住宅ローンの金利が上昇するなか、固定期間終了後の金利が想定以上に高くなり、借り換えを考える人も増えてくるでしょう。現在の住宅ローンが年1.5%で、借り換え先が年1.0%なら、年0.5%も低くなるため得に見えます。しかし、住宅ローンの借り換えには事務手数料や登記費用などがかかります。また、同じ金利差でも住宅ローン残高や残りの返済期間によって得られる効果は大きく違います。借り換えを判断するときに重要なのは金利差だけではなく、借り換え費用を含めた総返済額を比較することです。
住宅ローンの借り換えとは何か
住宅ローンの借り換えとは、現在利用している住宅ローンを別の住宅ローンに切り替えることです。
一般的には新しい金融機関から住宅ローンを借り、その資金で現在の住宅ローンを一括返済します。
その後は新しい金融機関に対して住宅ローンを返済していきます。
借り換えを行う主な目的の一つが、金利を下げて利息負担を軽減することです。
例えば現在の住宅ローン金利が年1.7%で、年1.0%の住宅ローンへ借り換えられれば、年0.7%の金利差があります。
住宅ローン残高が大きく、残りの返済期間が長ければ、大きな利息軽減効果が期待できます。
ただし、金利が下がった分がそのまま利益になるわけではありません。
借り換えには費用が発生するからです。
借り換えの損益分岐点とは
借り換えの損益分岐点とは、借り換えによって減少する利息などの負担と、借り換えに必要な費用がほぼ同じになる境目と考えることができます。
例えば借り換えによって将来の利息が100万円減るとしても、借り換え費用が100万円かかるのであれば、単純計算では経済的なメリットはほとんどありません。
一方、利息が150万円減り、借り換え費用が50万円なら、差額の100万円が借り換えによるメリットになります。
したがって、
借り換えによる返済負担の減少額
から
借り換えに必要な諸費用
を差し引いて考える必要があります。
この差額が十分に大きいかどうかが重要です。
金利差0.3%が一つの目安になる理由
住宅ローンの借り換えでは、現在の金利と借り換え後の金利に一定以上の差があるかが重要になります。
日本経済新聞の記事では、住宅ローン比較診断サービスを運営するMFSの塩沢崇氏が、両者に0.3%程度の差があれば借り換えでメリットが見込めるとしています。
例えば現在の金利が年1.5%で、借り換え後が年1.2%なら、金利差は年0.3%です。
現在の金利が年1.7%で、借り換え後が年1.0%なら、金利差は年0.7%になります。
金利差が大きいほど、基本的には借り換えによる利息軽減効果も大きくなります。
ただし、0.3%という数字だけで借り換えを決めることはできません。
住宅ローン残高や残存期間によって結果が大きく変わるからです。
ローン残高が大きいほど金利差の影響も大きい
住宅ローンの利息は、基本的に住宅ローン残高に対して発生します。
そのため、同じ年0.3%の金利差でもローン残高によって影響は異なります。
例えば単純化して考えると、
住宅ローン残高1000万円に対する年0.3%
と
住宅ローン残高3000万円に対する年0.3%
では、金額への影響が違います。
残高1000万円なら年0.3%は3万円相当です。
残高3000万円なら年0.3%は9万円相当です。
実際の住宅ローンでは毎月元金が減っていくため、この単純計算の金額がそのまま利息軽減額になるわけではありません。
それでも住宅ローン残高が大きいほど、金利差の影響が大きくなるという基本的な考え方は同じです。
残りの返済期間も重要になる
住宅ローン残高と同じくらい重要なのが、残りの返済期間です。
例えば住宅ローン残高が2000万円残っていたとしても、残り返済期間が3年しかなければ、低い金利を利用できる期間も短くなります。
一方、同じ2000万円でも残り返済期間が20年あれば、金利差による影響が長期間続きます。
そのため借り換えによるメリットも大きくなりやすくなります。
借り換えを考えるときには、
現在の住宅ローン金利
借り換え後の住宅ローン金利
だけではなく、
現在の住宅ローン残高
残りの返済期間
を一緒に見る必要があります。
10年固定終了時は借り換えを検討しやすい時期
10年固定などの固定期間選択型では、固定期間終了時が借り換えを検討する重要なタイミングになります。
35年返済で住宅ローンを組み、10年後に固定期間が終了したのであれば、単純に考えれば残り返済期間は約25年あります。
住宅ローン残高もまだ相当残っている可能性があります。
この状態で固定期間終了後の適用金利が大きく上昇するのであれば、借り換えによる効果が大きくなる可能性があります。
日本経済新聞の記事でも、住宅ローン比較診断サービスの借り換え希望者について、現在のローンの残り返済期間で最も多かったのが25年から26年と紹介されています。
