は、企業の資金調達だけでなく、住宅ローンなどにも波及していきます。
住宅を購入する人にとって長期金利は遠い金融市場の数字に見えますが、実際には毎月の住宅ローン返済額にもつながっているのです。
固定金利は将来の金利を先に決める仕組み
固定金利を理解するときには、将来の金利を先に固定する仕組みと考えると分かりやすくなります。
金融機関や投資家は35年間という長い期間に金利がどう動く可能性があるのかを考えながら資金を提供します。
将来金利が上昇する可能性が高いと市場が考えるようになれば、長期間にわたって低い固定金利で資金を貸すことは難しくなります。
そのため固定金利は、現在の政策金利だけで決まるわけではありません。
将来の金利や物価、経済情勢に対する市場の見方も反映されます。
固定金利だから市場金利と無関係なのではなく、借りる瞬間の市場環境を反映した金利を、その後長期間固定する商品なのです。
金利上昇局面では住宅購入者の負担が増える
新規のフラット35の金利が上昇すると、これから住宅を購入する人の返済負担は増えます。
同じ5000万円を借りても、金利が違えば毎月の返済額も総返済額も変わります。
ここで住宅価格との関係も重要になります。
住宅価格が上昇しているところに住宅ローン金利まで上昇すると、家計には二重の負担になります。
物件価格が上昇すれば必要な借入額が増え、その大きくなった借入額に高い金利がかかるからです。
これまでの低金利時代には、住宅価格が多少高くても低い金利によって毎月の返済額を抑えられる面がありました。
しかし金利上昇局面では、この前提が変わります。
住宅購入では物件価格だけを見るのではなく、金利を含めた総返済額で判断する必要性が高まります。
住宅を買う時期によって金利が違う
フラット35では借入後の金利は固定されます。
だからこそ、いつ借りるかが重要になります。
金利が低い時期に借りれば、その低い金利を長期間固定できます。
反対に金利が高い時期に借りれば、その金利が長期間続くことになります。
ただし、将来の金利を正確に予測することは困難です。
金利が下がるまで住宅購入を待った結果、その間に住宅価格が上昇することもあります。
金利だけで住宅購入時期を決めることはできません。
大切なのは、現在の金利を前提としても無理なく返済できる借入額に抑えることです。
結論
フラット35の固定金利とは、商品の金利がいつでも同じという意味ではありません。
固定されるのは、住宅ローンを借りた後の適用金利です。
これから借りる人に提示される金利は、市場の長期金利や資金調達環境などを反映して変化します。
長期金利が上昇すれば、新規のフラット35の金利にも上昇圧力がかかります。
つまりフラット35は、市場金利から切り離された住宅ローンではありません。
借入時点では市場金利の影響を受け、その時点で決まった金利を最長35年間固定する仕組みです。
金利上昇時代の住宅購入では、住宅価格だけでなく、いつ、いくらを、どの金利で借りるのかまで含めて資金計画を考えることが重要になります。
参考
日本経済新聞 2026年9月10日朝刊 「フラット35」、子育て世帯の優遇拡充 中古住宅購入の金利下げ