オンライン診療では、以前から診てもらっている医師だけでなく、一定の条件のもとで初めて診てもらう医師から診察を受けることもできます。
オンライン診療の初診です。
日本のオンライン診療は、もともと継続的に診療している患者を対象とする再診を中心に発展してきました。
ところが新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに制度が大きく変わります。
感染を避けながら医療を受けられるようにするため、2020年に特例的な対応として初診からのオンライン診療が認められました。
その後、2022年には初診からのオンライン診療が恒久的な仕組みとなりました。
ただし、初めて会う医師が画面越しにどのような病気でも診察できるという意味ではありません。
オンライン診療では得られる情報に限界があるため、初診では特に安全性への配慮が重要になります。
初診とは何か
初診とは、一般的には患者がその病気などについて初めて医師の診察を受けることです。
医師にとっては、その患者について十分な診療情報を持っていないところから診察を始めることになります。
患者がどのような病気にかかったことがあるのか。
現在どのような薬を飲んでいるのか。
薬や食べ物などにアレルギーがあるのか。
今回の症状がいつから始まったのか。
こうした情報を一つずつ確認していく必要があります。
以前から診察している患者であれば、医師は過去の診療記録や検査結果などを持っていることがあります。
初診では、その情報が十分にない場合があります。
この違いがオンライン診療では特に重要になります。
再診とは何が違うのか
再診では、医師が患者についてすでに一定の情報を持っています。
例えば高血圧の患者を長期間診療しているとします。
医師は過去の血圧の推移を知っています。
どの薬を処方しているのかも分かります。
過去の検査結果や副作用の有無なども診療記録から確認できます。
患者の普段の状態を知っていれば、オンラインで話したときの変化にも気づきやすくなります。
一方、初診ではこうした比較材料が十分にありません。
画面に映る患者と、その患者から聞き取った情報などを基に判断しなければならない場面が増えます。
そのためオンライン診療は、もともと初診より再診との相性がよいと考えられてきました。
なぜ以前は再診が中心だったのか
オンライン診療には対面診療にはない制約があります。
医師が患者に直接触れることができません。
通常の自宅型オンライン診療では聴診も容易ではありません。
血液検査やエックス線検査などもその場ではできません。
以前から診療している患者なら、医師は過去の診察や検査で患者の状態を把握しています。
そのうえでオンラインを利用すれば、情報不足をある程度補うことができます。
しかし初めて診察する患者では、そもそも基準となる情報がありません。
そのためオンライン診療が公的医療保険の仕組みとして本格的に導入された当初は、再診を中心とする運用になっていました。
コロナ禍で初診オンライン診療が広がった
大きな転換点となったのが新型コロナウイルス感染症です。
感染拡大期には、患者が医療機関へ行くこと自体に感染リスクがありました。
一方で、病気になった人が診察を受けないわけにはいきません。
そこで2020年、特例的な対応として初診から電話やオンラインによる診療を受けられる仕組みが導入されました。
患者と医師が同じ場所にいなくても診療できるオンラインの特徴が、感染症流行時に大きな意味を持ったのです。
この経験によって、初診でも一定の条件のもとでオンライン診療を活用できることが広く認識されるようになりました。
2022年から恒久的な仕組みになった
コロナ禍の初診オンライン診療は、当初は緊急的、特例的な対応でした。
しかし、その後もオンライン診療を医療提供体制の一つとして活用する方向で制度整備が進みました。
2022年には、初診からオンライン診療を行うことが恒久的に認められるようになりました。
これによって、オンライン診療は、
まず対面で診察する
その後の再診をオンラインにする
という利用方法だけではなくなりました。
一定の条件を満たせば、患者が初めて医師と会う場面からオンラインを利用できるようになったのです。
地方で近くに医療機関がない患者や、外出が難しい患者などにとって、医療への入口を増やす意味があります。
初診では本人確認も重要になる
初めて診察する患者の場合、医師は画面の向こうにいる人が誰なのかを適切に確認する必要があります。
対面診療なら、患者は医療機関を訪れ、受付などを経て診察室へ入ります。
オンラインでは患者と医療機関が物理的に離れています。
そのため本人確認や医療保険の資格確認などを適切に行う必要があります。
また、患者側からも診察する医師が誰なのかを確認できることが重要です。
オンライン診療は便利ですが、画面越しだからこそ患者と医師の双方を適切に確認する仕組みが必要になります。
医師はどのように患者の情報を集めるのか
