オンライン診療で看護師はどこまでできるのか 医師の指示による検査や処置の範囲編

人生100年時代
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オンライン診療では、医師が患者と離れた場所にいるため、対面診療のように患者の体に触れて診察することができません。

そこで重要な役割を担うのが、患者のそばにいる看護師です。

看護師が立ち会うD to P with Nでは、看護師が患者の状態を確認し、医師へ情報を伝えます。さらに医師の指示などに基づき、法律で認められた範囲で検査や投薬、点滴、処置といった診療の補助を行うことがあります。

ただし、看護師が医師に代わって自由に診断や治療を行えるわけではありません。

オンライン診療が広がるほど、医師と看護師の役割をどのように分担するのかが重要になります。

診療の補助とは何か

看護師の仕事を理解するうえで重要なのが、診療の補助という考え方です。

保健師助産師看護師法では、看護師について傷病者や産婦に対する療養上の世話または診療の補助を行うことを業とする者と定めています。

療養上の世話には、患者の日常生活を医療面から支援する仕事などが含まれます。

一方、診療の補助とは、医師などが行う診療を看護師が専門職として補助するものです。

オンライン診療でも、この基本的な役割が変わるわけではありません。

医師が遠隔地にいるから看護師の権限が自動的に広がるということではなく、看護師は法律や医師の指示などに基づいて診療を補助します。

医師にしかできない医行為がある

医療現場には医師が行うべき行為があります。

例えば病気を診断し、どのような治療を行うのかを医学的に判断することです。

患者にせきや発熱があったとしても、看護師が独自に病名を確定し、自由に治療方針を決める仕組みではありません。

オンライン診療でも診察するのは医師です。

患者の症状を聞き、看護師から得た情報や検査結果などを確認して、医師が医学的に判断します。

その判断に基づいて必要な診療を進めます。

つまりD to P with Nでは、

医師が診察して判断する

看護師が患者のそばで診療を補助する

という役割分担が基本になります。

医師が遠隔地にいることと、医師の役割そのものが看護師へ移ることは別の問題です。

看護師は患者の状態を直接確認できる

オンライン診療で看護師がいる最大のメリットは、患者を直接確認できることです。

通常の自宅型オンライン診療では、医師が得られる情報に限界があります。

患者本人が症状を説明しても、どの程度苦しそうなのかを画面だけで正確に判断することが難しい場合があります。

患者のそばに看護師がいれば、医療従事者として患者の状態を確認できます。

体温

血圧

脈拍

呼吸状態

血中酸素飽和度

などを測定し、その情報を医師へ伝えることができます。

患者本人からの説明だけではなく、医療従事者が確認した客観的な情報を医師が利用できることになります。

電子聴診器などの医療機器も使える

オンライン診療では医療機器の活用も重要です。

例えば電子聴診器です。

通常の聴診器では医師自身が患者の胸や背中に聴診器を当てます。

しかし、遠隔地にいる医師にはできません。

そこで患者のそばにいる看護師が電子聴診器を患者に当てます。

取得した心音や呼吸音をデジタルデータとして医師へ送れば、医師は離れた場所から音を確認できます。

看護師が医師の耳の代わりになるというより、看護師が医療機器を操作することで、医師の診察能力を遠隔地まで届ける仕組みと考えた方が分かりやすいでしょう。

医療機器の発達によって、オンライン診療で医師が得られる情報は今後さらに増える可能性があります。

検査を補助することもできる

患者の状態によっては、診察だけでなく検査が必要になることがあります。

D to P with Nでは、医師の指示などに基づき、看護師が認められた範囲で検査を補助することが考えられます。

例えば検体を採取したり、測定機器を使ったりすることで、医師が診断するための情報を集めます。

重要なのは、検査を行うことと診断することは同じではないという点です。

看護師が検査に必要な作業を担ったとしても、その結果を踏まえて病気を診断する役割は医師が担います。

オンライン診療では、

看護師が現場で情報を取得する

情報をオンラインで医師へ送る

医師が情報を基に判断する

という流れをつくることができます。

投薬や点滴などを補助する場合もある

患者のそばに看護師がいることで、診察後の対応にも違いが生まれます。

自宅型オンライン診療では、医師が薬を処方しても、患者はその後に薬局から薬を受け取る必要があります。

その場で点滴などの処置を受けることも通常はできません。

D to P with Nでは、診療を行う環境や患者の状態などに応じて、医師の指示に基づく投薬や点滴などの診療補助が行われる場合があります。

今回参考にした岩国市医療センター医師会病院では、呼吸が苦しそうな子どもについてオンラインで医師が診察し、病院で気管支を広げる薬を吸入する対応が行われました。

