インパクト評価とは何か 地域課題が本当に改善したかを数字で測る仕組み編

人生100年時代
ブルー ベージュ ミニマル note ブログアイキャッチ - 1

自治体や企業がSDGsに取り組むと、様々な活動実績が公表されます。

登録企業が1000社になった。イベントを50回開催した。研修に5000人が参加した。企業同士を100件マッチングした。

こうした数字は取り組みの規模を知るためには役立ちます。

しかし、本当に知りたいのは、その結果として地域社会がどう変わったのかではないでしょうか。

企業を100社マッチングしても、新しい事業が一つも生まれなければ地域課題の解決にはつながりません。研修を何千人が受講しても、企業活動が変わらなければ効果は限定されます。

そこで重要になるのがインパクト評価です。

何をしたのかではなく、その活動によって社会や地域にどのような変化が生まれたのかを確認します。

SDGsを宣言や登録だけで終わらせないためにも、インパクトを測る視点が重要になります。

インパクト評価とは何か

インパクト評価とは、事業や政策によって社会、環境、地域経済などにどのような変化が生じたのかを評価する考え方です。

例えば自治体が企業間マッチング事業を始めたとします。

登録企業数が増えた。

商談会を開催した。

企業同士を紹介した。

これらは事業の実施状況を示しています。

しかし、本当の成果を見るなら、その先を確認する必要があります。

企業同士の共同事業が始まったのか。

廃棄物が減ったのか。

新しい商品が生まれたのか。

売上や雇用が増えたのか。

地域課題が改善したのか。

こうした変化まで追いかけるのがインパクト評価です。

活動量と成果は違う

インパクト評価を理解するうえで重要なのが、活動量と成果を区別することです。

例えば自治体がSDGsセミナーを開催したとします。

開催回数が20回。

参加企業が500社。

これは活動量です。

その結果、200社が自社の課題を分析した。

100社が具体的な改善策を始めた。

50社が廃棄物を削減した。

ここまで進むと成果が見えてきます。

さらに地域全体の廃棄物量が減ったのであれば、社会的な変化へつながったと考えることができます。

アウトプットとアウトカムとは何か

政策や事業の評価では、アウトプットとアウトカムという言葉が使われます。

アウトプットは、事業を実施したことで直接生み出されたものです。

研修の開催回数。

参加者数。

相談件数。

企業の登録数。

マッチング件数などです。

アウトカムは、その活動によって対象者や社会に起きた変化です。

企業の行動が変わった。

廃棄物が減った。

障害者の所得が増えた。

若者の地元就職が増えた。

こうした変化がアウトカムになります。

社会的インパクトとは何か

アウトカムのさらに先にある長期的な社会変化を、社会的インパクトとして捉えることがあります。

例えば農福連携事業を考えてみます。

障害者が農作業へ参加した人数は活動量です。

農産物や加工品の販売額が増えたことは事業成果の一つです。

障害者の工賃が上昇したことは重要なアウトカムです。

さらに障害者の経済的な自立や社会参加が進み、地域農業の担い手不足も改善したのであれば、より大きな社会的インパクトにつながります。

何を実施したかだけではなく、その先にある社会の変化を見るわけです。

福井県の繊維リサイクルなら何を測るのか

福井県では繊維産業から発生する廃材を新しい糸へ再生する取り組みが進められています。

この事業を評価するとき、参加企業数だけを数えても十分ではありません。

年間何トンの繊維廃材を回収したのか。

そのうち何%を再生できたのか。

廃棄量はどれだけ減ったのか。

再生糸の販売額はいくらになったのか。

再生材を使った商品がどれだけ売れたのか。

新しい企業間取引がどれだけ生まれたのか。

こうした数字を見ることで、資源循環が実際に進んでいるのかを判断できます。

農福連携なら工賃を見る

農福連携でも同じです。

参加した障害者の人数だけでは成果を十分に判断できません。

重要な指標の一つが所得です。

日本経済新聞が紹介した栃木県小山市の事例では、障害者が受け取る月額工賃が5万8000円で、全国平均の2倍を超えるとされています。

何人が参加したかだけでなく、参加した人の所得がどう変化したのかを見ることで、取り組みの実効性がより分かりやすくなります。

さらに就労の継続期間や仕事内容の広がりなども評価対象にできます。

若者の地元就職なら何を見るのか

兵庫県ではSDGs登録企業へ学生を派遣し、企業の取り組みを紹介する動画を作成するなど、若者の県内就職や定着につなげる施策を進めています。

この場合、動画の本数や再生回数だけでは最終的な成果は分かりません。

学生の地域企業に対する認知度が上がったのか。

登録企業への応募者が増えたのか。

県内企業への就職者が増えたのか。

就職後も地域に定着しているのか。

