暗号資産の申告分離課税とは何か 2028年から税金はどう変わるのか編

税理士
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ビットコインなどの暗号資産で大きな利益を得ると、税金が非常に高くなる。

これまで暗号資産投資について、こうしたイメージを持つ人は少なくありませんでした。

その大きな理由が、個人の暗号資産取引による利益が原則として総合課税の対象となっていることです。

ところが、この仕組みは大きな転換点を迎えます。

2028年1月1日以降、一定の暗号資産取引について、株式や投資信託などに近い申告分離課税が導入される見込みだからです。

暗号資産投資の税金はどのように変わるのでしょうか。

現在の暗号資産は原則として総合課税

現在、個人が暗号資産を売却したり、商品購入に利用したりすることで得た利益は、原則として雑所得に区分されます。

そして雑所得は基本的に総合課税の対象です。

総合課税とは、対象となる所得を給与所得など他の所得と合算し、その合計額を基礎として所得税を計算する仕組みです。

所得税には累進税率が採用されています。

課税所得が増えるにつれて、所得税率は5%、10%、20%、23%、33%、40%、45%と段階的に上昇します。

そのため、給与所得が多い人が暗号資産でも大きな利益を得ると、高い税率が適用される可能性があります。

これが上場株式との大きな違いです。

株式は所得の大きさにかかわらず税率が基本的に一定

上場株式の売却益は、原則として申告分離課税です。

申告分離課税では、給与所得などとは切り離して税額を計算します。

上場株式の譲渡益については、所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%を合わせた20.315%が基本です。

