介護人材不足が深刻になるなか、外国人介護人材への期待が高まっています。
日本では高齢化によって介護需要が増える一方、少子化によって働き手となる現役世代が減っていきます。
海外から働き手を受け入れることは、介護サービスを維持するための重要な人材確保策です。
しかし、外国人材を増やせば介護人材不足がすべて解決するわけではありません。
国内には、すでに介護福祉士などの資格を持ちながら介護現場で働いていない人がいます。
参考記事では、資格を持つ人のうち実際に介護職として働いている割合は約6割とされています。
海外から新しい人材を迎える一方で、国内にいる潜在介護福祉士にもう一度働いてもらう。
介護人材不足への対応では、どちらか一方ではなく複数の人材確保策を組み合わせる必要があります。
今回は、なぜ外国人材だけに頼ることが難しいのかを整理します。
外国人介護人材は重要な働き手
外国人介護人材は、日本の介護サービスを支える重要な存在です。
働き手となる日本人の若年層が減少していくなか、国内人材だけで必要な介護職員数を確保することは次第に難しくなります。
そこで海外から介護分野で働く人材を受け入れます。
介護現場で経験を積み、専門性を高めてもらうことができれば、長期的な介護人材の確保にもつながります。
外国人材の活用を単なる一時的な人手不足対策としてではなく、介護を担う人材の一つの柱として考えることが重要です。
なぜ外国人材が必要になるのか
背景には、介護需要と労働力人口の動きがあります。
参考記事では、厚生労働省の推計として、必要な介護職員数は2026年度に約240万人、2040年度には約272万人とされています。
介護需要の増加によって、必要な職員数はさらに増えていきます。
一方、少子化によって若い働き手は減少します。
しかも、人手不足なのは介護業界だけではありません。
製造業、物流、建設、小売り、外食、医療など様々な業界が人材を求めています。
介護業界だけが必要な日本人労働者を優先的に確保できるわけではありません。
そのため、外国人材は介護人材の供給を広げるうえで重要になります。
外国人材にも教育が必要になる
ただし、海外から人を受け入れれば、翌日から人手不足が解消するわけではありません。
介護には専門的な知識や技能が必要です。
さらに利用者とのコミュニケーションも重要です。
例えば、利用者が「今日は少し具合が悪い」と話したとします。
その言葉を理解するだけでなく、表情や普段との違いなども含めて状態を把握する必要があります。
認知症の利用者とのコミュニケーションでは、さらに丁寧な対応が求められることもあります。
そのため、外国人材の受け入れでは、介護技術だけでなく日本語や職場でのコミュニケーションを支援する仕組みも重要になります。
受け入れた後の定着も重要になる
外国人介護人材についても、日本人介護職員と同じように「採用して終わり」ではありません。
長く働いてもらえる環境をつくる必要があります。
賃金や勤務条件があります。
職場の人間関係があります。
仕事を学ぶための教育があります。
日本で生活するための支援も必要になる場合があります。
せっかく海外から人材を受け入れても、短期間で介護職を辞めたり、日本で働くことをやめたりすれば、人材不足の長期的な解決にはつながりません。
外国人材についても、採用人数だけでなく定着まで考える必要があります。
海外でも介護人材が必要になる
外国人材への依存を考える際には、海外の事情も忘れてはいけません。
高齢化は日本だけで起きる問題ではありません。
今後、他の国でも高齢者が増えれば、自国で介護や医療を担う人材が必要になります。
世界中で働き手の確保競争が強まる可能性があります。
そのとき、日本が希望するだけの外国人介護人材を確保できるとは限りません。
賃金だけでなく、生活環境やキャリア形成なども含めて働く国が選ばれることになります。
外国人材を重要な柱としながらも、それだけに人材確保を依存しないことが必要です。
国内には資格を持つ人がいる
そこで改めて注目されるのが国内の潜在介護福祉士です。
介護福祉士の資格を持ちながら、現在は介護職として働いていない人がいます。
参考記事では、資格を持つ人のうち介護職として働いている割合は約6割とされています。
裏返せば、資格を持ちながら介護現場にいない人が相当数いることになります。
新しい介護人材を海外から受け入れることも重要ですが、すでに国内にいる経験者へ戻ってもらうことも大きな人材確保策になります。
資格取得のための教育を最初から行う必要がない人もいます。
過去の現場経験を生かせる可能性もあります。
