信用保証協会の保証が付いた融資なら、企業が返済できなくなっても銀行には損失が発生しないと思うかもしれません。
しかし、現在の一般的な信用保証ではそうではありません。
原則として融資額の80パーセントを信用保証協会が保証し、残りの20パーセントについては金融機関にもリスクを負わせる責任共有制度が導入されています。
なぜ公的な保証制度なのに100パーセント保証しないのでしょうか。
その理由を理解する鍵が、金融機関の融資審査です。
銀行にも損失の可能性を残すことで、融資先企業をしっかり見極めてもらう仕組みになっています。
今回は、保証割合80パーセントとはどのような意味なのかを見ていきます。
80パーセント保証とは何か
信用保証付き融資では、信用保証協会が中小企業の信用を補完します。
企業が返済できなくなった場合には、一定の条件のもとで信用保証協会が金融機関へ代位弁済します。
ただし、現在の一般的な制度では信用保証協会が融資額のすべてを保証するわけではありません。
原則として80パーセントを保証する責任共有制度が採用されています。
たとえば、銀行が企業へ1000万円を融資したとします。
単純化して考えると、信用保証協会が負担する部分が800万円、金融機関がリスクを負う部分が200万円というイメージになります。
信用保証が付いていても、銀行が融資リスクから完全に解放されるわけではないのです。
以前は原則100パーセント保証だった
現在の80パーセント保証を理解するには、制度が変更された経緯を知る必要があります。
以前の信用保証制度では、原則として100パーセント保証が行われていました。
企業が返済できなくなった場合、信用保証協会が基本的に融資額の全額を保証する仕組みです。
この制度には大きなメリットがあります。
銀行側の貸し倒れリスクが大幅に軽減されるため、信用力の低い中小企業にも資金を供給しやすくなります。
景気が悪化して企業の資金繰りが厳しくなったときにも、融資を維持しやすくなります。
一方で、100パーセント保証には問題もありました。
銀行自身が融資リスクをほとんど負わなくなるからです。
そこで2007年に責任共有制度が導入され、一般的な保証について金融機関にも一定のリスクを負わせる仕組みへ変更されました。
なぜ銀行にも20パーセントのリスクを負わせるのか
銀行が融資するときには、企業が将来きちんと返済できるかを審査します。
ところが、仮に企業が返済できなくなっても公的な機関が融資額の100パーセントを補償してくれるとしたらどうでしょうか。
銀行が負う損失は非常に小さくなります。
すると、融資先企業の財務内容や事業の将来性を厳しく確認する必要性も弱くなる可能性があります。
返済できる可能性の高い企業なのか。
借りたお金を何に使うのか。
投資によって利益は増えるのか。
将来のキャッシュフローから返済できるのか。
こうした点を銀行にきちんと審査してもらうためには、銀行自身にも融資結果について責任を持ってもらう必要があります。
そのために一定のリスクを金融機関へ残しているのです。
責任共有制度とは何か
こうした仕組みを責任共有制度といいます。
信用保証協会だけが信用リスクを負うのではなく、金融機関にもリスクを分担させます。
公的な信用保証によって中小企業の資金調達を支援しながら、民間金融機関にも融資先を見極めてもらうことが目的です。
信用保証協会がすべてを引き受ける仕組みなら、銀行は単に保証付き融資を提供する窓口になってしまう可能性があります。
しかし、銀行にも損失が発生する可能性があれば、融資後も企業の経営状況を確認する動機が生まれます。
企業の業績が悪化すれば経営改善について話し合ったり、必要に応じて支援したりする意味も大きくなります。
責任共有制度は融資時の審査だけではなく、融資後の企業支援にも関係する仕組みなのです。
80パーセント保証でも銀行のリスクは大きく軽減される
銀行が20パーセントのリスクを負うといっても、信用保証がないプロパー融資と同じではありません。
プロパー融資では、信用保証協会による保証がないため、原則として銀行自身が信用リスクを負います。
一方、80パーセント保証なら銀行のリスクは大きく軽減されます。
だからこそ、信用力や担保が十分ではない中小企業にも融資しやすくなります。
重要なのは、公的保証によってリスクをゼロにすることではありません。
銀行が融資できる程度までリスクを小さくしながら、企業を審査する動機が失われない程度のリスクを銀行にも残すことです。
このバランスを取るための仕組みが80パーセント保証だと考えると分かりやすいでしょう。
