SDGsに取り組んでいる企業は増えていますが、外部から見ただけでは、どの企業がどのような活動をしているのか分からないことがあります。
そこで地方自治体が整備しているのが、地方創生SDGsの宣言、登録、認証制度です。
企業や団体がSDGsへの取り組みを宣言し、自治体が一定の手続きによって登録したり、さらに一定の基準を満たす事業者を認証したりします。
企業のSDGs活動を見える化するだけでなく、自治体と企業、企業同士の連携を促すための地域インフラとしての役割も期待されています。
日本経済新聞によると、2025年10月時点で地方創生SDGsの宣言、登録、認証制度を備えた自治体は全国105自治体、登録する企業や団体は約5万7400に達しています。
宣言とは何か
宣言は、企業や団体がSDGsに取り組む意思を外部に示すものです。
例えば、廃棄物の削減に取り組む、女性が働きやすい職場をつくる、地域雇用を増やす、省エネルギーを進めるといった目標を企業自身が掲げます。
重要なのは、自社の事業とSDGsを結び付けることです。
単にSDGsに賛同すると表明するだけではなく、自社が地域社会の中でどのような課題を解決できるのかを考えるきっかけになります。
中小企業の場合、SDGsという言葉を知っていても、自社の事業とどのように結び付くのか分からないことがあります。
宣言制度には、企業が自社の事業をSDGsの視点から整理する入口としての意味があります。
登録とは何か
登録は、SDGsへの取り組みを表明した企業や団体を自治体が一定の制度に基づいて登録する仕組みです。
登録されると、企業名や取り組み内容などが自治体のホームページや専用サイトなどで紹介されることがあります。
これによって地域内のSDGs企業が見えるようになります。
例えば、資源循環に取り組む企業を探している企業があったとします。
登録企業の情報を確認すれば、同じ地域でリサイクルや廃棄物削減に取り組んでいる企業を見つけられる可能性があります。
登録制度は企業を評価するだけではなく、地域の企業情報を整理するデータベースとしても機能するわけです。
認証とは何か
認証は一般に、宣言や登録より一段踏み込んで、一定の基準を満たしている企業や団体を自治体などが確認する仕組みです。
ただし、宣言、登録、認証の名称や要件は全国で完全に統一されているわけではありません。
自治体によって制度設計は異なります。
比較的参加しやすい登録制度を設ける自治体もあれば、具体的な目標や取り組み実績などを確認したうえで認証する制度を設ける自治体もあります。
そのため、認証を受けているから全国共通の同一基準を満たしているという意味ではありません。
どのような審査基準を採用しているのかまで確認する必要があります。
なぜ自治体が制度をつくるのか
自治体が制度を設ける大きな理由は、地域の企業や団体の取り組みを見える化するためです。
行政だけでは地域に存在する企業の技術やノウハウをすべて把握することは困難です。
一方、企業側も他社がどのような地域課題に関心を持っているのか分からない場合があります。
登録制度によって企業の取り組みを整理すれば、自治体は地域に存在する技術や人材、ノウハウを把握しやすくなります。
企業側も連携相手を探しやすくなります。
SDGsという共通の枠組みを使って地域の企業をつなぐことができるのです。
企業の一覧が地域の資産になる
福井県の事例では、登録認証制度がSDGsに積極的な企業の一覧として機能しています。
これは非常に重要な点です。
例えば、繊維工場から廃材が大量に出ているとします。
工場だけで処理方法を考えていても、有効な解決策が見つからないかもしれません。
しかし、地域内にリサイクル技術を持つ企業や新素材を開発する企業があることが分かれば、共同事業につながる可能性があります。
ある企業にとっての廃棄物が、別の企業にとっての原材料になることもあります。
登録企業の一覧は、単なる企業名簿ではなく、地域が持つ技術や課題を結び付けるための情報基盤になり得ます。
企業が登録するメリットは何か
企業にとってのメリットの一つは、自社の取り組みを地域社会に発信できることです。
特に中小企業では、環境対策や地域貢献に力を入れていても、それを広く知らせる機会が少ない場合があります。
自治体の制度に登録されれば、取引先や金融機関、求職者などに自社の姿勢を説明しやすくなります。
さらに、自治体や他企業との連携につながる可能性があります。
地域課題の解決に取り組む企業同士が知り合えば、共同の商品開発や実証実験などへ発展することも考えられます。
登録制度には、企業の信用力向上だけではなく新しい事業機会をつくる可能性があります。
採用にも利用できる
地方企業にとって特に大きな問題が若い人材の確保です。
