日本の投資信託市場で大きな転換が起きています。
株価指数に連動するインデックス型投信の純資産総額が、ファンドマネジャーが銘柄を選ぶアクティブ型を初めて上回りました。
背景には新NISAの普及と低コスト投信への資金流入があります。
特にオルカンと呼ばれる全世界株式型投信やS&P500に連動する投信が急速に資産を増やしています。
一方、インデックス投資が市場の中心になっていくことで、株価を適正な水準に導く価格発見機能が弱まるのではないかという新たな問題も指摘されています。
インデックス型が初めて過半を占めた
国内外の株式に投資する日本の投信では、インデックス型の純資産総額が11日時点で77兆9900億円となりました。
アクティブ型は77兆8700億円です。
わずかな差ですが、インデックス型がアクティブ型を初めて逆転しました。
過去20年間を見ると、その差はさらに鮮明です。
インデックス型の純資産総額は約30倍に拡大しました。
これに対してアクティブ型は約4倍です。
投資信託の主役が徐々に変わってきたことが分かります。
オルカンとS&P500が市場を押し上げている
インデックス型投信の成長を象徴しているのが、eMAXIS Slim 全世界株式 オールカントリーです。
いわゆるオルカンです。
オルカンは世界の株式市場全体に幅広く投資することを目指す商品で、MSCI全世界株指数に連動します。
2018年に登場し、2026年8月末時点の純資産総額は13兆円を超えました。
インデックス型投信全体の約17パーセントを1本の投信が占める規模になっています。
同じシリーズのS&P500連動型も12兆円を超えています。
新NISAが始まった2024年以降、両商品への資金流入が一段と加速しました。
毎月一定額を積み立てる長期投資との相性がよいことも人気を支えています。
最大の強みは運用コストの低さ
インデックス型投信が支持される大きな理由がコストです。
記事によると、集計対象となったインデックス型の実質信託報酬は平均0.3914パーセントでした。
アクティブ型は平均1.5299パーセントです。
インデックス型はアクティブ型のおよそ4分の1です。
年間では小さな違いに見えるかもしれません。
しかし投資期間が20年、30年と長くなるほど、このコスト差は無視できなくなります。
運用益に対して毎年費用が差し引かれるためです。
長期投資では何を買うかだけではなく、いくらのコストで保有し続けられるかも重要になります。
インデックス投資とは市場全体を買う考え方
インデックス型投信は特定の株価指数への連動を目指します。
日本株なら日経平均株価やTOPIX、米国株ならS&P500などが代表例です。
指数を構成する多数の企業へまとめて投資できるため、1社だけに投資する場合と比べて分散効果を得やすくなります。
企業を1社ずつ調べて将来性を予想するのではなく、市場全体の成長を取り込もうとする考え方です。
その理論的な背景にあるのが効率的市場仮説です。
企業業績や経済情勢など様々な情報はすでに株価へ反映されているため、継続的に市場平均を上回ることは難しいという考え方です。
アクティブ型は市場平均を上回れるのか
アクティブ型ではファンドマネジャーが企業を調査し、投資する銘柄を選びます。
市場平均より高い運用成績を目指すのが基本です。
ところが長期間にわたって指数を上回り続けることは簡単ではありません。
記事によれば、日本株では直近10年間でTOPIXを上回った大型株ファンドの割合は約半分でした。
米国株に投資するアクティブ投信ではS&P500を上回ったものは1割にとどまります。
さらにアクティブ型には調査や運用のための費用がかかります。
市場平均を上回るだけでなく、高いコストを差し引いた後でも投資家に利益を残せるかが問われるわけです。
インデックス投資にも弱点がある
インデックス型が増えれば増えるほど、新しい問題も生まれます。
その一つが価格発見機能です。
株式市場では本来、多くの投資家が企業の利益や成長性、財務内容などを分析し、株価が高いのか安いのかを判断します。
その売買によって適正な価格が形成されていきます。
ところがインデックス型は基本的に企業の価値を個別に判断して投資するわけではありません。
指数に入っているから買うという仕組みです。
インデックス運用の比率が極端に高くなると、企業価値を分析して株価を形成する投資家が相対的に少なくなる可能性があります。
これが価格発見機能への懸念です。
上昇も下落も増幅する可能性がある
インデックス型への資金流入が大きくなると、指数の構成比率が高い企業ほど多く買われる傾向があります。
株価が上昇し、指数に占める比率が大きくなった企業へさらに資金が向かうこともあります。
反対に市場全体から資金が流出すると、企業価値とは別に指数を構成する銘柄が一斉に売られる可能性があります。
つまりインデックス投資の拡大は市場の値動きを増幅する要因になる可能性があります。
企業の適正価値だけでは株価の動きを説明できない場面が増えることも考えられます。
アクティブ型には逆にチャンスが生まれる
興味深いのは、インデックス型が増えるほどアクティブ型の役割がなくなるとは限らないことです。
指数に連動した機械的な売買によって、本来の企業価値以上に株価が下落する企業が出てくれば、そこに投資機会が生まれます。
企業価値を分析できるアクティブ投資家にとっては、割安な株を買うチャンスになるからです。
インデックス型が市場を支配すればアクティブ型が消えるという単純な関係ではありません。
むしろインデックス運用が増えるほど、企業を分析して適正価値を見つけるアクティブ運用の役割が改めて重要になる可能性があります。
インデックス型とアクティブ型は対立するものではない
個人投資家にとって重要なのは、どちらか一方を完全に否定することではありません。
インデックス型には低コストと分散投資という大きなメリットがあります。
一方、アクティブ型には市場が見落としている企業価値を発見できる可能性があります。
資産の中心部分をインデックス型で長期運用し、一部でアクティブ型を利用する考え方もあります。
大切なのは、それぞれの仕組みとコストを理解したうえで使い分けることです。
結論
日本の投資信託市場で、インデックス型の純資産総額が初めてアクティブ型を上回りました。
背景には新NISAの普及、低コスト志向、そしてオルカンやS&P500連動型投信への大規模な資金流入があります。
インデックス投資は少ないコストで世界や米国の多数の企業へ分散投資できるため、長期の資産形成と相性のよい仕組みです。
しかしインデックス型が市場の中心になるほど、価格発見機能の低下や値動きの増幅という新しい課題も浮かび上がります。
そして、そのひずみを見つける存在としてアクティブ運用の役割が改めて注目される可能性もあります。
インデックス型がアクティブ型を初めて逆転したことは、単なる投信の人気ランキングの変化ではありません。
日本の個人投資家のお金の運用方法そのものが大きく変わり始めたことを示す出来事といえそうです。
参考
日本経済新聞 2026年9月16日 朝刊 投信、指数連動型が過半に 低コストが投資家の支持集める
日本経済新聞 2026年9月16日 朝刊 分散投資の効果見込む