訪問介護の利用者160万人時代とは何か 在宅介護を支える人材確保が重要になる理由編

人生100年時代
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高齢化が進む日本では、介護施設だけではなく、自宅で介護サービスを受けながら生活する人も増えています。

その中心的なサービスの一つが訪問介護です。

2024年度には、訪問介護の利用者が初めて160万人を超えました。

利用者が増えることは、それだけ自宅での生活を支える仕組みが必要になっていることを意味します。

しかし、利用者が増えても、実際に自宅を訪問する人がいなければサービスは提供できません。

訪問介護160万人時代は、在宅介護を支える人材をどう確保するのかという問題を、これまで以上に重要なものにしています。

訪問介護とは何か

訪問介護は、ホームヘルパーなどが利用者の自宅を訪問し、日常生活を支援する介護保険サービスです。

大きく分けると、身体介護と生活援助があります。

身体介護では、食事や入浴、排せつ、着替え、移動などを支援します。

生活援助では、利用者本人の日常生活に必要な掃除や洗濯、調理、買い物などを支援します。

施設に入所するのではなく、必要なサービスを自宅で受けられることが大きな特徴です。

高齢になっても住み慣れた家や地域で暮らしたい人にとって、重要なサービスとなっています。

利用者が160万人を超えた意味

2024年度には訪問介護の利用者が初めて160万人を超えました。

これは単に介護サービスの一つが成長しているという話ではありません。

日本の介護をどこで支えるのかという問題と深く関係しています。

高齢者が増えれば、介護を必要とする人も増えていきます。

そのすべてを介護施設で受け入れることは現実的ではありません。

施設を建設するには土地や資金が必要であり、施設をつくってもそこで働く介護職員を確保しなければなりません。

自宅で生活できる人にはできるだけ在宅生活を続けてもらい、必要な介護サービスを自宅へ届ける仕組みが重要になります。

その代表的な役割を担うのが訪問介護なのです。

在宅介護には人が移動する必要がある

訪問介護には、施設介護とは異なる特徴があります。

サービスを受ける人が施設へ集まるのではなく、介護職員が一人ひとりの自宅へ移動します。

一件の訪問が終われば、次の利用者宅へ向かいます。

そのため、実際に介護している時間だけでなく、移動にも時間が必要です。

利用者が広い地域に分散している場合には、移動時間がさらに長くなります。

特に人口密度の低い地域では、一日に訪問できる件数にも限界があります。

利用者が増えれば、その人数に比例して簡単にサービス量を増やせるわけではないところに、訪問介護の難しさがあります。

人手不足がサービスそのものを左右する

訪問介護では、ホームヘルパーがいなければサービスを提供できません。

例えば、利用者から朝の時間帯に食事や着替えの介助をしてほしいという需要が集中しても、同じ職員が同時に複数の家庭を訪問することはできません。

人材不足が深刻になると、事業者が新規利用者の受け入れを難しいと判断する可能性があります。

事業所そのものが地域から撤退すれば、既存の利用者にも影響します。

つまり、訪問介護の人材不足は介護事業者だけの経営問題ではありません。

その地域で高齢者が自宅生活を続けられるかどうかに関わる問題なのです。

家族だけでは支えきれない

在宅介護という言葉から、家族が高齢者を介護する姿を思い浮かべる人もいるでしょう。

しかし、在宅介護と家族介護は同じではありません。

家族だけに介護を任せれば、働いている家族が仕事を辞めなければならなくなる場合があります。

介護離職が増えれば、企業にとっても貴重な働き手を失うことになります。

家族自身が高齢である老老介護もあります。

一人暮らしの高齢者であれば、そもそも日常的に介護を担える家族が近くにいない場合もあります。

在宅介護を維持するためには、家族の力だけではなく、訪問介護などの専門サービスを組み合わせることが不可欠です。

人材確保には安全対策も必要

訪問介護の人材を確保するためには、賃金や処遇の改善が重要です。

しかし、それだけでは十分ではありません。

訪問介護員は利用者宅で一人で働くことがあります。

利用者や家族から暴言や威圧的な言動を受けても、施設のようにすぐ同僚へ助けを求められない場合があります。

危険性の高い利用者宅には複数人で訪問する、防犯機器を活用する、問題が起きた場合には事業所で情報を共有するなどの仕組みが必要です。

安心して働けない仕事では、新しい人を採用しても長期間働き続けてもらうことが難しくなります。

人材確保と職員の安全対策は別々の問題ではありません。

デジタル化だけでは代替できない仕事がある

介護現場でもデジタル化や人工知能の活用が進んでいくでしょう。

記録作成や勤務管理、利用者情報の共有などでは、大きな効率化が期待できます。

移動経路を効率的に組むこともできます。

しかし、食事や入浴、排せつなどの身体介護をすべてデジタル技術に置き換えることはできません。

利用者の表情や身体の変化に気づき、声をかけながら介助する仕事にも人が必要です。

技術を使って人を完全に不要にするのではなく、事務作業などを効率化し、限られた人材が人にしかできない仕事へ時間を使えるようにすることが重要です。

訪問介護は地域の生活インフラになる

訪問介護は、一つの介護サービスとしてだけではなく、高齢者が地域で生活を続けるためのインフラとして考える必要があります。

電気や水道がなくなれば、その地域で生活することが難しくなります。

同じように、高齢者が多い地域で訪問介護サービスがなくなれば、自宅で生活を続けられない人が出てくる可能性があります。

今後は介護事業所があるかどうかだけではなく、必要な時間帯に実際にサービスを提供できる人材がいるかどうかまで考えなければなりません。

利用者160万人という数字の向こう側には、それぞれの家庭を訪問して介護を提供する人がいるのです。

結論

2024年度に訪問介護の利用者が初めて160万人を超えたことは、日本の介護において在宅サービスの重要性が高まっていることを示しています。

高齢者が増えても、そのすべてを介護施設だけで支えることはできません。

住み慣れた自宅で暮らし続けるためには、必要な介護を自宅へ届ける訪問介護が欠かせません。

しかし、訪問介護は人が利用者宅へ出向いて提供するサービスです。

利用者が増えても、ホームヘルパーが不足すればサービスを増やすことはできません。

これから必要なのは、賃金や処遇を改善するだけでなく、事務負担を減らし、安全対策を整え、介護職員が長く働き続けられる環境をつくることです。

在宅介護を充実させるということは、単に制度上のサービスを増やすことではありません。

実際に一軒一軒の家を訪ね、高齢者の生活を支える人を確保することです。

訪問介護160万人時代には、その担い手をどう守り、どう増やしていくのかが、日本の介護を持続させる大きな課題になるのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月10日 朝刊 ケアマネ8割に「カスハラ」

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