マンションから戸建てへの需要シフトとは何か 住宅価格高騰で購入者が動く理由編

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東京の住宅市場で、マンションから戸建てへ購入需要が移る動きが注目されています。

東京カンテイによると、2026年7月の東京23区における新築小規模戸建て住宅の平均希望売り出し価格は9321万円でした。前年同月比では14.6%上昇しています。

9000万円を超える戸建ては決して安くありません。

それでも戸建てが選ばれる背景には、マンション価格がそれ以上に上昇しているという事情があります。

高くなった戸建てが、高騰したマンションと比較すると割安に見える。

この価格関係の変化によって、これまでマンションを購入していた層の一部が戸建てへ移り始めています。

住宅市場で起きている「需要シフト」です。

需要シフトとは何か

需要シフトとは、消費者がある商品から別の商品へ購入対象を移すことです。

住宅市場で考えると、当初はマンションを購入しようとしていた人が、価格や広さなどを比較した結果、戸建てを購入するような動きです。

例えば住宅購入予算が9000万円の世帯があったとします。

以前なら希望する地域で新築マンションを購入できたのに、価格上昇によって同じ条件のマンションが1億2000万円になったとします。

予算を3000万円増やすのは簡単ではありません。

そこで購入者は、

中古マンションへ移る

狭いマンションを選ぶ

郊外へ移る

戸建てを選ぶ

といった選択をします。

このうち戸建てを選ぶ人が増えれば、マンションから戸建てへの需要シフトが起こります。

戸建てが安くなったわけではない

現在の需要シフトを理解するうえで最も重要なのは、戸建て価格そのものが下がっているわけではないことです。

東京23区の新築小規模戸建ての平均希望売り出し価格は9321万円です。

前年同月比では1184万円も上昇しています。

それでもマンションと比較すると戸建てに割安感が生まれています。

東京カンテイが2015年1月から3月期を100として価格を指数化したところ、2026年4月から6月期には、新築戸建てが173だったのに対して、新築マンションは207、中古マンションは263でした。