給与や勤務地だけでなく、企業が社会や地域にどのように貢献しているかを重視する人もいます。
そのためSDGsへの取り組みは採用活動で企業の特徴を伝える材料になります。
兵庫県では登録企業に学生を派遣し、SDGsへの取り組みを紹介する動画を作成する取り組みも行われています。
SDGs制度を企業登録だけで終わらせず、若者に地域企業を知ってもらう仕組みへ発展させているわけです。
企業のSDGs活動の見える化が、地域企業の人材確保にもつながる可能性があります。
登録企業を増やせば成功なのか
一方で、制度には大きな課題があります。
登録企業数を増やすこと自体が目的になりやすいことです。
企業がSDGs宣言を作成し、自治体へ提出して登録されたとしても、その後何もしなければ地域課題は解決しません。
登録企業数が100社から1000社へ増えたとしても、それだけでSDGsが進んだとはいえないでしょう。
本来見るべきなのは、登録後に企業の行動がどのように変わったのかです。
新しい取り組みが始まったのか。
企業同士の連携が生まれたのか。
地域課題が改善したのか。
こうした成果まで確認する必要があります。
SDGsウォッシュをどう防ぐのか
SDGsを掲げているものの、実際の活動が伴っていない状態はSDGsウォッシュと呼ばれることがあります。
登録制度でも同じ問題が起こる可能性があります。
企業が登録マークをホームページや名刺に掲載するだけで、具体的な取り組みを行わなければ制度への信頼も低下します。
そのため、登録時の審査だけでなく、登録後の確認も重要になります。
一定期間ごとに目標の進捗を報告してもらう。
具体的な数値目標を設定する。
優れた取り組みを表彰する。
企業同士のマッチング機会を設ける。
こうした仕組みを組み合わせることで、登録を実際の行動へつなげる必要があります。
厳しすぎる制度にも問題がある
もっとも、認証基準を厳しくすればよいとも限りません。
地方創生SDGsでは、中小企業の参加が重要だからです。
専門部署を持つ大企業なら、詳細な報告書や数値目標を作成できます。
一方、従業員数人の中小企業に大企業と同じ書類作成や情報開示を求めれば、参加そのものを諦める可能性があります。
参加しやすさと制度の信頼性をどう両立するかが重要です。
最初は宣言や登録によって参加の間口を広げ、その後、取り組みが進んだ企業をより高い段階で認証するなど、段階的な制度設計も考えられます。
登録からマッチングへ
これからの地方創生SDGs制度で特に重要になるのが、登録後のマッチングです。
福井県では2026年2月、企業間マッチングを主眼とした新たなポータルサイトを開設しました。
企業を登録して一覧にするだけではなく、具体的な地域課題と企業の技術を結び付ける段階へ進んでいるわけです。
自治体が地域課題を提示する。
企業が自社の技術やサービスを提案する。
別の企業や大学、金融機関などが参加する。
そこから実証実験や新しい事業が生まれる。
この流れができれば、登録認証制度は単なるSDGs企業の名簿から地域課題を解決するプラットフォームへ変わります。
成果を測る制度へ進めるか
最終的には、登録数ではなく成果を測ることが必要になります。
例えば資源循環なら、廃棄物を何トン削減したのか。
雇用なら、地域で何人の仕事を生み出したのか。
福祉なら、障害者の所得がどれだけ増えたのか。
脱炭素なら、温暖化ガス排出量をどれだけ削減したのか。
こうした具体的な成果を確認できれば、どの取り組みが本当に地域課題の解決に役立っているのかが分かります。
SDGs制度も、宣言する段階から成果を測定する段階へ進むことが求められています。
結論
地方創生SDGs宣言登録認証制度とは、地域でSDGsに取り組む企業や団体を自治体が見える化する仕組みです。
宣言によって企業が取り組む意思を示し、登録によって地域の企業情報を整理し、認証によって一定の取り組みを評価するという考え方があります。
企業にとっては情報発信や信用力向上、採用、企業間連携などにつながる可能性があります。
自治体にとっては、地域企業が持つ技術、人材、ノウハウを把握し、地域課題とのマッチングに利用できるメリットがあります。
ただし、登録企業数を増やすことだけが目的になれば制度は形骸化します。
重要なのは、登録した企業が実際に行動し、企業同士がつながり、その結果として地域課題がどれだけ改善したかです。
企業を登録する制度から、企業をつなぎ、地域を変える制度へ進化できるか。
そこが地方創生SDGsの宣言登録認証制度の次の課題になるでしょう。
参考
日本経済新聞 2026年8月15日朝刊 自治体SDGs、企業が相棒
日本経済新聞 2026年8月15日朝刊 SDGsパートナー 甲府の登山用品店、天然素材の衣類提案