日本では高齢化の進展に伴い、医療費が年々増加しています。限られた医療保険財政を維持するためには、質の高い医療を確保しながら医療費を適正化することが重要な課題となっています。
その中心的な役割を担っているのが「後発医薬品(ジェネリック医薬品)」です。
近年では国が使用促進を進めており、多くの薬局で後発医薬品が選択されるようになりました。一方で、「本当に先発医薬品と同じなのか」「安全性に違いはないのか」といった疑問を持つ人も少なくありません。
今回は、後発医薬品の仕組みや先発医薬品との違い、品質・安全性、国が普及を進める理由について解説します。
後発医薬品とは何か
後発医薬品とは、先発医薬品の特許期間や再審査期間が終了した後に、他の製薬会社が製造・販売する医薬品です。
一般には「ジェネリック医薬品」と呼ばれています。
有効成分や効能・効果、用法・用量は原則として先発医薬品と同じです。
一方で、開発段階で大規模な臨床試験を繰り返す必要がないため、開発費を抑えることができ、価格も安く設定されています。
この価格の違いが、医療費抑制につながる大きな理由となっています。
先発医薬品との違い
先発医薬品は、新しい有効成分を発見し、多くの研究開発費や長い開発期間を経て承認されます。
一方、後発医薬品は、すでに有効性や安全性が確認された成分を利用するため、開発費を大幅に抑えることができます。
違いを整理すると、次のようになります。
- 先発医薬品:新薬として開発され、特許によって一定期間保護される
- 後発医薬品:特許終了後に発売され、価格が安い
なお、添加物や錠剤の形状、色、大きさなどは異なる場合がありますが、有効成分は同じです。
品質と安全性
「安い薬だから品質が劣るのではないか」と心配する人もいます。
しかし、日本で販売される後発医薬品は、厚生労働省の承認を受ける必要があります。
承認に当たっては、
・有効成分が同じであること
・体内への吸収速度や吸収量が先発医薬品と同等であること
・品質基準を満たしていること
などが確認されます。
これらの試験をクリアした医薬品だけが販売されるため、適正に承認された後発医薬品は、先発医薬品と同等の有効性・安全性が期待されています。
一方で、過去には一部メーカーで製造管理上の問題が発覚したこともあり、品質管理体制の強化が進められています。
使用促進政策
政府は医療費の適正化を目的として、後発医薬品の使用を積極的に推進しています。
医療機関や薬局でも後発医薬品の使用割合を高める取り組みが行われています。
また、処方箋では医師が特別な理由を示さない限り、薬局で後発医薬品へ変更できる場合があります。
さらに、患者が後発医薬品を選択しやすいよう、薬剤師による説明や情報提供も充実しています。
こうした取り組みにより、日本の後発医薬品の使用割合は大きく向上しました。
患者にとってのメリット
後発医薬品を選ぶ最大のメリットは、自己負担額を抑えられることです。
価格が安いため、長期間薬を服用する慢性疾患の患者ほど、その効果を実感しやすくなります。
また、医療保険全体の支出が抑えられることで、公的医療保険制度の持続可能性を高めることにもつながります。
患者個人だけでなく、社会全体にもメリットがある制度といえます。
後発医薬品と長期収載品の選定療養との関係
2024年度には「長期収載品の選定療養」が導入されました。
これは、後発医薬品があるにもかかわらず、患者が希望して先発医薬品を選ぶ場合には、追加の自己負担が発生する制度です。
この制度は、後発医薬品の利用をさらに促進し、医療費の適正化を図ることを目的としています。
OTC類似薬の追加負担制度と同様に、限られた医療財源を有効活用するための政策の一つと位置付けられています。
今後の展望
日本では今後も高齢化が進み、医療費の増加が見込まれています。
そのため、後発医薬品の安定供給や品質向上はこれまで以上に重要になります。
国は製造体制の強化や品質管理の徹底を進めながら、患者が安心して後発医薬品を選択できる環境づくりを進めています。
今後は、医療費の適正化と安定供給を両立させることが、医薬品政策の大きな課題となるでしょう。
結論
後発医薬品は、先発医薬品と同じ有効成分を持ちながら、開発費を抑えることで価格を低くした医薬品です。
国による厳しい審査を経て承認されており、有効性や安全性は先発医薬品と同等であることが求められています。
高齢化による医療費の増加が続くなか、後発医薬品は患者の自己負担軽減だけでなく、公的医療保険制度を持続可能なものとするためにも欠かせない存在となっています。
参考
厚生労働省「後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」
厚生労働省「後発医薬品の使用促進について」
日本経済新聞 2026年8月6日 朝刊「OTC類似薬の追加負担案 湿布、重症患者は一部例外」