介護人材政策を養成から再就業まで一体化するとは何か 資格を取って終わりではなく離職後まで支援する理由編

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介護人材を増やす政策というと、新しい介護福祉士を育てることが中心だと思われがちです。

学校で介護を学んでもらう。資格を取得してもらう。介護施設へ就職してもらう。

もちろん、こうした人材育成は重要です。

しかし、せっかく資格を取得した人が数年後に介護職を離れ、そのまま戻らなければ、介護人材は十分に蓄積されません。

参考記事では、介護福祉士などの資格を持つ人のうち、実際に介護職として働いている割合は約6割とされています。

そこで必要になるのが、介護人材政策を「養成」「就業」「離職」「学び直し」「再就業」まで一体として考えることです。

資格取得をゴールにするのではなく、一度離職しても再び介護現場へ戻れるところまで支える仕組みです。

今回は、介護人材政策を養成から再就業まで一体化するとはどういうことなのかを整理します。

介護人材の養成とは何か

介護人材政策の最初の段階が養成です。

介護に必要な知識や技能を学び、介護福祉士などとして働ける人材を育てます。

介護需要が増えていく以上、新しい人材を継続的に育成することは欠かせません。

参考記事では、必要となる介護職員数は2026年度に約240万人、2040年度には約272万人とされています。

将来に向けて必要人数が増えていくのであれば、新しい人材の入口を維持する必要があります。

しかし、養成人数だけを増やせば介護人材不足が解決するわけではありません。

養成した人が実際に就職し、その後も働き続けるところまで見る必要があります。

資格取得はゴールではない

介護福祉士の資格を取得することは、人材政策の重要な成果です。

しかし、社会全体から見れば資格証を持つ人を増やすこと自体が最終目的ではありません。

資格や専門性を介護現場で生かしてもらうことが目的です。

例えば、100人が資格を取得しても、そのうち多くの人が介護職へ就かなければ人手不足の解消にはつながりません。

さらに、就職しても短期間で離職すれば、介護現場から人材が流出します。

したがって、

何人養成したか

何人資格を取得したか

だけではなく、

何人が就業したか

何人が働き続けているか

まで確認する必要があります。

就業後の定着まで考える

資格取得後に介護施設へ就職したら、人材政策が終わるわけでもありません。

そこで次に重要になるのが定着です。

介護職を離れる理由には様々なものがあります。

賃金があります。

身体的負担があります。

夜勤やシフト勤務があります。

職場の人間関係があります。

育児や家族の介護との両立もあります。

こうした問題を放置したまま新しい人を次々に養成しても、一方から人材を入れながら他方から流出する状態になります。

新規採用と離職防止を同時に進めなければなりません。

離職した時点で関係を切らない

これまでの人材政策では、働いている人と離職した人の間に大きな境目ができやすいという問題があります。

介護施設で働いている間は、勤務先を通じて様々な情報を得られます。

しかし退職すると、介護業界との接点が急に少なくなることがあります。

数年間離れているうちに、制度や介護技術が変化します。

本人も「今さら戻れるだろうか」と不安になります。

そのまま別の業界で働き続ければ、資格を持っていても介護現場へ戻る機会を失う可能性があります。

そこで重要なのが、離職した時点で介護人材政策とのつながりを切らないことです。

離職者届出制度が接点になる

介護福祉士などについては、離職した際に福祉人材センターへ届け出る仕組みがあります。

この制度には、資格を持つ人と介護業界との接点を離職後も維持する意味があります。

誰が資格を持っているのか。

誰が現在介護職を離れているのか。

どのような人が再就業を希望しているのか。

こうした情報を把握できれば、必要な復職支援につなげやすくなります。

しかし、参考記事が指摘するように、届出は努力義務です。

そのため、行政側が離職した有資格者を完全に把握できるわけではありません。

制度があっても、対象となる人とつながれなければ十分な支援はできません。

学び直しが復職への橋になる

長期間介護現場を離れていた人にとって、大きな不安の一つが知識や技術のブランクです。

資格を持っているからといって、何年離れていてもすぐ以前と同じように働けるとは限りません。

介護に関する制度が変わっているかもしれません。

介護機器が変化している場合もあります。

記録方法がデジタル化していることもあります。

そこで復職研修などの学び直しが重要になります。

最新の知識や技術を確認し、

これならもう一度働けそうだ

