地域のSDGsを進めるためには、自治体と企業だけが動けばよいわけではありません。
地域企業が新しい設備を導入したり、廃棄物を再資源化したり、新しい商品を開発したりするためには資金が必要です。
さらに、地域課題を解決したい企業があっても、協力できる企業や自治体を知らなければ事業は始まりません。
そこで重要な役割を担うのが、地方銀行や信用金庫などの地域金融機関です。
地域金融機関は企業へ融資するだけではありません。
日常的な取引を通じて地域企業の技術や経営課題を知り、企業同士をつないだり、自治体との連携を支援したりすることができます。
SDGsを地域経済の活性化につなげるうえで、地域金融機関は資金と情報の両方を循環させる役割を担います。
地域金融機関の役割とは何か
地域金融機関には地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用組合などがあります。
基本的な役割は、預金を集め、その資金を企業や個人へ融資することです。
地域住民が預けたお金が地域企業への融資に使われれば、地域内で資金が循環します。
企業は融資を受けて設備投資を行います。
新しい商品を開発します。
従業員を雇用します。
そこで生まれた所得が地域住民の消費へ回れば、さらに地域企業の売上になります。
地域金融機関は地域内経済循環を支える重要なインフラといえます。
お金を貸すだけではない
地域金融機関の強みは、地域企業と長期的な取引関係を持っていることです。
企業の売上。
取引先。
設備投資。
経営者の事業計画。
後継者問題。
人材不足。
こうした情報を日常的な取引を通じて把握できます。
そのため、ある企業の課題を別の企業の技術で解決できることに気付く場合があります。
金融機関が企業同士を紹介すれば、新しい取引につながる可能性があります。
資金仲介だけでなく、情報仲介も地域金融機関の重要な役割になります。
企業と企業を橋渡しする
例えば繊維企業が大量の廃材を処分しているとします。
一方、別の企業が再生素材を使った商品を開発したいと考えているかもしれません。
両社がお互いの存在を知らなければ、取引は生まれません。
地域金融機関が双方と取引していれば、企業同士を紹介できる可能性があります。
廃棄物だったものが原材料へ変われば、廃棄費用の削減と新商品の開発を同時に実現できるかもしれません。
SDGsを共通のテーマとして企業をつなぐことで、新しい地域ビジネスを生み出せます。
自治体と企業を橋渡しする
地域金融機関は自治体とも関係があります。
自治体は地域課題を把握しています。
高齢者の移動手段が不足している。
空き家が増えている。
農業の担い手が不足している。
地域企業の人手不足が深刻になっている。
一方、民間企業には技術やサービスがあります。
金融機関が両者をつなげば、地域課題を民間ビジネスによって解決できる可能性があります。
自治体と企業の間をつなぐ中間支援機能を金融機関が担うわけです。
信用金庫には地域との接点がある
日本経済新聞の記事では、川崎市と川崎信用金庫がかわさきSDGs大賞の事務局を務めていることが紹介されています。
金融機関が地域のSDGs活動に関与する具体例です。
信用金庫は営業地域が限定されており、地域の中小企業や住民との結び付きが強いという特徴があります。
そのため地域企業の取り組みを発掘したり、企業同士を紹介したりする役割を担いやすい面があります。
SDGsを行政だけの政策にせず、地域企業へ広げる際にも地域金融機関のネットワークを活用できます。
SDGs融資とは何か
金融機関が企業のSDGsへの取り組みを資金面から支援する方法の一つがSDGsに関連した融資です。
例えば省エネルギー設備を導入する企業へ融資する。
再生可能エネルギー事業へ資金を供給する。
廃棄物削減設備への投資を支援する。
働き方や地域課題の改善に取り組む企業の資金需要に対応する。
金融を通じて企業の行動変化を後押しします。
企業側にとっては、SDGsを理念として掲げるだけでなく、具体的な設備投資や事業へ移すための資金を確保できます。
目標を設定する融資もある
SDGs関連融資では、企業が一定の目標を設定し、その達成状況を確認する仕組みを組み合わせることがあります。
二酸化炭素排出量を減らす。
再生材の利用率を上げる。
女性管理職比率を引き上げる。
廃棄物量を削減する。
企業が具体的な目標を設定すれば、金融機関もその進捗を継続的に確認できます。
単にSDGsに取り組む企業へお金を貸すのではなく、融資を企業の行動変化につなげる考え方です。
資金を出せば終わりではない
金融機関がSDGs関連融資を増やしても、それだけで地域課題が解決するとは限りません。
