税務調査では、「重加算税」という言葉を耳にする機会があります。その要件として知られているのが「隠蔽又は仮装」です。一方、近年の税制改正では、所得税法や法人税法にも「隠蔽仮装行為」という言葉が登場し、これまで以上に重要な意味を持つようになりました。
一見すると同じような言葉ですが、どのような違いがあるのでしょうか。また、この規定が実際に適用されると、納税者にはどのような影響が生じるのでしょうか。
今回は、「隠蔽仮装行為」と重加算税との関係について整理します。
隠蔽仮装行為とは
隠蔽仮装行為とは、所得や税額の計算の基礎となる事実を意図的に隠したり、事実と異なるように装ったりする行為をいいます。
例えば、
・売上を帳簿に記載しない
・架空経費を計上する
・取引資料を改ざんする
・資産の存在を意図的に隠す
といった行為が代表例です。
税法では、このような行為は単なる記載ミスや計算誤りとは区別され、悪質な不正行為として扱われます。
重加算税との関係
国税通則法では、「隠蔽し、又は仮装した」と認められる場合に重加算税が課されます。
重加算税は、本来納めるべき税額に対して追加の税負担を課す行政上の制裁です。
つまり、
・故意性があること
・事実を隠したり偽装したりしていること
が重要な判断要素になります。
従来は、この重加算税が最も重い行政上の制裁として位置付けられていました。
令和4年度改正で何が変わったのか
令和4年度税制改正では、新たな制裁措置が導入されました。
隠蔽仮装行為に基づいて申告書を提出した場合などには、一定の場合を除き、その所得を得るために支出した必要経費や法人の損金を認めないという制度です。
これは非常に大きな改正でした。
通常、所得税は
収入 − 必要経費
によって所得を計算します。
しかし、この規定が適用されると、必要経費が認められず、収入に近い金額へ課税される可能性があります。
場合によっては、重加算税以上に厳しい結果となることもあります。
必要経費として認められるケース
もっとも、全ての経費が一律に否認されるわけではありません。
例えば、
・帳簿に適切に記載されているもの
・証拠書類によって確認できるもの
・税務調査で実在が確認されたもの
などは、例外的に必要経費として認められる可能性があります。
つまり、帳簿や証憑の整備状況が極めて重要になります。
二重の制裁になる可能性
この制度については、学者や実務家からさまざまな議論があります。
もし「隠蔽仮装行為」と「重加算税の隠蔽・仮装」が同じ意味であると考えれば、
・必要経費が認められない
・重加算税も課される
という二重の負担になる可能性があります。
本税そのものが増えた上で、さらに重加算税まで課されるため、納税者への負担は非常に重くなります。
一方で、両者を別の概念と考える余地があるのかという点も議論されていますが、法律上は文言が非常に似ているため、簡単ではありません。
実務上のポイント
税務調査では、「経費を実際に支払ったか」だけでは十分ではありません。
重要なのは、
・帳簿に適切に記録しているか
・証憑を保存しているか
・取引の実態を説明できるか
という点です。
帳簿外で管理している経費や、証拠が不十分な支出は、大きなリスクとなる可能性があります。
日頃から適正な記帳と証憑保存を徹底することが、将来の税務リスクを防ぐ最も有効な対策といえるでしょう。
結論
隠蔽仮装行為は、これまで重加算税の要件として理解されることが多い概念でした。しかし、令和4年度税制改正によって、必要経費や損金の不算入という新たな制裁とも結び付くようになりました。
その結果、悪質と判断された場合には、本税の増加と重加算税が重なる可能性もあり、納税者への影響はこれまで以上に大きくなっています。
今後は、この規定がどのような事案で適用されるのか、裁判例や実務の運用が重要な判断材料となるでしょう。税務調査に備えるためにも、帳簿の正確な記載と証拠書類の保存という基本を改めて見直すことが大切です。
参考
税のしるべ 2026年7月27日
連載「続・傍流の正論~税相を斬る」第100回/重加の論点⑦、「隠蔽仮装行為」との関係
所得税法第45条
法人税法
国税通則法第68条