オンライン診療の診療報酬とは何か 画面越しの診察にも健康保険が使える仕組み編

人生100年時代
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病院や診療所で医師の診察を受けると、医療機関には診療報酬が支払われます。

患者が窓口で支払う医療費だけではありません。健康保険から支払われる部分と合わせて、医療機関の収入になります。

では、医師と患者が同じ診察室にいないオンライン診療ではどうなるのでしょうか。

オンライン診療でも、一定の要件を満たして保険診療として行われれば健康保険を利用できます。

日本では2018年度の診療報酬改定でオンライン診療に対する評価が設けられ、その後、制度の見直しが続いてきました。

さらに2026年度の診療報酬改定では、患者のそばに看護師がいるD to P with Nなど、新しいオンライン診療の形態を踏まえた評価の明確化も進んでいます。

オンライン診療が実証実験から日常的な医療へ広がるには、技術だけではなく、その医療行為にどのように診療報酬を支払うのかという仕組みが重要になります。

診療報酬とは何か

診療報酬とは、公的医療保険の対象となる診察、検査、処置、手術などの医療サービスについて定められた公定価格です。

医療機関が自由に料金を決める仕組みではありません。

国が医療行為ごとに点数などを定めています。

患者が健康保険を利用して診療を受けた場合、年齢や所得などに応じて医療費の一部を窓口で負担します。

残りは健康保険から医療機関へ支払われます。

例えば医療費全体が1万円で患者の自己負担割合が3割なら、単純化すると患者が3000円を負担し、残りの7000円が保険者から支払われるという考え方です。

オンライン診療でも保険診療として認められる場合には、この公的医療保険の仕組みの中で診療報酬が支払われます。

オンライン診療にも健康保険が使える

オンラインだからすべて自由診療になるわけではありません。

一定の要件を満たしたオンライン診療については、公的医療保険を利用できます。

患者から見ると、

病院の診察室で医師と直接会って診察を受ける

スマートフォンなどを使って医師の診察を受ける

という診療方法の違いがあっても、保険診療として認められる範囲であれば健康保険を使えることになります。

ただし、オンライン診療サービスで表示されるすべての料金が健康保険の対象になるわけではありません。

診療そのものの費用とは別に、システム利用料などが設定されている場合もあります。

患者が実際にいくら支払うのかを見る場合には、保険診療部分だけでなく周辺費用も確認する必要があります。

2018年度にオンライン診療の評価が設けられた

オンライン診療にとって大きな節目となったのが2018年度の診療報酬改定です。

この改定でオンライン診療に対する診療報酬上の評価が設けられました。

オンライン診療という医療行為について、公的医療保険の中で評価する仕組みが本格的に整備されたわけです。

ただし、当初は利用できる患者や病気などについてさまざまな条件がありました。

基本的には対面診療を行ってきた患者について、オンラインを組み合わせて継続的に診療するという考え方が強い制度でした。

そのため現在と比べると利用できる範囲は限定的でした。

コロナ禍でオンライン診療が急速に広がった

オンライン診療の普及を大きく加速させたのが新型コロナウイルス感染症です。

感染拡大期には、患者が医療機関へ行くこと自体に感染リスクがありました。

そこで2020年には特例的な対応として、初診から電話やオンラインによる診療を利用できる仕組みが導入されました。

それまでオンライン診療は再診を中心としていました。

コロナ禍によって、

初めて診てもらう患者

感染を避けたい患者

外出が難しい患者

などにも利用が広がりました。

その後、2022年には初診からのオンライン診療が恒久的な仕組みとなりました。

オンライン診療は一時的な感染症対策から、通常の医療提供方法の一つへと位置づけが変わってきたのです。

対面診療とオンライン診療では評価が同じとは限らない

健康保険が使えるからといって、オンライン診療と対面診療が診療報酬上まったく同じ扱いになるとは限りません。

診療報酬では、どのような医療をどのような体制で提供したのかによって評価が決まります。

対面診療では医師が患者の体に直接触れ、必要に応じてその場で検査や処置を行えます。

オンライン診療では、医師と患者が離れています。

得られる情報や提供できる医療には違いがあります。

一方でオンライン診療には、患者の移動負担を減らしたり、遠隔地の医師の診療能力を活用したりできるメリットがあります。

診療報酬制度では、こうした医療の内容や提供体制を踏まえて評価を設計する必要があります。

診療報酬がなければ普及しにくい

オンライン診療を普及させるうえで、診療報酬は非常に重要です。

オンライン診療を行うには、医療機関側にも費用がかかります。

通信機器を準備する必要があります。

オンライン診療システムを導入する場合もあります。

予約や本人確認、決済などの仕組みも必要です。

看護師が患者のそばに立ち会う場合には、人員を配置しなければなりません。

電子聴診器などの医療機器を導入することもあります。

こうした体制を整えても十分な診療報酬が得られなければ、医療機関が継続的にオンライン診療を提供することは難しくなります。

制度を普及させるには、医療としての安全性だけでなく経済的に継続できる仕組みが必要なのです。

D to P with Nでは看護師の仕事が増える

