日本で暮らす外国人も、原則として日本人と同じように国民年金の対象になります。
しかし、国民年金に加入したからといって、すべての人が同じように保険料を負担できるとは限りません。
失業した人、収入が少ない人、生活が不安定な人などにとって、毎月の国民年金保険料が大きな負担になることがあります。
そこで国民年金には、一定の所得要件などを満たす人について保険料の全部または一部を免除する制度があります。
外国人についても、要件を満たせば利用できます。
重要なのは、保険料を払えないことと、何の手続きもしないまま未納にすることはまったく違うということです。
保険料免除制度とは何か
国民年金の保険料免除制度とは、所得が少ないなどの理由によって保険料を納めることが経済的に難しい場合に、申請して承認されることで保険料の全部または一部について納付を免除してもらう仕組みです。
国民年金は強制加入を基本とする制度ですが、収入にかかわらず一律に保険料を徴収すれば、生活が困難になる人が生じます。
そこで一定の要件を満たす人について、保険料負担を軽減する制度が設けられています。
保険料を払えない人を国民年金制度から外すのではなく、加入を維持しながら負担を調整する仕組みと考えることができます。
外国人にも免除制度が適用される
保険料免除制度は、日本国籍を持つ人だけの制度ではありません。
日本国内に住所を持ち、国民年金の第1号被保険者となっている外国人についても、要件を満たせば利用できます。
外国人だから保険料免除を受けられないという原則はありません。
例えば、日本で生活しているものの収入が少ない外国人や、勤務先を退職して厚生年金から国民年金へ切り替わった外国人などが対象となる可能性があります。
日本の社会保障制度への加入義務が国籍によって原則区別されないのと同じように、負担が難しい人を支える制度についても一定の要件のもとで外国人が利用できます。
保険料には全額免除と一部免除がある
国民年金保険料の免除には、全額免除だけでなく一部免除があります。
所得などの状況によって、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除といった区分があります。
全額免除が承認されれば、その期間について本人が国民年金保険料を納める必要はありません。
一部免除の場合には、免除されなかった残りの保険料を本人が納める必要があります。
ここは重要な点です。
一部免除の承認を受けても、残りの保険料を納めなければ、その期間が未納扱いになる場合があります。
免除が認められたから何も支払わなくてよいとは限りません。
所得などを基準に審査される
保険料免除を受けるためには、一定の所得要件などを満たす必要があります。
一般的な保険料免除では、本人だけでなく、配偶者や世帯主の所得も審査の対象になります。
本人の収入が少なくても、配偶者や世帯主に一定以上の所得があれば、免除を受けられない場合があります。
外国人についても基本的な考え方は同じです。
また、失業した場合などについては、通常とは異なる形で所得を判定する特例が利用できる場合もあります。
自分は収入が少ないから当然免除になると判断するのではなく、申請して審査を受ける必要があります。
納付猶予とは何が違うのか
国民年金には保険料免除とは別に納付猶予という制度があります。
納付猶予は、一定の年齢や所得などの要件を満たす人について、保険料の支払いを猶予する仕組みです。
保険料免除と納付猶予は、現在の保険料負担を軽減するという点では似ています。
しかし、将来の老齢基礎年金額への反映方法が異なります。
保険料免除期間は、免除の割合などに応じて一定部分が老齢基礎年金額に反映されます。
一方、納付猶予期間は、そのままでは老齢基礎年金額には反映されません。
後から保険料を追納することで年金額に反映させることができます。
未納とはまったく違う
外国人の国民年金で特に重要なのが、免除と未納の違いです。
保険料を払っていないという外形だけを見ると同じように見えます。
しかし、正式に免除が承認された期間と、何の手続きもせず保険料を払っていない未納期間では年金制度上の扱いが大きく異なります。
免除期間は、老齢基礎年金を受け取るために必要な受給資格期間に算入されます。
これに対して、未納期間は原則として受給資格期間に算入されません。
払えないのであれば放置するのではなく、免除制度を利用できるか確認することが重要です。
免除期間も将来の年金額に一定程度反映される
保険料免除の特徴は、保険料を全額納めていなくても、一定部分が将来の老齢基礎年金額に反映されることです。
これは国民年金の基礎年金給付に国庫負担が入っていることなどによるものです。
例えば、全額免除が承認された期間についても、現在の制度ではその期間がまったく年金額に反映されないわけではありません。