なぜ潜在介護福祉士は戻らないのか
問題は、資格を持っている人に「戻ってください」と呼びかけるだけでは復職が進まないことです。
介護職を離れた人には、それぞれ理由があります。
身体的負担が大きかった。
夜勤が難しかった。
育児との両立ができなかった。
家族の介護が必要になった。
長期間現場を離れ、知識や技術に不安がある。
こうした問題が解消されていなければ、介護人材が不足していると伝えても戻ることは難しいでしょう。
重要なのは復職の意思を確認することだけではありません。
復職できる条件を整えることです。
外国人材と国内人材は競合するものではない
外国人材を増やすのか、潜在介護福祉士を復職させるのか。
このような二者択一で考える必要はありません。
両方を進めることができます。
外国人材によって新しい働き手を増やす。
潜在介護福祉士には再び介護現場へ戻ってもらう。
新卒者にも介護業界へ入ってもらう。
現在働いている人には辞めずに働き続けてもらう。
それぞれが異なる役割を持っています。
介護人材不足の規模を考えれば、一つの人材層だけで必要人数を確保するより、人材の入口を複数用意する方が現実的です。
短時間勤務も人材供給を広げる
国内人材を活用するためには、フルタイム勤務だけを前提にしないことも重要です。
例えば、育児中の潜在介護福祉士がいたとします。
午後4時までなら働けます。
しかし夜勤を含むフルタイム勤務はできません。
この人を「働けない人」と考えるのか、「1日6時間働ける介護福祉士」と考えるのかで、人材政策は大きく変わります。
短時間正社員。
パート勤務。
スポットワーク。
段階的復職。
様々な働き方を用意すれば、介護人材として働ける人の範囲を広げることができます。
人材供給を増やすとは、新しい人を探すことだけではありません。
現在の働き方では参加できない人が働ける仕組みをつくることでもあります。
介護助手との分業も必要になる
さらに、介護施設で働く人すべてが介護福祉士である必要もありません。
清掃、配膳、備品整理などの周辺業務を介護助手やスポットワーカーが担当すれば、介護福祉士は専門的なケアへ集中できます。
外国人介護人材を増やす。
潜在介護福祉士に復職してもらう。
介護助手を活用する。
業務切り分けを進める。
これらは別々の政策に見えますが、目的は共通しています。
限られた介護人材を、必要な仕事へ適切に配置することです。
人数を増やす政策と、今いる人材を有効に使う政策を同時に進める必要があります。
人材確保には複数の入口が必要になる
将来の介護需要を考えれば、一つの入口だけで必要な人材を確保するのは難しくなります。
新卒者という入口があります。
外国人材という入口があります。
潜在介護福祉士の復職という入口があります。
未経験者が介護助手として働き始める入口もあります。
スポットワークを通じて介護業界を経験し、その後正規採用につながる入口も考えられます。
そして現在働いている人が離職しないよう、出口を狭くすることも必要です。
介護人材政策は、一つの巨大な採用ルートをつくるのではなく、複数の小さな入口を広げていく発想が重要になります。
結論
外国人介護人材は、日本の介護サービスを支える重要な存在です。
高齢化によって必要な介護職員数が増える一方、少子化によって国内の働き手が減っていく以上、海外から人材を受け入れることは重要な人材確保策になります。
しかし、外国人材だけですべての介護人材不足を補うことは容易ではありません。
教育や日本語支援が必要です。
受け入れた後の定着も重要です。
さらに海外でも高齢化が進めば、介護人材を巡る国際的な競争が強まる可能性があります。
一方、国内には介護福祉士などの資格を持ちながら、介護現場を離れている人がいます。
この人たちが短時間勤務や段階的復職などによって戻れる環境を整えることも重要です。
外国人材か国内人材かという二者択一ではありません。
新卒者を増やす。
外国人材を受け入れる。
潜在介護福祉士に戻ってもらう。
現在働いている人の離職を防ぐ。
介護助手やスポットワーカーとの分業を進める。
介護人材不足が大きいほど、一つの方法に依存せず、複数の人材確保策を組み合わせる必要があります。
介護を支える人をどこか一つから大量に連れてくるのではなく、働ける人がそれぞれの条件に応じて介護に参加できる仕組みをつくる。
それが、長期的な介護人材確保の基本になるのです。
参考
日本経済新聞 2026年9月4日朝刊 離職した介護人材の復職
日本経済新聞 2026年9月4日朝刊 介護、スポットワーク拡大 人手不足補う