なぜ20パーセントなのか
では、なぜ銀行が負担する割合が20パーセントなのでしょうか。
保証割合を高くすれば、銀行は融資しやすくなります。
しかし保証割合を高くしすぎれば、銀行が企業を慎重に審査する動機が弱くなります。
逆に保証割合を低くしすぎれば、銀行のリスクが大きくなり、信用力の低い中小企業への融資が減る可能性があります。
つまり信用保証制度では、中小企業への資金供給と金融機関の審査機能という二つを両立させる必要があります。
80パーセント保証という仕組みは、そのバランスを取るために導入されています。
例外的に100パーセント保証される場合もある
すべての信用保証が80パーセントというわけではありません。
経済危機や自然災害などによって企業の経営環境が急激に悪化した場合には、特別な保証制度が設けられることがあります。
代表的だったのが新型コロナウイルス禍です。
感染拡大によって飲食店や宿泊業など多くの企業の売り上げが急減しました。
企業自身の経営努力だけでは対応できない異常事態だったため、実質無利子無担保のゼロゼロ融資など大規模な資金繰り支援が実施されました。
その際には100パーセント保証が活用されたケースもあります。
平時と危機時では信用保証に求められる役割が違うのです。
平時には金融機関にもリスクを負わせ、企業を見極めてもらう必要があります。
一方、危機時には企業への資金供給を止めないことが優先される場合があります。
今回の10億円保証では保証割合がさらに重要になる
今回、経済産業省は信用保証の上限を従来の2億8000万円から10億円程度まで拡大する新たな枠を検討しています。
大型設備投資やM&Aなどを行う成長企業への資金供給を支えることが狙いです。
しかし、保証額が大きくなれば、公的部門が負うリスクも大きくなります。
そこで検討されている新たな枠では、最大で融資額の5割程度を保証する仕組みが想定されています。
これは非常に重要な点です。
通常の保証よりも金融機関が大きなリスクを負うことで、銀行自身に成長企業を見極めてもらう考え方が強くなっています。
仮に10億円規模の融資を行うのであれば、その企業の事業計画や将来のキャッシュフローを銀行が慎重に評価する必要があります。
保証額が大きくなるほど、公的保証だけに頼るのではなく、銀行の目利き能力が重要になるわけです。
公的保証と民間金融の役割分担が重要になる
信用保証制度を考えるときには、保証割合の数字だけを見るのではなく、誰がどのリスクを負うのかを見ることが重要です。
公的部門がリスクをすべて負えば、中小企業への融資は増えやすくなります。
しかし銀行の審査機能が弱くなる可能性があります。
逆に銀行へすべてのリスクを負わせれば、信用力の低い企業への融資が慎重になりすぎる可能性があります。
だからこそ、公的保証と民間金融を組み合わせます。
信用保証協会が一定のリスクを引き受ける。
銀行も一定のリスクを負う。
企業も借りたお金を返済する責任を負う。
この三者の責任を適切に分けることが、信用保証制度を持続させるためには重要なのです。
結論
現在の一般的な信用保証では、原則として融資額の80パーセントを信用保証協会が保証し、金融機関にも一定のリスクを負わせる責任共有制度が導入されています。
以前は原則100パーセント保証でしたが、2007年に制度が見直されました。
銀行にもリスクを残す最大の理由は、融資先企業をきちんと審査してもらうためです。
企業が返済できなくなっても公的保証ですべて補償されるなら、銀行が融資先を慎重に見極める動機が弱くなる可能性があります。
一方、保証をなくしてしまえば、信用力や担保が十分ではない中小企業への融資が難しくなります。
公的保証によって銀行のリスクを軽減しながら、金融機関にも一定の責任を残す。
80パーセント保証は、この二つを両立させるための仕組みです。
そして今後、10億円規模の大型保証が導入されれば、保証割合の考え方はさらに重要になります。
信用保証制度で大切なのは、単に国がどれだけ保証するかではありません。
信用保証協会と銀行が適切にリスクを分担しながら、本当に資金を必要とし、将来返済できる企業へお金を届けることです。
80パーセントという数字の背景を見ると、信用保証制度が中小企業支援と銀行の目利きという二つの役割を両立させようとしていることが分かります。
参考
日本経済新聞 2026年9月9日朝刊 中小融資、保証上限上げ 2.8億円から10億円に 設備投資・M&A促す 経産省検討
日本経済新聞 2026年9月9日朝刊 信用保証 中小への融資、リスク軽減