所得税には、家族を扶養している人の税負担を軽減するためのさまざまな所得控除があります。その代表的な制度が「扶養控除」です。
扶養控除は、子どもや親など一定の親族を扶養している場合に適用されます。2026年度税制改正では、「年収178万円の壁」の見直しに伴い、扶養控除に関係する所得要件も引き上げられました。これにより、扶養される人が従来より多く働いても、扶養控除を受けられる範囲が広がっています。
この記事では、扶養控除の対象や年齢要件、今回の税制改正による変更点について解説します。
扶養控除とは何か
扶養控除とは、一定の要件を満たす扶養親族がいる場合に、納税者の所得から一定額を差し引くことができる所得控除です。
扶養親族を養うためには生活費や教育費、医療費などの負担が生じます。
そのため、扶養家族のいる世帯といない世帯の税負担を公平にする目的で設けられています。
扶養控除を受けるためには、扶養親族の年齢や所得、生計を一にしていることなど、税法上の要件を満たす必要があります。
扶養控除の対象
扶養控除の対象となるのは、配偶者以外の一定の親族です。
例えば、子どもや父母、祖父母、兄弟姉妹などが該当する場合があります。
ただし、誰でも対象になるわけではありません。
納税者と生計を一にしていることや、一定以下の所得であることなど、税法で定められた条件を満たす必要があります。
なお、配偶者については扶養控除ではなく、「配偶者控除」や「配偶者特別控除」が適用されます。
年齢要件
扶養控除では、扶養親族の年齢によって取扱いが異なります。
特に、16歳以上の扶養親族が所得税の扶養控除の対象となります。
また、19歳以上23歳未満については、2026年度税制改正により、新たに特定親族特別控除が創設されました。
さらに、高齢の扶養親族については、同居の有無などに応じて控除額が異なる制度も設けられています。
このように、扶養控除は年齢区分によって適用される制度が異なるため、年齢の確認は非常に重要です。
所得要件の改正
2026年度税制改正では、扶養控除に関係する所得要件が見直されました。
給与収入のみの場合、扶養控除の対象となる年収基準は123万円から136万円へ引き上げられています。
これは、「年収178万円の壁」への見直しに合わせて行われた改正です。
扶養される人が以前より多く働いても、扶養控除を受けられる範囲が広がったことで、働き控えの解消につながることが期待されています。
年末調整で注意すること
扶養控除は、年末調整で適用される重要な所得控除の一つです。
企業は、扶養控除等申告書に記載された内容だけで判断するのではなく、扶養親族の年齢や年間所得見込みなどを確認する必要があります。
特に、パートやアルバイトをしている子どもの収入は、年初の見込みと年末の実績が異なることも少なくありません。
そのため、扶養控除の適用可否を慎重に確認することが求められます。
社会保険の扶養とは別制度
扶養控除を理解するうえで注意したいのが、税法上の扶養と社会保険上の扶養は別制度であることです。
所得税で扶養控除の対象になっていても、健康保険や年金では扶養にならない場合があります。
逆に、社会保険では扶養に該当していても、所得税では扶養控除を受けられないケースもあります。
制度ごとに要件が異なるため、「扶養」という言葉だけで判断しないことが大切です。
結論
扶養控除は、子どもや親など一定の親族を扶養している人の税負担を軽減するための所得控除です。
2026年度税制改正では、扶養控除に関係する所得要件が見直され、給与収入のみの場合の年収基準は123万円から136万円へ引き上げられました。
また、大学生年代を対象とする特定親族特別控除も創設され、「年収の壁」による働き控えの解消が期待されています。
年末調整では扶養親族の年齢や所得を正確に確認し、税法上の扶養と社会保険上の扶養を混同しないことが、適切な実務対応につながるでしょう。
参考
企業実務 2026年8月号(2026年8月)「160万円から178万円へ!『年収の壁』の変化と“源泉所得税”の実務対応」 石井秀治 著