1on1面談では、上司が一方的にアドバイスをするだけでは、部下が主体的に行動することは難しくなります。重要なのは、部下自身が現状を整理し、課題を見つけ、解決策を考え、自ら行動を決めることです。
前回紹介したライフバランスシートも、「気づき」を引き出すことを目的としたツールでした。その気づきを具体的な行動へ結び付ける方法として、多くの企業で活用されているのがGROWモデルです。
GROWモデルは、質問を通じて相手の考えを整理し、自発的な行動を促す対話のフレームワークとして知られています。
GROWモデルとは
GROWモデルは、1980年代に英国でコーチング手法として体系化された代表的なフレームワークです。
GROWは4つの英単語の頭文字から構成されています。
- Goal(目標)
- Reality(現状)
- Options(選択肢)
- Will(意思・行動)
この順番で対話を進めることで、相手が自ら答えを見つけやすくなります。
管理職が答えを教えるのではなく、質問を通じて部下自身が考えることを支援する点が特徴です。
Goal まず目標を明確にする
最初に確認するのは、目指す姿です。
例えば、
- どのような状態になりたいですか
- 半年後にはどうなっていたいですか
- 今回の1on1で何を持ち帰りたいですか
といった質問を投げかけます。
目標が曖昧なままでは、現状とのギャップも見えません。
まずはゴールを言葉にすることで、面談の方向性が明確になります。
Reality 現状を客観的に整理する
次に、現在の状況を確認します。
ここでは事実と感情の両方を整理することが重要です。
例えば、
- 現在はどのような状況ですか
- 何が順調ですか
- 何に困っていますか
- その原因は何だと思いますか
と質問します。
ライフバランスシートで健康や家庭の点数が低かった場合も、その背景を丁寧に聞くことで、本当の課題が見えてきます。
Options 解決策を一緒に考える
現状を整理した後は、改善策を考えます。
ここで上司がすぐ答えを示してしまうと、部下は受け身になってしまいます。
例えば、
- 他にはどんな方法がありますか
- 一番実現しやすい方法は何ですか
- 周囲に協力してもらえることはありますか
- 小さく始めるなら何ができますか
と問いかけます。
選択肢を広げることで、本人が納得できる方法を見つけやすくなります。
Will 具体的な行動を決める
最後は実際の行動です。
良いアイデアが出ても、実行しなければ成果にはつながりません。
例えば、
- 最初の一歩は何ですか
- いつ始めますか
- いつまでに実施しますか
- 実行できたか次回確認しましょう
と確認します。
「健康を改善したい」という目標であれば、
「週に2回、昼休みに15分歩く」
のように具体的な行動まで落とし込むことが重要です。
GROWモデルを1on1で活用するメリット
GROWモデルには多くの利点があります。
第一に、部下が主体的に考える習慣が身に付きます。
第二に、管理職が一方的に指示を出す面談から、対話を中心とした面談へ変わります。
第三に、自分で決めた行動であるため、実行への意欲が高まりやすくなります。
さらに、継続的に活用することで、部下の問題解決能力や自己成長を支援することができます。
活用時の注意点
GROWモデルは万能ではありません。
部下が極度のストレスを抱えている場合や、明らかな知識不足が原因の場合には、管理職が適切な助言や支援を行うことも必要です。
また、質問攻めになってしまうと尋問のように感じられることがあります。
相手の話を最後まで聴き、考える時間を十分に確保しながら進めることが大切です。
GROWモデルは「質問の型」ではなく、「相手の成長を支援する姿勢」があって初めて効果を発揮するフレームワークなのです。
結論
GROWモデルは、「目標」「現状」「選択肢」「行動」という4つのステップで対話を進める、世界中で活用されているコーチングの基本フレームワークです。
1on1面談でこの考え方を取り入れることで、上司が答えを与えるのではなく、部下自身が考え、自ら行動を決める対話へと変わります。
ライフバランスシートで得られた気づきを具体的な行動につなげるためにも、GROWモデルは非常に相性の良い手法といえるでしょう。
参考
企業実務 2026年8月号
「自己採点×質問で部下が自分自身を見つめ直すライフバランスシート」