一般的な35年返済から考えれば、借り入れから約10年経過した時期にあたります。
固定期間終了が住宅ローンを見直す大きな節目になっていることがうかがえます。
事務手数料を忘れてはいけない
借り換えでは新しい住宅ローンを契約するため、金融機関に支払う融資事務手数料などが必要になります。
事務手数料の設定方法は金融機関や商品によって異なります。
一定額を支払うタイプもあれば、借入金額に一定割合を掛けて計算するタイプもあります。
借入金額に応じて事務手数料が決まる商品では、借り換える住宅ローン残高が大きいほど手数料も大きくなる可能性があります。
低い金利だけを見て借り換え先を決めると、手数料まで含めた場合には思ったほどメリットが出ないこともあります。
適用金利と諸費用をセットで比較することが必要です。
登記関連費用も発生する
住宅ローンでは住宅や土地に抵当権が設定されるのが一般的です。
借り換えをすると、現在の金融機関の住宅ローンを完済するため、既存の抵当権を抹消する手続きが必要になります。
そして新しい金融機関のために、新たな抵当権を設定します。
そのため、
抵当権抹消登記
抵当権設定登記
などの費用が発生します。
登録免許税のほか、手続きを司法書士へ依頼すれば司法書士報酬も必要です。
住宅ローンの借り換えでは、こうした登記関連費用まで含めて計算する必要があります。
総返済額で比較する
借り換えの損得を判断するうえで最も分かりやすい方法の一つが、現在の住宅ローンをそのまま返済した場合と、借り換えた場合の総負担額を比較することです。
現在の住宅ローンを継続した場合について、今後支払う元金と利息を確認します。
次に借り換え後について、元金と利息に加えて借り換え諸費用も計算します。
そのうえで両者を比較します。
例えば、
現在のローンを継続した場合の今後の総返済額が2500万円
借り換え後の総返済額が2350万円
借り換え諸費用が50万円
だったとします。
この場合、借り換え後の実質的な負担は2400万円です。
単純化すれば、100万円程度の負担軽減効果が期待できることになります。
実際には金利タイプや将来の金利変動なども考える必要がありますが、このように諸費用を含めて比較することが重要です。
変動金利への借り換えでは将来の金利も考える
借り換え前後の金利を比較するときに、もう一つ注意したいことがあります。
借り換え先が変動金利の場合です。
例えば固定期間終了後の金利が年1.7%となり、現在の変動型住宅ローンへ年1.0%で借り換えられるとします。
現時点では年0.7%の差があります。
しかし変動金利は将来も年1.0%が続くとは限りません。
今後さらに金利が上昇すれば、借り換えによる利息軽減効果は小さくなる可能性があります。
そのため変動型への借り換えでは、
現在の金利で比較する
だけではなく、
金利がさらに上昇した場合でも返済できるか
という家計の耐久力も確認する必要があります。
借り換えは単なる節約ではなく、住宅ローンの金利リスクを組み替える行為でもあります。
借り換えは早めに検討する
固定期間終了後の金利が高くなりそうだからといって、固定期間終了日の直前に借り換えを考え始めるのでは遅い場合があります。
借り換えには新しい金融機関による審査があります。
必要書類の準備や契約、現在の金融機関への一括返済手続き、抵当権に関する手続きなども必要です。
日本経済新聞の記事では、固定期間終了時期の3カ月程度前から確認作業や検討を始めるのが無難との専門家の指摘も紹介されています。
固定期間終了後の金利を確認したうえで、現在の借り換え金利と比較し、メリットがありそうなら早めに具体的な試算を始めることが重要です。
結論
住宅ローンの借り換えでは、現在の金利より借り換え後の金利が低ければ必ず得になるわけではありません。
借り換えには融資事務手数料や登記関連費用などが発生するからです。
また、同じ年0.3%の金利差でも、住宅ローン残高が大きく残り返済期間が長い人と、残高が少なく完済まで数年しかない人では借り換え効果が異なります。
したがって借り換えを検討するときには、金利差、住宅ローン残高、残り返済期間、借り換え諸費用をまとめて比較する必要があります。
特に10年固定の終了時には、まだ20年以上の返済期間が残っているケースがあります。
固定期間終了後の金利が大きく上昇するのであれば、借り換えによって負担を軽減できる可能性があります。
大切なのは金利差だけを見て判断することではありません。
現在の住宅ローンを続けた場合と借り換えた場合について、諸費用まで含めた総負担額を比較することです。
それが住宅ローン借り換えの損益分岐点を考える基本になります。
参考
日本経済新聞 2026年8月8日朝刊 住宅ローン「10年固定」のワナ 想定外の高金利が適用