つまり戸建ても大幅に上昇していますが、マンションの上昇はさらに大きかったのです。

重要なのは絶対価格ではなく相対価格です。

相対的な割安感とは何か

例えば10年前に、

マンション6000万円

戸建て6000万円

だったとします。

その後、

マンション1億円

戸建て8000万円

になったとします。

戸建ても2000万円値上がりしています。

決して安くなっていません。

しかしマンションと比較すると2000万円安くなっています。

購入者からすると「戸建てのほうがお得ではないか」という感覚が生まれます。

これが相対的な割安感です。

現在の東京では、この価格差が住宅選択を変える要因になっています。

同じ予算なら戸建てのほうが広い場合がある

住宅購入者にとって価格と同じくらい重要なのが広さです。

特に子育て世帯では、

子ども部屋

仕事部屋

収納

リビング

など一定の居住空間が必要になります。

マンション価格が高騰すると、予算を変えずに購入しようとすれば専有面積を小さくする必要があります。

一方、戸建てでは小さな土地でも3階建てにすることで床面積を確保できる場合があります。

同じ9000万円なら、狭いマンションより広い戸建てを選ぶ。

こうした判断が増えても不思議ではありません。

マンションには購入後の固定的な支出がある

マンションと戸建てを比較するときには、販売価格だけでなく購入後の費用も違います。

マンションでは一般に、

管理費

修繕積立金

駐車場代

などが必要になります。

例えば管理費と修繕積立金で毎月5万円かかれば、年間60万円です。

30年間なら、金額が変わらないという単純な計算でも1800万円になります。

さらに自動車を所有して駐車場代を支払えば負担は増えます。

もちろん戸建ても外壁や屋根、設備などの修繕費が必要です。

それでも毎月の管理費や駐車場代がないことを魅力と考える購入者はいます。

戸建ては土地を単独で所有できる

資産価値という面でもマンションと戸建てには違いがあります。

戸建てでは一般に土地と建物を所有します。

建物は築年数とともに老朽化しますが、土地は建物のように築年数によって劣化するものではありません。

将来建物が古くなっても、立地のよい土地なら一定の需要が残る可能性があります。

マンションでも敷地に対する権利を持ちますが、土地を単独で自由に利用するわけではありません。

「東京の土地を自分で持つ」という点に魅力を感じる購入者もいます。

戸建ての成約件数も増えている

需要シフトは実際の取引件数にも表れています。

東日本不動産流通機構によると、東京23区の新築戸建て成約件数は2025年度に1809件となり、前年度比75.5%増加しました。

住宅価格が上昇しているにもかかわらず、成約件数も増えています。

もちろん成約増加には供給状況などさまざまな要因が影響します。

それでもマンション高騰によって戸建てへ購入者が移っているという見方を補強する動きといえます。

戸建て価格の上昇は、建築費だけでなく需要増加によっても支えられている可能性があります。

マンションと戸建てでは需要の性格が違う

マンション価格が戸建て以上に上昇した理由を考える場合、購入者の違いも重要です。

戸建ては自分や家族が住むための実需が中心です。

一方、マンションには実需だけでなく投資需要も入ります。

賃貸収入を得る。

将来の値上がりを期待する。

資産として保有する。

こうした目的で購入されるマンションもあります。

特に都心のマンションには国内外の投資資金が流入することがあります。

住宅として必要とする人だけでなく投資家も購入するため、価格が所得水準から離れて上昇することがあります。

戸建て価格には会社員の購買力という壁がある

戸建ては実需中心であるため、購入者の所得と住宅ローン借入能力が価格に大きく影響します。

住宅会社が2億円の戸建てを大量に供給しても、それを購入できる実需世帯が少なければ売れません。

そのため戸建て価格には、一般の購入者が住宅ローンを利用して買える金額という制約があります。

マンションにも当然同じ側面はありますが、投資需要が加わる物件では価格形成が異なる場合があります。

マンション価格と戸建て価格の上昇速度が違う背景の一つです。

戸建て需要が増えれば戸建ても値上がりする

マンションから戸建てへ需要が移ることは、購入者にとって必ずしも良いことばかりではありません。

戸建てを買いたい人が増えれば、戸建て価格にも上昇圧力がかかるからです。

マンションが高くなる。

購入者が戸建てへ移る。

戸建て需要が増える。

戸建て価格も上昇する。

この流れが起きる可能性があります。

実際、東京23区の新築小規模戸建て平均希望売り出し価格は前年同月比14.6%上昇しています。

「マンションが高いから戸建てを買えばよい」という選択肢も、いつまでも同じ価格で存在するとは限りません。

次に起きるのは郊外への需要シフト

戸建て価格まで上昇すると、購入者はさらに別の選択肢を探します。

その一つが郊外です。

東京23区で9000万円。

川崎で6000万円。

横浜で5000万円台。

さらに離れれば価格を抑えられる地域もあります。

都心への通勤時間を少し長くする代わりに、住宅価格を下げるという選択です。

つまり住宅価格高騰は、

マンションから戸建て

都心から郊外

新築から中古

という複数の需要シフトを生みます。

住宅購入者は限られた予算の中で条件を調整していくことになります。

住宅価格高騰は住宅選びの優先順位を変える

住宅価格が比較的安ければ、購入者は多くの希望条件を満たすことができます。

駅近。

新築。

広い。

都心。

マンション。

しかし価格が上昇すると、すべての条件を満たすことが難しくなります。

そこで何かを諦める必要が出てきます。

マンションを諦めて戸建てにする。

都心を諦めて郊外へ移る。

新築を諦めて中古にする。

広さを諦めて駅近を選ぶ。

住宅価格高騰とは、購入者に「何を優先するか」を迫る現象でもあります。

結論

マンションから戸建てへの需要シフトとは、マンション価格の高騰によって購入者が戸建てへ購入対象を移す動きです。

重要なのは、戸建てが安くなったわけではないことです。

東京23区の新築小規模戸建て平均希望売り出し価格は9321万円で、前年同月比14.6%上昇しています。

それでもマンション価格の上昇がさらに大きいため、戸建てに相対的な割安感が生まれています。

同じ予算でより広い居住空間を確保しやすいこと。

管理費や修繕積立金など毎月の支出がないこと。

土地を所有できること。

こうした戸建ての特徴も購入者を引きつけています。

一方、マンションから戸建てへ需要が移れば、今度は戸建て価格が上昇します。

そして東京23区の戸建てまで高くなれば、次は横浜、川崎、千葉、埼玉など郊外へ需要が広がる可能性があります。

住宅価格高騰は一つの市場だけで終わりません。

マンションから戸建てへ。

都心から郊外へ。

購入者が予算に合わせて移動することで、価格上昇が周辺市場へ波及していきます。

東京の住宅市場を見るときには、マンションと戸建てを別々に考えるのではなく、購入者が両者の間をどのように移動しているのかを見ることが重要になっています。

参考

日本経済新聞 2026年8月13日朝刊「新築戸建て9000万円台続く 7月東京23区 マンション高騰で需要増」

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