女性の定年にも目を向けるべき理由とは何か 均等法第一世代が迎える新たな課題編

人生100年時代
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1986年に男女雇用機会均等法が施行されてから40年が経過しました。当時、新たな時代を切り開いた女性たちの多くが、いま定年を迎える世代になっています。

これまで定年制度や再雇用制度は、家族を支える男性社員を前提として設計されることが少なくありませんでした。しかし、女性の就業継続率が高まり、長年働き続けた女性が増えた現在では、その前提を見直す時期に来ています。

女性の定年問題は、単なる男女平等の課題ではありません。企業の人材活用、社会保障制度、リスキリング、健康経営など、多くのテーマと深く関わる重要な経営課題となっています。

均等法第一世代とは

男女雇用機会均等法は1986年4月に施行されました。この法律により、募集・採用・配置・昇進などにおける男女差別が禁止され、日本企業の雇用慣行は大きく変化し始めました。

この時代に社会へ出た女性たちは「均等法第一世代」と呼ばれています。

もっとも、制度が整ったからといって職場環境がすぐに変わったわけではありません。当時は結婚や出産を機に退職する女性も多く、仕事と家庭を両立できる環境は十分ではありませんでした。

そのような状況の中でも働き続けた女性たちが、現在では定年を迎える年代となっています。

女性の定年予備軍は急速に増えている

総務省の統計では、45歳から59歳までの正規雇用女性は年々増加しています。

かつては「女性は途中で退職する」という前提で人事制度が設計されることもありましたが、その前提は既に現実と合わなくなっています。

企業にとっては、女性の定年後の活躍をどのように支援するかが重要なテーマになっています。

コース別雇用管理制度が残した影響

均等法施行後、多くの企業では総合職と一般職を分けるコース別雇用管理制度が導入されました。

総合職は転勤や管理職への登用を前提とした職種であり、一般職は定型業務を中心とする職種でした。

当時は多くの女性が一般職として採用されました。その結果、

・異動経験が少ない

・管理職経験が少ない

・専門性を高める機会が限られる

・昇給・昇進が抑えられる

というキャリア形成になったケースも少なくありませんでした。

現役時代の経験の差は、定年後の再雇用や再就職にも影響を及ぼします。

再雇用後の活躍の場が限られる理由

再雇用制度では、これまでの経験や専門性が重要になります。

しかし、長年定型業務を担当してきた人は、新しい役割を任される機会が限られる場合があります。

その結果、

・担当できる仕事が少ない

・賃金が低くなりやすい

・再就職先が見つかりにくい

といった課題が生じることがあります。

女性が意欲を持って長く働き続けるためには、現役時代から多様な職務経験を積める環境づくりが欠かせません。

リスキリングが定年前後を左右する

近年、多くの企業がリスキリングに取り組んでいます。

定年後も活躍できる人材を育てるためには、

・ITスキル

・データ分析

・マネジメント

・営業企画

・人材育成

など、新たな能力を身につける機会を提供することが重要です。

学び直しは若手だけのものではありません。

50代以降に新しいスキルを習得することで、再雇用後の仕事の幅を広げることができます。

女性特有の健康課題も考慮する必要がある

女性は更年期以降、健康面でさまざまな変化を経験します。

例えば、

・更年期症状

・乳がん

・子宮内膜症

・骨粗しょう症

など、年齢とともに健康上の課題が増える傾向があります。

こうした事情を考慮せず、一律にフルタイム勤務だけを前提とすると、働き続けたくても続けられない人が増える可能性があります。

健康経営の観点からも、女性特有の健康課題への理解が求められています。

柔軟な働き方が人材確保につながる

定年後の働き方は、フルタイムだけではありません。

例えば、

・週3~4日勤務

・短時間勤務

・在宅勤務

・ジョブシェア

・プロジェクト単位での勤務

など、多様な選択肢を用意することで、経験豊富な人材を活用できます。

これは女性だけでなく、介護や健康上の事情を抱える男性にとっても有効な制度です。

今後の人手不足社会では、「働ける人が働き続けられる環境」を整えることが企業競争力にも直結すると考えられます。

定年制度そのものを見直す時代へ

これまでの定年制度は、男性中心の働き方を前提に設計された面がありました。

しかし、女性の正規雇用者が増え、共働き世帯が主流となった現在では、多様なキャリアや健康状態を踏まえた制度設計が必要です。

再雇用制度を単なる雇用延長と考えるのではなく、一人ひとりの経験や能力を生かせる新たなキャリア形成の機会として位置付けることが重要です。

企業が女性の定年後の活躍にも目を向けることは、多様な人材を最大限に生かす人的資本経営の実践につながるでしょう。

結論

男女雇用機会均等法の施行から40年が経過し、均等法第一世代の女性たちが定年を迎える時代になりました。しかし、多くの企業の定年制度や再雇用制度は、依然として男性中心の働き方を前提としている部分があります。

現役時代のキャリア形成やリスキリングの充実、女性特有の健康課題への配慮、柔軟な勤務制度の整備などを進めることで、女性が定年後も意欲を持って働き続けられる環境を整えることができます。

人手不足が深刻化する中で、女性の豊富な経験や知識を生かすことは、企業の持続的な成長にも大きく貢献するでしょう。

参考

日本経済新聞 2026年8月6日 朝刊 私見卓見「女性の定年にも目を向けて」

総務省「労働力調査」

男女雇用機会均等法(昭和61年施行)

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