相続税や贈与税では、現金のように価値が明確な財産だけでなく、不動産や非上場株式、山林、借地権など、市場価格が分かりにくい財産も数多く存在します。これらを公平に評価するための基準として定められているのが「財産評価基本通達」です。
最近では、非上場株式や貸付用不動産を利用した相続税対策の見直しが議論される中で、この財産評価基本通達が注目されています。
今回は、財産評価基本通達の役割や法律との違い、実務での重要性について解説します。
財産評価基本通達の役割
財産評価基本通達とは、相続税や贈与税を計算する際に財産をどのような基準で評価するかを定めた国税庁の通達です。
相続財産には、土地や建物、非上場株式、ゴルフ会員権、美術品など多種多様な財産があります。それぞれを個別に時価で判断すると、納税者ごとに評価額が異なり、公平性を保つことが難しくなります。
そこで、全国共通の評価ルールとして財産評価基本通達が設けられています。
例えば、
- 土地は路線価方式や倍率方式
- 家屋は固定資産税評価額
- 非上場株式は会社規模などに応じた評価方式
などが定められており、税務実務ではこれらの基準に従って評価が行われます。
法律との違い
財産評価基本通達は法律ではありません。
相続税法は「時価によって評価する」という基本原則を定めていますが、「時価」を具体的にどのように算定するかまでは細かく規定していません。
そこで国税庁が全国の税務署で統一的な運用を行うために定めた行政上のルールが財産評価基本通達です。
そのため、法令そのものではないものの、実務上は極めて重要な基準として扱われています。
裁判でも、特別な事情がない限り、財産評価基本通達による評価には合理性があると判断されることが少なくありません。
財産評価基本通達が重要視される理由
相続税では評価方法が少し変わるだけで税額が大きく変わることがあります。
例えば、不動産では実勢価格より相続税評価額が低くなるケースが多くあります。
また、非上場株式では会社が保有する資産の内容によって評価額が大きく変動します。
そのため、どの評価方法を採用するかは、相続税額そのものを左右する重要な要素になります。
近年では、評価ルールを利用した過度な節税策が問題となり、貸付用不動産や非上場株式の評価方法について見直しが進められています。
つまり、財産評価基本通達は単なる計算ルールではなく、税制の公平性を維持するための重要な仕組みでもあります。
実務では毎年の改正にも注意が必要
財産評価基本通達は、一度定められれば変わらないものではありません。
税制改正や社会経済情勢の変化、裁判例などを踏まえ、必要に応じて改正が行われています。
近年では、
- マンション評価方法の見直し
- 貸付用不動産評価の見直し
- 非上場株式評価の見直し
などが相次いで議論されています。
そのため、これまで有効だった相続対策が将来も有効とは限りません。
相続や事業承継を検討する際には、最新の通達改正の内容まで確認することが重要です。
税理士や企業経営者にも欠かせない知識
財産評価基本通達は、税理士だけが知っていればよいものではありません。
中小企業の経営者にとっては、自社株評価や事業承継対策に直結します。
また、不動産オーナーにとっては土地評価や貸付用不動産の評価方法に大きく関係します。
さらに、相続対策を考える個人にとっても、財産評価の基本的な考え方を理解しておくことで、将来の税負担を適切に見積もることができます。
制度を正しく理解し、適法な範囲で活用することが、円滑な資産承継につながります。
結論
財産評価基本通達は、相続税や贈与税における財産の評価方法を定めた国税庁の重要なルールです。
法律ではありませんが、全国で公平な課税を実現するための実務上の基準として広く活用されています。
近年は、不動産や非上場株式を利用した節税策への対応として、評価ルールの見直しが相次いでいます。
今後も制度改正が続く可能性があるため、相続対策や事業承継を考える際には、財産評価基本通達の最新動向を継続的に確認することが重要になるでしょう。
参考
税のしるべ
2026年8月3日
「法人が不動産を購入した後の株式の評価方法を見直しへ、『3年しばり』に短いの声」