暗号資産取引業者の税務報告制度とは何か 取引情報が税務署へ報告される仕組み編

税理士
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2028年から一定の暗号資産取引について申告分離課税が導入される見込みです。

税率が株式などに近づくことが注目されますが、同時に重要なのが税務当局による取引情報の把握です。

新しい制度では、暗号資産取引業者から税務署へ一定の取引情報を報告する仕組みが整備されます。

暗号資産について税制上の扱いを金融商品に近づける一方、適正な申告を確保するための情報収集も強化するわけです。

今後は、暗号資産取引は自分だけが把握している取引ではなく、国内登録業者を通じた取引について税務当局が確認できる情報が増えていくことになります。

なぜ税務報告制度が必要なのか

暗号資産は、株式などとは異なる特徴があります。

複数の取引所を利用できます。

自分で管理するウォレットへ移すこともできます。

海外取引所へ送金することもできます。

暗号資産同士を直接交換することもできます。

こうした特徴から、納税者が一年間にどのような取引を行ったのかを把握することが難しい場合があります。

一方、暗号資産の利益について適正に課税するためには、税務当局が取引の存在を確認できる仕組みも必要です。

そこで、暗号資産取引業者が保有する情報を税務署へ報告する制度が重要になります。

取引業者に報告義務が設けられる

新しい暗号資産税制では、一定の暗号資産取引業者について税務当局への情報報告制度が設けられます。

対象となる取引業者は、その年に特定暗号資産の取引を行った利用者について、一定の事項を記載した報告書を税務署長へ提出することになります。

利用者自身が確定申告する仕組みとは別に、取引業者側からも情報が提出されるわけです。

これは税務当局が納税者の申告内容と取引情報を照合するための重要な基盤になります。

株式などの金融取引でも金融機関から税務当局へ情報が提出される仕組みがありますが、暗号資産についても金融商品に近い情報報告体制が整備されていくことになります。

どのような情報が報告されるのか

報告制度では、暗号資産取引を行った利用者を特定するための情報と、取引内容に関する一定の情報が対象になります。

利用者の氏名や住所、個人番号などに加え、取引した特定暗号資産の名称などが報告対象になります。

具体的な報告項目については制度に基づいて確認する必要がありますが、重要なのは税務署が単に誰かが暗号資産口座を持っているという事実だけではなく、一定の取引情報を把握する仕組みになることです。