ただし、保険料を全額納付した場合と同じ年金額になるわけではありません。
免除の割合に応じて将来の年金額は少なくなります。
経済状況が改善した場合には、後から追納するという選択肢があります。
免除された保険料は後から追納できる
保険料免除の承認を受けた期間については、一定期間内であれば後から保険料を追納できます。
例えば、日本に来た当初は収入が少なく全額免除を受け、その後就職して収入が安定した外国人が、過去の免除期間について追納することも考えられます。
追納すれば、将来受け取る老齢基礎年金額を増やすことができます。
ただし、一定期間を経過してから追納する場合には、当時の保険料額に一定額が加算されることがあります。
将来日本で長期間生活する予定がある人は、経済的に余裕ができた段階で追納を検討する意味があります。
障害年金にも重要な意味がある
保険料免除の意味は老後の年金だけではありません。
国民年金には、一定の障害状態になった場合に障害基礎年金が支給される制度があります。
障害基礎年金には、原則として一定の保険料納付要件があります。
正式に免除が承認された期間は、この納付要件を考えるうえでも意味を持ちます。
一方、未納を長期間続けていると、病気やけがによって一定の障害状態になっても、保険料納付要件を満たせず障害年金を受け取れない場合があります。
外国人にとっても重要な違いです。
遺族年金にも関係する
公的年金には遺族への保障という役割もあります。
国民年金の被保険者などが亡くなった場合、一定の要件を満たせば遺族基礎年金が支給されることがあります。
ここでも保険料の納付状況が重要になる場合があります。
国民年金を老後に受け取るためだけの積立と考えると、短期間で帰国する外国人は保険料を納める意味を感じにくいかもしれません。
しかし、実際には日本で生活している間の障害や死亡というリスクにも対応する社会保険です。
免除手続きを行うことには、こうした保障を維持する意味もあります。
学生の場合は学生納付特例が重要になる
外国人留学生の場合には、一般的な保険料免除制度とは別に学生納付特例があります。
本人の前年所得が一定以下であるなどの要件を満たせば、在学中の国民年金保険料の納付を猶予してもらうことができます。
学生納付特例の期間は受給資格期間には算入されますが、追納しなければ老齢基礎年金額には反映されません。
外国人留学生が保険料を支払えない場合には、単純に未納にするのではなく、学生納付特例の対象になるかを確認する必要があります。
外国人の立場や年齢によって利用する制度が異なるということです。
在留審査との関係でも未納と区別する必要がある
外国人については、今後、年金保険料の納付状況と在留資格との関係も強まります。
2027年6月からは、在留資格の審査に国民年金保険料の納付状況も加味される予定です。
そのため、保険料を払えない場合に何も手続きをせず未納にすることのリスクは一段と大きくなります。
一方、経済的な事情によって保険料を納めることが難しく、制度に基づいて免除や猶予の承認を受けている場合には、単純な未納とは事情が異なります。
外国人本人が自分の年金記録を確認し、必要な手続きを適切に行っておく重要性が高まっています。
外国人の納付率向上には免除制度の周知も必要になる
外国人の国民年金の2023年度の最終納付率は55.0%でした。
納付率を高めるためには、保険料を納めるよう求めることが必要です。
しかし、それだけでは問題は解決しません。
本当に所得が少なく保険料を負担できない外国人にまで、単純に納付だけを求めれば生活を圧迫する可能性があります。
納める能力がある人には納めてもらい、経済的に難しい人には免除や猶予などの正式な制度を利用してもらうことが重要です。
そのためには、多言語による制度説明も欠かせません。
結論
外国人の年金保険料免除とは、日本で国民年金に加入している外国人が、所得が少ないなど一定の要件を満たした場合に、申請によって保険料の全部または一部の免除を受けられる仕組みです。
外国人だから免除制度を利用できないということはなく、基本的には日本人と同じ制度が適用されます。
保険料免除と納付猶予、そして未納はそれぞれ意味が異なります。
正式に免除された期間は受給資格期間に算入され、免除割合に応じて将来の老齢基礎年金額にも一定程度反映されます。
これに対して、何の手続きもしない未納期間は原則として受給資格期間に算入されず、障害年金や遺族年金にも影響する可能性があります。
外国人の国民年金問題では、納付率を引き上げることだけを目標にするのではなく、払える人と払うことが難しい人を適切に区分することが重要です。
収入が少なくても未納のまま放置せず、免除や猶予という正式な仕組みを利用することが、日本の社会保障制度とのつながりを維持するために重要なのです。
参考
日本経済新聞 2026年8月18日朝刊 国民年金の納付、外国人低調55%