オンライン診療の進化によって、診療報酬上の新しい課題も生まれています。

その一つがD to P with Nです。

Dは医師、Pは患者、Nは看護師です。

通常の自宅型オンライン診療では、医師と患者が直接オンラインでつながる形が中心です。

D to P with Nでは患者のそばに看護師がいます。

看護師は患者の状態を確認します。

体温や血圧、血中酸素飽和度などを測定する場合があります。

電子聴診器などを操作して、離れた場所にいる医師へ情報を届けることもあります。

さらに医師の指示などに基づき、認められた範囲で診療を補助することがあります。

つまり医師のオンライン診察だけではなく、患者側にも医療従事者の仕事が発生します。

看護師の診療補助をどう評価するのか

D to P with Nを持続的な仕組みにするためには、患者のそばにいる看護師の役割を診療報酬上どのように評価するかが重要になります。

看護師が一定時間患者に付き添えば、人件費が発生します。

検査や処置を行えば医療材料が必要になる場合があります。

電子聴診器などを使えば機器の購入や維持管理にも費用がかかります。

通常のオンライン診療と同じように医師の診察だけを評価する仕組みでは、患者側の医療機関が負担するコストを十分に反映できない可能性があります。

2026年度の診療報酬改定では、こうしたD to P with Nなどのオンライン診療を念頭に、診療報酬上の評価の明確化が進められています。

オンライン診療の形が多様化すれば、診療報酬の仕組みもそれに合わせて変える必要があります。

医師がいる病院と患者がいる施設が違う場合もある

D to P with Nでは、もう一つ特徴的な問題があります。

医師が所属する医療機関と、患者や看護師がいる医療機関が別の場合があることです。

従来の対面診療なら、一つの病院の中で医師と看護師が患者に医療を提供することが一般的です。

オンライン診療では、

医師はA病院

患者と看護師はB病院

ということが起こります。

さらにオンライン診療受診施設が広がれば、医師と患者が別の施設にいるケースは増えていきます。

誰がどの医療行為を提供し、それをどのように診療報酬で評価するのか。

オンライン診療の普及は、従来の一つの医療機関の中だけで完結する診療報酬の考え方にも変化を求めています。

保険診療以外の費用にも注意する

患者にとって重要なのは、最終的にいくら支払うのかです。

オンライン診療で健康保険が使えたとしても、支払額が対面診療より必ず安くなるとは限りません。

例えばオンライン診療サービスによっては、保険診療部分とは別にシステム利用料などがかかる場合があります。

処方された薬を自宅へ配送してもらえば、送料が必要になることもあります。

一方、対面診療なら病院までの交通費がかかります。

仕事を休んで通院する場合には、時間的な負担もあります。

そのためオンライン診療の負担を比較するときには、

診察の自己負担

システム利用料

薬の受け取り費用

交通費

移動時間

などを総合的に考える必要があります。

単純に診療報酬の金額だけでオンラインと対面のどちらが安いとは判断できません。

診療報酬は医療政策を動かす

診療報酬には、医療機関へ代金を支払う以上の役割があります。

国がどのような医療を広げたいのかを示す政策手段でもあります。

ある医療行為に適切な診療報酬が設定されれば、医療機関はそのサービスを提供しやすくなります。

反対に、設備や人員に大きな費用がかかるのに十分な評価がなければ、普及しにくくなります。

オンライン診療についても同じです。

医師の診察だけでなく、

患者側の看護師

医療機器

地域の医療機関との連携

対面診療への切り替え

などを含めた医療提供体制をどのように評価するのかが重要になります。

診療報酬の変化を見ると、国がオンライン診療をどのような医療として育てようとしているのかも見えてきます。

結論

オンライン診療の診療報酬とは、医師が患者と離れた場所から行う診察などを公的医療保険の中で評価する仕組みです。

日本では2018年度の診療報酬改定でオンライン診療に対する評価が設けられました。

その後、新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに利用が拡大し、2022年には初診からのオンライン診療も恒久的な仕組みとなりました。

現在ではオンライン診療は、自宅にいる患者と医師をつなぐだけではありません。

患者のそばに看護師がいるD to P with Nや、医療機関を訪れて離れた場所にいる医師から診察を受ける来院型オンライン診療など、新しい形が登場しています。

こうした診療では、医師だけでなく患者のそばにいる看護師にも仕事が発生します。

医療機器や通信設備も必要になります。

2026年度の診療報酬改定では、こうした新しいオンライン診療の提供方法を踏まえた評価の明確化も進められています。

オンライン診療を地域医療の持続的な仕組みにするためには、技術的に診察できるだけでは足りません。

医師、看護師、医療機関が継続してサービスを提供できる診療報酬の仕組みが必要です。

オンライン診療の進化に合わせて診療報酬も進化することが、人口減少と医師不足が進む日本の地域医療を支える重要な条件になるでしょう。

参考

日本経済新聞 2026年8月22日 朝刊 進化するオンライン診療 看護師立ち会い、検査や処置

日本経済新聞 2026年8月22日 朝刊 駅で受診可能に

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