暗号資産の申告内容と業者から提出された情報を結び付けて確認しやすくなります。

マイナンバーとの関係が重要になる

税務報告制度では個人番号が重要な役割を果たします。

同姓同名の人がいても、個人番号を利用すれば納税者を正確に識別できます。

例えば一人の投資家が複数の暗号資産取引業者を利用していたとします。

取引業者Aから提出された情報と取引業者Bから提出された情報について、個人番号を通じて同じ納税者の情報として把握しやすくなります。

税務当局にとっては、複数の金融機関や取引業者から提出される情報を納税者単位で整理するための重要な仕組みです。

暗号資産についても、マイナンバーを利用した税務情報の把握が進むことになります。

報告書は翌年に税務署へ提出される

取引業者による報告は、対象となる年の取引について翌年に行われます。

制度では、一定の報告書を翌年1月31日までに税務署長へ提出する仕組みが設けられます。

例えば2028年中に対象となる暗号資産取引を行った場合、その情報が翌年に税務当局へ報告されるという流れです。

その後、納税者も確定申告の時期に前年の所得を申告します。

税務当局側には業者からの情報があり、納税者側からは確定申告書が提出されることになります。

双方の情報を比較できる仕組みになるわけです。

税務署へ報告されても確定申告が不要になるわけではない

ここは特に注意が必要です。

取引業者が税務署へ情報を報告するのであれば、自分で確定申告しなくてもよいのではないかと思うかもしれません。

しかし、取引業者による報告と納税者による確定申告は別の制度です。

暗号資産について課税対象となる所得が発生し、確定申告が必要な場合には、原則として納税者自身が申告する必要があります。

取引業者が税務署へ情報を提出することは、税額を自動的に計算して納税まで完了させることとは違います。

株式の源泉徴収あり特定口座のような仕組みと混同しないことが重要です。

一つの取引所だけを見ても所得は計算できない

取引業者から税務署へ報告される情報があっても、納税者の年間所得のすべてが一つの業者だけで分かるとは限りません。

例えば国内取引所Aで100万円の利益が発生し、国内取引所Bでは30万円の損失が発生しているとします。

さらに自分のウォレットを通じて別の取引をしているかもしれません。

納税者は必要な取引を集計して年間所得を計算しなければなりません。

一つの取引業者が、自分の暗号資産取引全体を把握しているとは限らないからです。

確定申告では自分自身で取引全体を整理することが基本になります。

ウォレットへの出金後は別途説明が必要になることがある

税務報告制度が整備されても、暗号資産特有の問題は残ります。

例えば国内取引所から自分のウォレットへビットコインを送ったとします。

取引業者側では外部への送付として記録されます。

しかし、その後の暗号資産がどうなったのかまでは国内取引所だけでは分からない場合があります。

単なる自己間移動なのか。

商品購入に使ったのか。

海外取引所へ送ったのか。

別の暗号資産と交換したのか。

税務調査などでは、こうした取引について納税者自身が説明する必要が生じる可能性があります。

海外取引所なら税務署に分からないとは考えない

国内業者の報告制度が強化されると、海外取引所を利用すれば取引は把握されないと考える人が出てくるかもしれません。

しかし、そのように考えるのは適切ではありません。

暗号資産については国際的にも税務情報の交換体制を整備する動きが進んでいます。

各国が暗号資産取引に関する情報を共有するための国際的な報告枠組みも整備されています。

また、国内取引所から海外取引所へ暗号資産を送れば、国内側には少なくとも出金記録が残る場合があります。

海外を利用したから申告義務がなくなるわけではありません。

日本の居住者であれば、日本の税法に基づいて所得を適切に申告する必要があります。

取引履歴を自分でも保存しておく

取引業者が税務署へ情報を提出するようになっても、自分の取引記録を保存する重要性は変わりません。

むしろ税務当局が第三者情報を持つようになれば、自分の申告内容を説明できる資料がより重要になります。

保存しておきたい情報には、取引日時、暗号資産の種類、数量、取得価額、売却価額、手数料、送金先、ウォレットアドレス、交換した暗号資産などがあります。

特に複数の取引所やウォレットを利用する場合には、それぞれの履歴をつなげて説明できるようにしておくことが重要です。

税務署は第三者情報と申告内容を照合できる

税務行政では、納税者本人から提出された確定申告書だけを見ているわけではありません。

金融機関や事業者など第三者から提出される情報も、適正な課税のために利用されます。

暗号資産について取引業者からの報告制度が整備されれば、税務当局は申告内容と第三者情報を比較しやすくなります。

例えば取引業者から一定の取引情報が報告されているのに、確定申告に暗号資産所得が全く記載されていない場合などには、内容を確認するきっかけになる可能性があります。

暗号資産についても、金融取引として透明性が高まっていくことになります。

2028年は税率だけでなく情報管理も変わる

2028年の暗号資産税制改正というと、総合課税から20%を基本とする申告分離課税への移行が注目されます。

しかし、制度全体を見ると、それだけではありません。

一定の損失について3年間の繰越控除を認める。

特定暗号資産という制度上の対象を設ける。

取引業者から税務署へ一定の情報を報告する。

金融商品としての規制を強化する。

こうした制度が組み合わされます。

税負担を株式などに近づける代わりに、市場と税務の透明性も高めていく方向と見ることができます。

結論

暗号資産取引業者の税務報告制度とは、一定の暗号資産取引について、取引業者から税務署へ利用者や取引に関する情報を報告する仕組みです。

氏名、住所、個人番号、取引した特定暗号資産の名称など一定の情報が税務当局へ提供されることになります。

これにより、税務署は納税者が提出した確定申告と、取引業者から提出された第三者情報を照合しやすくなります。

ただし、取引業者が税務署へ報告するからといって、納税者自身の確定申告が不要になるわけではありません。

複数の取引所やウォレットを利用している場合には、自分自身で年間の取引を集計し、正しい所得を計算する必要があります。

2028年からの暗号資産税制改革は、単なる税率引下げではありません。

税制を金融商品に近づけると同時に、取引情報を税務当局が把握できる仕組みも整備することで、暗号資産をより透明性の高い金融市場の中に位置付けていく改革と考えることができます。

参考

日本経済新聞 2026年8月15日朝刊 資産運用の税、ルール点検 暗号資産、28年に税率変更

日本経済新聞 2026年8月15日朝刊 金融商品として規制

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