患者がすでに医療機関にいるからこそ、オンライン診察から必要な処置へつなげやすくなります。

オンラインでも医師の指示が必要になる理由

医師と看護師が同じ場所にいないと、指示の重要性はむしろ高まります。

医師は画面越しの患者の状態や、看護師から提供された情報などを基に判断します。

そして、必要な診療補助について看護師へ指示します。

看護師は患者のそばにいるため、医師よりも患者の変化に気づきやすい場合があります。

例えば処置中に患者の状態が急に悪化した場合です。

その情報を速やかに医師へ伝え、必要ならオンライン診療を中止して対面診療や救急医療へ切り替える必要があります。

オンライン診療では単に映像をつなぐだけでは不十分です。

医師と看護師が正確に情報を共有できる仕組みが重要になります。

特定行為研修を受けた看護師という仕組みもある

看護師の診療補助を考える際には、特定行為研修という制度もあります。

一定の研修を修了した看護師は、医師や歯科医師があらかじめ作成した手順書に基づいて、一定の特定行為を行える場合があります。

高齢化や在宅医療の拡大によって、医師が常に患者のそばにいることが難しくなるなかで設けられた仕組みです。

オンライン診療と特定行為は同じ制度ではありません。

しかし、医師と看護師が適切に役割分担して医療を提供するという点では共通する部分があります。

今後、遠隔医療が広がるほど、専門的な研修を受けた看護師の役割が重要になる可能性があります。

医療機器の安全管理も必要になる

D to P with Nでは、さまざまな医療機器を利用する可能性があります。

電子聴診器

血圧計

パルスオキシメーター

検査機器

などです。

しかし、医療機器は置いておけばよいわけではありません。

正しく使用できなければ、誤った測定結果が医師へ伝わる可能性があります。

機器が正常に作動しているかを確認することも必要です。

通信障害が起きた場合の対応も考えておかなければなりません。

オンライン診療では、医療機器と通信システムの両方が診療の一部になります。

そのため2026年の制度整備でも、D to P with Nに関連して医療機器の安全な使用や管理などが重要な論点になっています。

医療廃棄物をどう処理するのか

検査や処置を行えば、使用済みの注射針や医療材料などが発生する場合があります。

こうしたものの中には、一般のごみとして処理できないものがあります。

病院や診療所であれば、医療廃棄物を適切に管理し処理する仕組みがあります。

しかし、今後オンライン診療を行う場所が医療機関以外にも広がれば、医療廃棄物を誰がどのように管理するのかという問題も重要になります。

オンライン診療を広げるには、医師と患者を映像でつなぐ仕組みだけを整えればよいわけではありません。

検査や処置まで行うのであれば、通常の医療と同じように安全管理を考える必要があります。

看護師がいることでオンライン診療の範囲が広がる

自宅型オンライン診療では、医師が患者から得られる情報や、その場でできる処置に限界があります。

患者のそばに看護師がいると状況が変わります。

看護師が患者を観察する。

必要な測定を行う。

医療機器を操作する。

医師の指示などに基づいて検査や処置を補助する。

こうした役割を担うことで、オンライン診療で対応できる患者の範囲が広がる可能性があります。

だからこそD to P with Nは、医師不足が深刻な地域で注目されています。

医師そのものを各地域へ配置するのではなく、患者のそばにいる看護師と遠隔地の医師を組み合わせることで医療を提供できるからです。

結論

オンライン診療で患者のそばにいる看護師は、単に医師と患者の通信を手伝うだけではありません。

患者の状態を観察し、血圧や血中酸素飽和度などを測定し、電子聴診器などの医療機器を使って医師へ診療に必要な情報を届けることができます。

さらに医師の指示などに基づき、法律で認められた範囲で検査、投薬、点滴、処置などの診療を補助する場合があります。

ただし、看護師が医師の代わりになるわけではありません。

病気の診断や治療方針など、医師が判断すべきことは医師が担います。

オンライン診療でも基本となるのは、

医師が診察して判断する

看護師が患者のそばで診療を補助する

という役割分担です。

今後D to P with Nが広がれば、医療機器の安全管理や通信障害への対応、医療廃棄物の処理など、診療の周辺まで含めた仕組みづくりがさらに重要になります。

人口減少と医師不足が進む日本では、すべての地域に医師を常駐させることだけで医療を維持するのは難しくなります。

遠隔地の医師と患者のそばにいる看護師を組み合わせることは、限られた医療人材を地域全体で活用するための重要な選択肢になっていくでしょう。

参考

日本経済新聞 2026年8月22日 朝刊 進化するオンライン診療 看護師立ち会い、検査や処置

日本経済新聞 2026年8月22日 朝刊 駅で受診可能に

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