暗号資産の損益通算とは何か ビットコインの利益と他の損失を相殺できるのか編

税理士
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暗号資産で利益が出る一方、別の暗号資産では損失が出ることがあります。

例えばビットコインで300万円の利益が出て、イーサリアムで100万円の損失が出た場合、税金は300万円に対してかかるのでしょうか。それとも差し引いた200万円に対してかかるのでしょうか。

ここで重要になるのが損益通算です。

さらに2028年から一定の暗号資産について申告分離課税が導入されると、暗号資産の損失をどの所得と相殺できるのかという問題が、これまで以上に重要になります。

暗号資産同士、株式、給与所得では、それぞれ扱いが異なります。

損益通算とは何か

損益通算とは、ある取引で生じた利益と別の取引で生じた損失を相殺し、実質的な所得を求める考え方です。

例えばAという取引で300万円の利益が発生し、Bという取引で100万円の損失が発生したとします。

両者を損益通算できれば、

300万円から100万円を差し引いた200万円

を基礎として所得を計算できます。

一方、損益通算できなければ、100万円の損失があったとしても300万円の利益について課税されることがあります。

投資では利益だけではなく損失も発生するため、どこまで損益通算できるかは税引き後の運用成果を左右します。

暗号資産同士では年間の損益を計算する

現在の暗号資産税制では、個人の暗号資産取引による所得は原則として雑所得になります。

同じ年に複数の暗号資産取引をしている場合には、それぞれの取引から生じた利益と損失を集計して、その年の暗号資産取引全体の所得を計算することになります。

例えばビットコインで300万円の利益が出て、イーサリアムで100万円の損失が確定したとします。

単純化すれば、

300万円から100万円を差し引いた200万円

が暗号資産取引全体の所得となります。

一つの暗号資産だけを見るのではなく、その年に行った対象となる取引を集計することが重要です。

含み損では相殺できない

注意したいのが、損失が実際に確定しているかどうかです。

例えばビットコインで300万円の利益を確定した一方、保有している別の暗号資産に100万円の含み損があるとします。

単に時価が下落しているだけで、まだ売却などをしていなければ、原則としてその含み損を300万円の利益から差し引くことはできません。

税務上の損益は、原則として売却、交換、決済など損益を認識する取引が行われた時点で計算します。

投資口座の画面に表示されている評価損と、税務上確定した損失は同じではありません。

暗号資産同士の交換でも損益が発生する

暗号資産では、日本円に換金したときだけ損益が確定するわけではありません。

例えばビットコインを売却して、その代金でイーサリアムを購入するのではなく、ビットコインを直接イーサリアムと交換した場合でも、税務上はビットコインを処分したものとして損益を計算することがあります。

取得したときよりビットコインの価値が上昇していれば利益が発生します。

反対に価値が下落していれば損失が発生することがあります。

年間の損益を計算するためには、日本円との売買だけでなく暗号資産同士の交換も把握する必要があります。

株式の利益とは原則として別に考える

2028年から暗号資産が申告分離課税になれば、株式と同じ税率になるため、両者の利益と損失を自由に相殺できるように思えるかもしれません。

しかし、税率が同じであることと、税務上の所得区分が同じであることは別です。

上場株式等の譲渡所得には独自の課税制度があります。

暗号資産についても、新しい制度の対象となる暗号資産所得として区分して計算することになります。

したがって、暗号資産で100万円の損失が発生し、上場株式で100万円の利益が出たからといって、単純に両者を相殺して課税所得をゼロにできるという仕組みではありません。

