所得税には、配偶者を扶養している人の税負担を軽減する制度として、「配偶者控除」と「配偶者特別控除」があります。
名前が似ているため混同されがちですが、適用される条件や対象となる所得額は異なります。
2026年度税制改正では、「年収178万円の壁」の見直しに合わせて、配偶者控除や配偶者特別控除に関係する所得要件も引き上げられました。そのため、従来より多く働いても控除を受けられる範囲が広がっています。
この記事では、配偶者控除と配偶者特別控除の違いや、所得要件の見直しについて解説します。
配偶者控除とは何か
配偶者控除とは、一定の所得以下の配偶者を扶養している場合に、納税者の所得から一定額を控除できる制度です。
この制度は、配偶者の所得が少ない世帯の税負担を軽減することを目的としています。
配偶者控除を受けるためには、納税者本人の所得や配偶者の所得、生計を一にしていることなど、税法で定められた要件を満たす必要があります。
配偶者の所得が一定額を超えると、配偶者控除は適用されなくなります。
配偶者特別控除とは何か
配偶者特別控除は、配偶者控除を受けられない場合でも、配偶者の所得が一定の範囲内であれば所得控除を受けられる制度です。
配偶者控除と配偶者特別控除は別々の制度ではありますが、配偶者の所得に応じて段階的につながる仕組みになっています。
そのため、「配偶者控除が受けられないから、すぐに控除がゼロになる」というわけではありません。
配偶者の所得が増えるにつれて、控除額が徐々に減少していく仕組みが採用されています。
両制度の違い
両制度の最も大きな違いは、配偶者の所得要件です。
配偶者控除は、配偶者の所得が比較的少ない場合に適用されます。
一方、配偶者特別控除は、配偶者控除の対象から外れた後でも、一定の所得までは控除を受けられる制度です。
つまり、配偶者特別控除は、配偶者控除を補完する役割を担っています。
この仕組みにより、配偶者が少し多く働いたからといって、控除が突然なくなることを防いでいます。
2026年度改正で何が変わるのか
2026年度税制改正では、配偶者控除などの所得要件が見直されました。
給与収入のみの場合、配偶者控除に関係する年収の基準は123万円から136万円へ引き上げられました。
また、配偶者特別控除についても、満額控除を受けられる範囲が169万円まで拡大され、控除が段階的に減少する上限も207万円まで引き上げられています。
この見直しによって、配偶者が従来より多く働いても、控除を受けられるケースが増えることになります。
実務で注意するポイント
企業の年末調整では、配偶者の年間所得見込みを正確に確認することが重要です。
特に、パートやアルバイトとして働く配偶者は、年の途中で勤務日数や勤務時間が変わることも多く、当初の見込みと実際の収入が異なる場合があります。
そのため、申告書の内容だけではなく、年間収入の見込みを確認し、適用できる制度を正しく判断することが求められます。
また、従業員の中には「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の違いを十分に理解していない人も少なくありません。
企業が制度を分かりやすく説明することも、年末調整を円滑に進めるためには重要です。
制度を正しく理解することが大切
「配偶者の年収が少し増えると扶養から外れる」というイメージだけで働き方を決めてしまう人もいます。
しかし、実際には配偶者特別控除によって税負担が段階的に変化する仕組みとなっています。
さらに、所得税の配偶者控除と社会保険上の扶養は制度が異なります。
税金だけでなく社会保険制度も合わせて確認し、自分の家庭に適した働き方を考えることが大切です。
結論
配偶者控除と配偶者特別控除は、いずれも配偶者を扶養する世帯の税負担を軽減するための制度ですが、適用される所得要件や控除の仕組みが異なります。
2026年度税制改正では、所得要件が引き上げられ、配偶者が従来より多く働いても控除を受けやすくなりました。
年末調整では配偶者の年間所得を正確に確認し、適用できる制度を適切に判断することが重要です。
制度の違いを理解することで、「年収の壁」にとらわれ過ぎない、より柔軟な働き方を考えることができるでしょう。
参考
企業実務 2026年8月号(2026年8月)「160万円から178万円へ!『年収の壁』の変化と“源泉所得税”の実務対応」 石井秀治 著