重要なのは融資後です。
企業が計画した設備を導入したのか。
廃棄物は実際に減ったのか。
売上は増えたのか。
雇用は生まれたのか。
地域課題は改善したのか。
金融機関が企業の事業を継続的に確認することで、資金が本当に地域の変化につながったのかを見ることができます。
地域内の資金循環とは何か
地域金融機関のSDGsを考えるうえで重要なのが地域内の資金循環です。
地域住民や企業から預金を集めます。
その資金を地域企業へ融資します。
企業が設備投資を行います。
地域住民を雇用します。
従業員が地域で消費します。
地域企業の売上が増えます。
その資金が再び金融機関へ預金されます。
この循環が強くなれば、地域で生まれたお金を地域の成長へ再投資しやすくなります。
地域外へ流れるお金を減らす
地域経済では様々な形で資金が地域外へ流出します。
地域企業が原材料を地域外から購入する。
住民が地域外の企業から商品を買う。
エネルギーを地域外から購入する。
企業が利益を地域外へ移す。
すべての流出をなくすことはできません。
しかし、地域内で供給できるものについて地域企業同士の取引を増やせば、流出を抑えられる可能性があります。
地域金融機関は取引先ネットワークを利用して地元企業同士をつなぎ、地域内調達を増やす役割を担えます。
地域で集めたお金を地域へ再投資する
地域内の資金循環でさらに重要なのが再投資です。
企業が利益を上げても、それが預金として蓄積されるだけでは地域経済は拡大しません。
新しい工場をつくる。
設備を更新する。
新事業を始める。
スタートアップへ投資する。
事業承継を支援する。
こうした形で資金を次の経済活動へ回す必要があります。
地域金融機関が将来性のある地域事業を見つけ、資金を供給できれば、地域で稼いだお金を次の成長へつなげることができます。
地域課題を事業として評価する力が必要
一方、地域課題解決型の事業には難しさがあります。
例えば高齢者向け地域交通は社会的に必要でも、利用者が少なければ収益性が低くなる可能性があります。
資源循環事業も、最初は十分な取扱量を確保できないかもしれません。
農福連携も、単純な農産物販売だけでは高い収益を得にくい場合があります。
金融機関には、現在の財務数字だけでなく、その事業が地域でどのような需要を持ち、将来どのような収益モデルを構築できるのかを見る力が求められます。
補助金と民間資金をつなぐ
地域課題解決事業では、立ち上げ段階で自治体や国の補助金を利用することがあります。
しかし、補助金がなくなった途端に事業が終わるようでは持続可能とはいえません。
実証実験では公的資金を使う。
事業性が確認できたら金融機関が融資する。
売上を伸ばして自立した事業へ移行する。
こうした資金の流れをつくることが重要です。
地域金融機関が早い段階から関与すれば、補助金終了後を見据えた事業設計を支援できます。
金融機関自身も成果を問われる
金融機関がSDGs融資を何件実行したかだけでは、地域への効果は分かりません。
融資先企業の売上はどう変わったのか。
雇用は増えたのか。
二酸化炭素排出量は減ったのか。
地域内取引は増えたのか。
新しい企業間連携は生まれたのか。
金融機関自身も、融資額や件数という活動量だけではなく、その資金によって生まれた成果を見ることが重要になります。
ここでもインパクト評価の考え方が必要になります。
結論
地域金融機関がSDGsで果たす役割は、SDGsに取り組む企業へ融資することだけではありません。
地域企業の日常的な取引関係から、それぞれの企業が持つ技術や経営課題を把握し、企業同士をつなぐことができます。
自治体が抱える地域課題と企業の技術を結び付けることもできます。
そして新しく生まれた事業へ資金を供給し、その資金を地域の雇用や投資へつなげることができます。
地域住民や企業から集めた資金を地域企業へ融資し、そこで生まれた所得を再び地域へ投資する。
この循環が強くなれば、SDGsへの取り組みは社会貢献だけでなく地域経済の成長につながります。
人口減少が進む地域では、資金だけでなく企業、人材、技術、課題をつなぐ存在が必要です。
地域金融機関は、お金を貸す金融機関から、地域の様々な主体を結び付けて新しい事業をつくる金融機関へ役割を広げることが求められています。
地域内の資金を地域課題の解決へ振り向け、そこで生まれた利益を次の地域投資へ回す。
この循環をつくることが、地域金融機関によるSDGsの重要な役割といえるでしょう。
参考
日本経済新聞 2026年8月15日朝刊 自治体SDGs、企業が相棒
日本経済新聞 2026年8月15日朝刊 SDGsパートナー 甲府の登山用品店、天然素材の衣類提案