即時償却とは何か 普通償却との違いと設備投資した年の法人税が減る仕組み編

税理士
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企業が機械や建物などを購入した場合、その購入代金を原則として購入した年に全額経費にすることはできません。

設備は何年間にもわたって使用するため、取得価額を使用期間に応じて少しずつ経費にしていく減価償却という仕組みがあるからです。

ところが、一定の設備投資を促すための税制では、通常より早く減価償却できる特別償却が認められることがあります。

さらに、取得価額のほぼ全額を事業の用に供した年度に償却できる仕組みが即時償却です。

令和8年度税制改正で創設された大胆な投資促進税制でも、この即時償却が重要な選択肢となっています。

普通償却とは何か

まず理解しておきたいのが普通償却です。

会社が1億円の機械を購入したからといって、原則として購入した年度に1億円全額を損金にできるわけではありません。

税法では、機械や建物などの減価償却資産について耐用年数などに応じて取得価額を各年度へ配分します。

これが減価償却です。

そのうち通常の減価償却方法によって計算される償却が普通償却です。

たとえば高額な製造設備を導入しても、その税務上の費用は何年間かに分けて計上されることになります。

設備を購入したときには多額の資金が会社から出ていく一方、税務上は取得価額の全額がすぐに損金になるわけではありません。

ここに設備投資と税負担のタイミングのずれが生じます。

特別償却とは何か

政策的に企業の設備投資を促したい場合、通常より早く減価償却を認める制度が設けられることがあります。

それが特別償却です。

普通償却に加えて一定額を追加で償却できるため、設備を取得した初期の年度に多くの費用を計上できます。

結果として課税所得が小さくなり、その年度の法人税負担を軽くする効果があります。

大胆な投資促進税制では、この特別償却をさらに大きくした即時償却が認められています。

即時償却なら取得価額を早期に費用化できる

大胆な投資促進税制では、一定の要件を満たす特定機械装置等について、取得価額から普通償却限度額を控除した金額に相当する金額を特別償却できます。

つまり、普通償却と特別償却を合わせることによって、対象となる取得価額を事業の用に供した年度に大きく償却できる仕組みです。

これが即時償却です。

たとえば対象設備の取得価額が1億円だったとします。

通常であれば、税務上のルールに従って何年間かに分けて減価償却していきます。

即時償却を適用できれば、その費用化を初年度に大幅に前倒しできます。

設備投資をした直後は多額の資金が必要になるため、初年度の法人税負担を抑えられることには大きな意味があります。

即時償却で法人税が減る仕組み

法人税は基本的に法人の所得を基礎として計算されます。

減価償却費として損金になる金額が大きくなれば、その分だけ課税所得は小さくなります。

たとえば即時償却前の課税所得が3億円あり、対象となる設備について通常より8,000万円多く償却できたとします。

単純化すれば、課税所得は3億円から2億2,000万円へ減少します。

その結果、その年度に支払う法人税などの負担も小さくなります。

特に大規模な設備投資では、即時償却による課税所得への影響も大きくなります。

即時償却は税金が永久になくなる制度ではない

ここで注意したいのが、即時償却を利用すれば、その償却額に対応する税金が永久になくなるわけではないという点です。

通常の減価償却であれば、設備の取得価額を何年間かに分けて損金にします。

即時償却では、それを早い段階で損金にします。

設備について最終的に損金となる総額そのものが大幅に増えるというよりも、損金にする時期を前倒しする効果が中心です。

初年度に多く償却すれば、その後の年度に計上できる減価償却費はその分だけ少なくなります。

したがって、即時償却の本質は課税時期の繰延べにあります。

それでも即時償却に意味がある理由

税金を永久に減らすわけではないのであれば、即時償却には意味がないようにも見えます。

しかし、企業経営では税金をいつ支払うかも重要です。

設備投資をした直後に法人税負担を軽くできれば、その分だけ会社に資金を残すことができます。

残った資金を次の設備投資や研究開発、人材採用、運転資金などへ回すこともできます。

将来支払う税金を現在支払わずに済むことには、資金繰り上の価値があります。

特に金利のある世界では、同じ金額の税金でも現在支払う場合と数年後に支払う場合では経済的な意味が異なります。

赤字企業では効果が異なる

即時償却を考える際には、会社の利益状況も重要です。

そもそも所得が十分になければ、償却費を増やしてもその年度の法人税を大きく減らせない場合があります。

一方、設備投資を行う年度に大きな利益が出ている企業では、即時償却によって課税所得を圧縮する効果が表れやすくなります。

そのため、単に即時償却できるから利用するというのではなく、現在の利益と将来の利益を見ながら判断する必要があります。

税額控除とは効果が違う

大胆な投資促進税制では、即時償却だけでなく税額控除を選択することもできます。

機械装置などでは取得価額の7%、建物、建物附属設備、構築物では4%相当額の税額控除が用意されています。

この2つは似ているようで、税金を軽減する仕組みが異なります。

即時償却は課税所得を減らす制度です。

一方、税額控除は一定額を法人税額から直接差し引く制度です。

したがって、即時償却と税額控除のどちらが適しているかは、設備投資額だけで決めることはできません。

会社の利益水準や将来の収益見通しなどを含めて考える必要があります。

この違いについては次回詳しく見ていきます。

結論

即時償却とは、設備の取得価額を通常の減価償却よりも早い段階で損金にできる仕組みです。

普通償却では何年間かに分けて費用化するところを、特別償却によって事業の用に供した年度へ大きく前倒しします。

その結果、設備投資を行った年度の課税所得が小さくなり、法人税負担を抑えることができます。

ただし、即時償却によって税金そのものが永久になくなるわけではありません。

本質的な効果は、将来計上する減価償却費を前倒しし、法人税を支払う時期を後ろへずらすことにあります。

それでも設備投資直後に資金を会社へ残せることには大きな意味があります。

大胆な投資促進税制を理解するうえでは、即時償却による課税の繰延べと、法人税額を直接減らす税額控除を区別することが重要です。

参考

税のしるべ 2026年9月14日 8年度法人税関係法令の改正対応で措置法通達、大胆な投資促進税制関係など

国税庁 2026年9月4日 租税特別措置法関係通達 法人税編 の一部改正について

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