こうした数字まで追跡することで、政策が本当に人口流出対策につながっているのかを評価できます。

KPIとは何か

こうした成果を継続的に確認するために使われるのがKPIです。

KPIは重要業績評価指標と呼ばれ、目標へ向かってどこまで進んでいるのかを確認するための指標です。

例えば繊維リサイクルなら、年間廃材回収量をKPIにできます。

農福連携なら平均工賃。

若者定着政策なら県内就職率。

再生可能エネルギーなら地域内発電量。

多文化共生なら外国人向け情報の利用状況などが考えられます。

重要なのは、政策目的と関係する数字を選ぶことです。

測りやすい数字だけをKPIにしない

KPIを設定するときには注意も必要です。

測りやすい数字ばかり選ばれやすいからです。

登録企業数。

イベント開催回数。

参加者数。

ホームページのアクセス数。

こうした数字は簡単に集計できます。

しかも増加すれば成果を説明しやすくなります。

しかし、地域課題が改善したかどうかとは必ずしも一致しません。

測りやすい数字ではなく、政策目的に近い数字を選ぶ必要があります。

目標値と期限を決める

KPIは数字を記録するだけでは十分ではありません。

目標値と期限を設定することも重要です。

例えば現在の繊維廃材再生率が1%未満なら、何年までに何%へ引き上げるのかを決めます。

若者の県内就職率なら、現在の水準から何年後にどこまで引き上げるのかを決めます。

目標と期限があれば、政策が順調なのか遅れているのかを判断できます。

達成できなければ原因を調べ、施策を修正することができます。

因果関係を考える必要がある

インパクト評価で難しいのが、社会の変化が本当にその政策によって起きたのかを判断することです。

例えば若者の県内就職率が上昇したとします。

SDGs企業紹介動画の効果かもしれません。

しかし、地域企業の給与が上昇したことが原因かもしれません。

景気や雇用情勢が変化した可能性もあります。

社会現象には様々な要因が影響します。

単に数字が改善したから政策が成功したと判断するのではなく、政策と成果の関係を慎重に見る必要があります。

数字にできない成果もある

すべての社会的価値を数字で表せるわけではありません。

多文化共生の取り組みによって、外国にルーツを持つ子どもが安心して自己表現できるようになった。

地域住民と障害者の交流が増えた。

企業同士に新しい信頼関係が生まれた。

こうした変化を一つの数字だけで表すことは難しいでしょう。

そのため定量的なデータだけでなく、利用者への聞き取りや事例調査なども組み合わせる必要があります。

数字と実際の声の両方を見ることが重要です。

評価は企業を順位付けするためだけではない

インパクト評価というと、企業や自治体に点数を付ける仕組みのように思われることがあります。

しかし、本来の目的は改善することです。

どの施策が効果を上げているのか。

どこで行き詰まっているのか。

どの取り組みに資金を増やすべきなのか。

どの事業を見直すべきなのか。

評価結果を次の政策や経営判断に利用することで意味が生まれます。

評価すること自体を目的にしないことが重要です。

自治体SDGsにインパクト評価が必要な理由

自治体のSDGs登録制度が広がれば、登録企業数は増えていきます。

しかし、登録企業が増えたことと地域が持続可能になったことは同じではありません。

登録した企業同士から新しい事業が生まれたのか。

資源循環が進んだのか。

雇用が増えたのか。

若者の定着につながったのか。

環境負荷が減ったのか。

こうした変化まで確認して初めて、制度の実効性を評価できます。

登録から成果へ評価の重点を移す必要があります。

結論

インパクト評価とは、自治体や企業が何をしたかではなく、その活動によって地域社会にどのような変化が生まれたのかを確認する仕組みです。

登録企業数、イベント回数、参加者数、マッチング件数などの活動量も必要な情報ですが、それだけでは地域課題が改善したかどうかは分かりません。

繊維廃材はどれだけ減ったのか。

障害者の工賃は上がったのか。

若者の地元就職や定着は増えたのか。

新しい企業間取引や雇用は生まれたのか。

こうした成果をKPIとして継続的に測る必要があります。

一方で、社会の変化には様々な要因が影響するため、数字が改善しただけで特定の政策の成果と決めつけることもできません。

数字に表れにくい変化もあります。

だからこそ、定量的な指標と現場の声を組み合わせて評価することが重要です。

SDGsを宣言する段階から、行動する段階へ。

さらに行動する段階から、本当に社会が変わったかを確認する段階へ。

自治体SDGsが次に求められるのは、登録企業数を競うことではなく、地域課題がどれだけ改善したのかを示すことになるでしょう。

参考

日本経済新聞 2026年8月15日朝刊 自治体SDGs、企業が相棒

日本経済新聞 2026年8月15日朝刊 SDGsパートナー 甲府の登山用品店、天然素材の衣類提案

タイトルとURLをコピーしました