初診のオンライン診療では問診が非常に重要になります。
医師は患者に症状だけを聞くわけではありません。
既往歴
服用している薬
アレルギー
過去の手術
症状が始まった時期
症状の変化
など、診断に必要な情報を確認します。
過去の診療情報を確認できる場合には、それも判断材料になります。
患者が自宅で体温や血圧などを測定できれば、その情報を伝えることもできます。
来院型オンライン診療で看護師が立ち会っている場合には、看護師による観察や測定結果なども医師へ伝えることができます。
初診では、限られた情報をできるだけ正確に集めることが重要になります。
初診では処方できない薬もある
オンライン診療の初診では、薬の処方についても安全性を考える必要があります。
画面越しの診察では患者の状態を十分に把握できない場合があるため、初診からすべての薬を自由に処方できるわけではありません。
特に安全管理が必要な薬については制限があります。
薬を処方する場合でも、医師はオンラインで得られる情報から安全に処方できるかを判断する必要があります。
必要な情報が不足している場合には、対面診療を求めることがあります。
オンライン診療が便利だからといって、薬を簡単に入手するための仕組みではありません。
診察の安全性が前提になります。
画面だけでは判断できないこともある
初診オンライン診療の最大の注意点は、医師が患者について十分な情報を持っていない可能性があることです。
例えば患者が腹痛を訴えているとします。
問診によって痛む場所や症状の経過を聞くことはできます。
しかし、医師自身が腹部を触って硬さや圧痛などを確認することはできません。
血液検査や画像検査が必要になる場合もあります。
こうしたケースでは、初診をオンラインで始めても途中で対面診療へ切り替えることがあります。
初診オンライン診療が認められていることと、オンラインだけですべての病気を診断できることは別なのです。
かかりつけ医との関係も重要になる
初診からオンライン診療を利用できるようになっても、患者の過去の状態を知っている医師の価値がなくなるわけではありません。
むしろオンライン診療では、患者の診療情報をどれだけ把握できているかが重要になります。
普段から診てもらっている医師であれば、過去の病気や薬、検査結果などを把握している可能性があります。
オンライン診療でも患者の変化を比較しやすくなります。
一方、初めて診察する医師の場合には、一から情報を確認する必要があります。
オンライン診療の普及によって、どこにいる医師でもよいという方向に進むとは限りません。
オンラインだからこそ、継続的な診療情報を共有することの重要性が高まります。
初診オンライン診療は医療への入口になる
初診オンライン診療の大きな役割の一つは、患者が医療につながる入口を増やすことです。
近くに受診したい診療科がない地域があります。
夜間や休日で通常の診療所が開いていないこともあります。
子育てや介護などで外出しにくい人もいます。
こうした場合、最初の診察をオンラインで受けられれば、医師に相談する機会を確保できます。
その結果、
オンラインで対応できる
翌日に通常の外来を受診する
早めに対面診療を受ける
すぐに救急医療へ行く
といった次の行動を医師と相談できます。
オンライン診療には、病気をオンラインだけで治療する役割だけでなく、適切な医療へ患者をつなぐ役割もあるのです。
結論
オンライン診療の初診とは、患者がその医師から初めて診察を受ける段階からオンラインを利用する仕組みです。
日本ではオンライン診療が本格的に導入された当初、再診を中心として利用されていました。
医師が患者の過去の診療情報を把握している再診の方が、オンラインでも安全に診察しやすかったためです。
しかし、新型コロナウイルス感染症の流行によって状況が変わりました。
2020年に特例的に初診からのオンライン診療が認められ、その後2022年に恒久的な仕組みとなりました。
現在では一定の条件のもとで、初めて会う医師の診察をオンラインで受けることができます。
ただし、初診オンライン診療は対面診療とまったく同じではありません。
医師が患者に直接触れることができず、その場で行える検査にも限界があります。
十分な情報が得られない場合や、詳しい身体診察、検査などが必要な場合には対面診療へ切り替える必要があります。
初診からオンライン診療を利用できる最大の意味は、すべての医療を画面の中で完結させることではありません。
まず医師につながり、患者の状態を確認し、そのままオンラインで対応するのか、対面診療へ進むのか、救急医療が必要なのかを判断できることです。
初診オンライン診療は、医師不足や人口減少が進む地域において、患者が必要な医療へたどり着くための新しい入口になりつつあります。
参考
日本経済新聞 2026年8月22日 朝刊 進化するオンライン診療 看護師立ち会い、検査や処置
日本経済新聞 2026年8月22日 朝刊 駅で受診可能に