と思える状態をつくります。

学び直しは、離職と再就業の間に橋を架ける役割を持つのです。

再就職準備金も復職を後押しする

復職には知識や技術だけでなく、お金の問題もあります。

仕事を始めるために様々な準備が必要になる場合があります。

そこで介護職への再就職を支援する仕組みの一つとして、再就職準備金があります。

こうした制度を単独で存在させるだけではなく、離職者の把握や復職研修、職業紹介などとつなげることが重要です。

例えば、

離職時に登録する

復職を考え始めたら相談する

必要な研修を受ける

再就職準備金を利用する

求人を紹介してもらう

という流れができれば、制度同士が一つの復職ルートになります。

いきなりフルタイム復職を求めない

再就業支援でも重要なのが、働き方の選択肢です。

離職前にフルタイムで夜勤もしていたからといって、復職後も同じ働き方ができるとは限りません。

育児中かもしれません。

家族の介護をしているかもしれません。

年齢によって体力面の事情が変わっている場合もあります。

そこで、

スポットワーク

短時間勤務

パート勤務

短時間正社員

など複数の入口を用意します。

数時間の勤務から始め、慣れてから勤務時間を増やす段階的復職も考えられます。

復職とは、以前と同じ働き方へ完全に戻ることだけを意味するものではありません。

地域で制度をつなげる

参考記事では、資格登録情報、福祉人材センターへの届出、再就職準備金、復職研修、短時間勤務、段階的な復帰などを地域単位でつなぐことの重要性が指摘されています。

それぞれの制度が存在していても、利用者から見てバラバラであれば使いにくくなります。

どこへ相談すればよいのか分からない。

自分がどの制度の対象なのか分からない。

研修を受けても、その後の求人紹介につながらない。

これでは復職のハードルが残ります。

一つの窓口から必要な支援へ順番につながる仕組みにすることが重要です。

復職の意思より復職できる条件を見る

介護人材政策で特に重要なのが、「戻る意思がありますか」という問いだけで終わらせないことです。

例えば、

介護職へ戻りたいが夜勤はできない

週5日は難しいが週3日なら働ける

身体介護は難しいが別の業務ならできる

研修を受ければ復職したい

という人がいるかもしれません。

この人たちを「今すぐフルタイムで復職できない人」と見るのか、「条件が整えば介護人材として戻れる人」と見るのかで政策は変わります。

本人に復職への努力だけを求めるのではなく、復職可能な条件を社会や事業所側が整える必要があります。

人材政策を一本の循環として考える

介護人材政策は、一本道ではありません。

養成して、就職して終わりではないからです。

養成する。

就業する。

働き続ける。

事情によって離職する。

介護業界との接点を維持する。

学び直す。

短時間から復職する。

再び介護人材として活躍する。

このような循環として考えることができます。

一度離職したら介護人材ではなくなるのではありません。

資格や経験を持つ人材として、再び戻れる可能性を残しておくことが重要です。

人口減少社会では、人材を一度使って終わりにする余裕は小さくなっていきます。

結論

介護人材政策を養成から再就業まで一体化するとは、介護人材を資格取得や就職の時点だけで捉えるのではなく、その後の定着、離職、学び直し、復職まで継続して支えることです。

介護需要が増える一方で働き手が減少する社会では、新しい介護人材を養成するだけでは十分ではありません。

現在働いている人にはできるだけ長く働いてもらう。

離職した人とは接点を維持する。

ブランクがあれば復職研修を用意する。

経済的な負担には再就職準備金などで対応する。

フルタイム勤務が難しければ、短時間勤務や段階的復職という道を用意する。

こうした制度をバラバラに置くのではなく、一つの流れとしてつなげることが重要です。

介護福祉士の資格は、取得した瞬間だけ価値があるものではありません。

一度現場を離れても、その知識や経験を再び社会で生かせる可能性があります。

これからの介護人材政策で必要なのは、「何人資格を取ったか」だけを追いかけることではありません。

養成した人材が働き、辞めざるを得ない時期があってもつながりを保ち、条件が整えば再び戻れる。

介護人材を一方向に送り出す政策から、人材が何度でも戻れる循環型の政策へ変えていくことが、人手不足が深刻になる時代には求められるのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月4日朝刊 離職した介護人材の復職

日本経済新聞 2026年9月4日朝刊 介護、スポットワーク拡大 人手不足補う

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