申告分離課税という名称が同じでも、それぞれの課税区分を確認する必要があります。

株式と暗号資産では損失の利用範囲が違う

例えば上場株式を売却して200万円の損失が発生した一方、暗号資産で300万円の利益が出たとします。

株式と暗号資産の税率がともに約20%だから、

300万円から200万円を差し引いて100万円

に税金がかかると考えるのは適切ではありません。

株式の損失については、上場株式等の税制の中で損益通算や繰越控除を検討します。

暗号資産の損益については、暗号資産の税制の中で計算します。

金融商品ごとに設けられた税制上の箱が違うと考えると分かりやすいでしょう。

給与所得とも自由には相殺できない

暗号資産で損失が出た場合、会社から受け取る給与と相殺できるのかという疑問もあります。

例えば給与所得が800万円あり、暗号資産で300万円の損失が発生したとします。

800万円から300万円を差し引いて、500万円だけを所得として扱えるわけではありません。

現在の雑所得についても、暗号資産取引による損失を給与所得から自由に差し引くことはできません。

2028年から一定の暗号資産が申告分離課税になれば、他の所得から分離して計算することがさらに明確になります。

暗号資産の損失を給与所得の節税に利用できる制度ではありません。

損益通算と損失繰越は違う

混同しやすいのが、損益通算と損失繰越控除です。

損益通算は、基本的に同じ年に発生した利益と損失を相殺する考え方です。

これに対して損失繰越控除は、その年に使い切れなかった一定の損失を翌年以降へ持ち越す仕組みです。

例えば2028年に暗号資産全体で300万円の損失が発生したとします。

同じ年に対象となる利益がなければ、その年だけでは損失を使い切れません。

新制度で一定の要件を満たせば、その300万円を翌年以降3年間繰り越し、将来の対象となる利益から控除することができます。

同一年の調整が損益通算、年をまたいだ調整が損失繰越と考えると分かりやすくなります。

複数の取引所を利用している場合は合算が必要になる

暗号資産投資では複数の取引所を利用する人も少なくありません。

例えば国内取引所Aでビットコインの利益が200万円、国内取引所Bで別の暗号資産の損失が80万円発生しているとします。

税金を計算するときには、一つの取引所だけを見ればよいわけではありません。

その年の対象となる取引全体を集計して所得を計算する必要があります。

取引所ごとに発行される年間取引報告などを利用しながら、他の取引所やウォレットで行った取引も含めて確認することが重要です。

2028年以降は分離課税の対象取引と、それ以外の取引が混在する可能性もあるため、管理はさらに重要になります。

年末には利益だけでなく損失も確認する

暗号資産を保有している場合、年末にはその年にどれだけ利益を確定したかだけでなく、どの取引で損失が確定しているかも確認する必要があります。

ただし、税金を減らすことだけを目的として投資判断をすることには注意が必要です。

損失を確定すれば税負担が減る可能性があっても、その後価格が上昇する可能性があります。

また、売却後に買い戻せば新しい取得価額が形成され、その後の税額計算にも影響します。

税金は投資判断の一要素ですが、税金だけで売買を決めるべきではありません。

2028年以降は所得区分の確認が重要になる

新制度では、一定の特定暗号資産について申告分離課税が導入されます。

一方、制度の対象にならない暗号資産取引については、従来型の課税関係が残る可能性があります。

そのため一人の投資家の中でも、

分離課税の対象となる暗号資産取引

対象外となる暗号資産取引

上場株式の取引

給与所得

といった複数の所得が存在することになります。

税率だけを見てすべての利益と損失を一つにまとめるのではなく、それぞれがどの所得区分に属するのかを確認する必要があります。

結論

暗号資産の損益通算を考えるときに重要なのは、どの利益とどの損失を相殺できるのかを区別することです。

同じ年に複数の暗号資産取引を行い、一方で利益、もう一方で損失が確定している場合には、それらを集計して暗号資産取引全体の所得を計算することになります。

一方、暗号資産の損失を上場株式の利益や給与所得から自由に差し引けるわけではありません。

2028年から一定の暗号資産について申告分離課税が導入されても、株式と暗号資産がまったく同じ所得区分になるわけではない点には注意が必要です。

さらに新制度では、一定の損失を翌年以降3年間繰り越せる仕組みも導入されます。

暗号資産投資では、利益がいくら出たかだけを見るのではなく、同じ年の損失と相殺できるのか、翌年以降へ繰り越せるのか、他の金融商品の所得とは区分されるのかまで確認することが重要になります。

参考

日本経済新聞 2026年8月15日朝刊 資産運用の税、ルール点検 暗号資産、28年に税率変更

日本経済新聞 2026年8月15日朝刊 金融商品として規制

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