例えば給与所得が多い人でも、株式の売却益そのものに累進税率が適用されるわけではありません。

これに対して現在の暗号資産は、原則として給与などと合算されます。

同じ投資による利益でも、株式と暗号資産では税制上の扱いに大きな違いがあるのです。

2028年から一定の暗号資産に申告分離課税

この違いが2028年から大きく縮小する見込みです。

2028年1月1日以降、一定の要件を満たす暗号資産取引について申告分離課税が導入されます。

所得税率は15%となり、住民税5%と合わせて20%を基本とする仕組みです。

復興特別所得税については別途考慮する必要があります。

重要なのは、暗号資産の利益を給与など他の所得と切り離して計算するようになることです。

例えば給与所得が非常に多い人が暗号資産で1000万円の利益を得たとしても、その暗号資産の利益に所得税45%の最高税率がそのまま適用される仕組みではなくなります。

暗号資産税制が株式投資の税制に大きく近づくことになります。

所得税15%と住民税5%が基本になる

新制度では、対象となる暗号資産取引の利益について所得税15%、住民税5%という税率が基本になります。

合わせて20%です。

例えば対象となる暗号資産を100万円で取得し、その後600万円で売却したとします。

単純化すると利益は500万円です。

税率を20%として考えれば、税額は100万円となります。

現在の総合課税では、暗号資産以外の所得が多ければ、この500万円が高い所得税率の対象になる可能性があります。

申告分離課税になれば、他の所得の大きさによって暗号資産の所得税率が上昇する仕組みではなくなります。

大きな利益を得る投資家ほど、制度変更による影響が大きくなる可能性があります。

すべての暗号資産が対象になるわけではない

ここで注意しなければならないのが、暗号資産なら何でも申告分離課税になるわけではないことです。

対象となるのは、制度上の要件を満たした特定暗号資産に関する一定の取引です。

金融庁の登録を受けた国内の暗号資産取引業者が取り扱う暗号資産などが制度の中心になります。

つまり、ビットコインだから自動的に分離課税、暗号資産だから一律20%という単純な制度ではありません。

どの暗号資産を、どの業者を通じて、どのような方法で取引したのかが重要になります。

税制上の有利不利を判断するときには、暗号資産の種類だけではなく取引経路まで確認する必要があります。

海外取引所の取引には注意が必要

特に注意したいのが海外の暗号資産取引所です。

国内の登録業者を通じた対象取引と、海外取引所を利用した取引では、税制上の扱いが同じになるとは限りません。

一定の分離課税の対象にならなければ、従来と同様に総合課税となる可能性があります。

例えば同じビットコインを売却したとしても、どこで取引したかによって税制が異なるケースが生じる可能性があるわけです。

2028年以降の暗号資産投資では、取引所選びが取引コストや安全性だけではなく、税制にも関係してくることになります。

申告分離課税でも確定申告は必要になる

税率が株式に近づくからといって、株式の源泉徴収あり特定口座と同じ仕組みになると考えるのは早計です。

暗号資産については、現時点では株式の特定口座のように、取引業者が投資家に代わって税額を計算し、源泉徴収だけで納税を完結させる仕組みとは異なります。

そのため、年間を通じて課税対象となる利益が生じた場合には、原則として確定申告が必要になります。

申告分離課税という言葉の申告が示すように、自分で所得を申告して税金を納めることが基本となります。

税率が変わることと、確定申告が不要になることは別の問題です。

2028年以降は取引記録がさらに重要になる

申告分離課税になっても、利益を計算するためには取得価額を把握しなければなりません。

いつ暗号資産を取得したのか。

いくらで取得したのか。

いつ売却したのか。

いくらで売却したのか。

別の暗号資産と交換したのか。

商品やサービスの購入に利用したのか。

こうした取引を記録しておかなければ、正しい所得計算はできません。

さらに新制度では、対象となる取引と対象外となる取引が併存する可能性があります。

国内登録業者、海外取引所、自分で管理するウォレットなど複数の取引経路を利用している人ほど、記録管理が重要になります。

損失を翌年以降に繰り越せる仕組みも重要になる

今回の制度変更では、税率だけを見るのでは不十分です。

一定の暗号資産取引から生じた損失について、翌年以降に繰り越して将来の利益と相殺できる仕組みも重要になります。

株式では、一定の要件を満たして確定申告をすると、上場株式等の譲渡損失を翌年以降3年間繰り越せる制度があります。

暗号資産についても、一定の損失を3年間繰り越せる仕組みが導入されることになります。

暗号資産は価格変動が非常に大きい金融資産です。

ある年に大幅な損失が発生し、翌年に大きな利益が出ることも珍しくありません。

損失を年をまたいで利用できるようになることは、税率の引下げと並んで重要な制度変更です。

税率が下がる人ばかりではない

申告分離課税になると、すべての投資家の税金が安くなるように見えるかもしれません。

しかし、必ずしもそうではありません。

総合課税では所得が少ない人には低い所得税率が適用されます。

例えば課税所得が低い人であれば、所得税率が5%や10%となることがあります。

こうした人については、現在の総合課税の方が所得税だけを比較すると負担が小さくなるケースがあります。

一方、高所得者や暗号資産で大きな利益を得た人にとっては、分離課税への移行による影響が大きくなる可能性があります。

制度改正はすべての人に同じ効果をもたらすわけではありません。

売却を2028年まで待つべきかは別問題

税制が変わると聞けば、2028年まで暗号資産を売らない方が得なのではないかと考える人もいるでしょう。

しかし、税金だけで売却時期を決めることには注意が必要です。

暗号資産は価格変動が大きいためです。

仮に税率が下がっても、待っている間に価格が大幅に下落すれば、税負担の減少以上に投資利益が減ってしまう可能性があります。

反対に価格が上昇する可能性もありますが、それを確実に予測することはできません。

投資判断では税金を考慮しながらも、価格変動リスク、資産配分、投資目的などを総合的に考える必要があります。

暗号資産が株式に近い金融資産へ変わっていく

今回の税制改正には、単なる税率変更以上の意味があります。

暗号資産が投資対象として広く利用されるようになり、金融商品としての性格が強まっているからです。

金融商品取引法による規制強化も進み、投資家保護や市場の公正性を確保する仕組みが整備されます。

税制についても株式などに近い申告分離課税へ移行します。

規制と税制の両面から、暗号資産を投資対象となる金融資産として扱う方向が鮮明になってきたといえます。

結論

2028年1月1日以降、一定の暗号資産取引について、現在の総合課税から申告分離課税へ移行する見込みです。

所得税率は15%、住民税率は5%が基本となり、給与など他の所得とは切り離して税額を計算する仕組みになります。

特に高所得者や暗号資産で大きな利益を得る人にとって、大きな制度変更となります。

ただし、すべての暗号資産やすべての取引が対象になるわけではありません。

どの暗号資産を、どの取引業者を通じて取引するのかによって税制上の扱いが変わる可能性があります。

また、申告分離課税になっても確定申告や取引記録の管理が不要になるわけではありません。

暗号資産税制は、単に税率が下がるという話ではなく、暗号資産そのものが日本の金融制度の中で本格的な投資資産として位置付けられていく転換点として捉えることが重要です。

参考

日本経済新聞 2026年8月15日朝刊 資産運用の税、ルール点検 暗号資産、28年に税率変更

日本経済新聞 2026年8月15日朝刊 金融商品として規制

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