「仕事はスマートフォンだけで十分」という個人事業主やフリーランスが増えています。
請求書の受領、経費の支払い、ネットバンキングでの振り込み、クラウド会計ソフトへの連携まで、多くの業務がスマートフォン1台で完結する時代になりました。
しかし、スマートフォンだけで事業を行っている場合でも、電子帳簿保存法の保存義務は変わりません。
国税庁も電子帳簿保存法Q&Aの改訂で、スマートフォンで授受した電子データについて具体的な考え方を示しています。今回は、スマートフォン利用者が知っておきたい実務上のポイントを解説します。
スマートフォンで受け取ったデータも電子取引
スマートフォンで受け取った電子データは、パソコンで受け取った場合と同じように電子取引に該当します。
例えば、
- メールで届いた請求書
- PDFの領収書
- クラウドサービスからダウンロードした利用明細
- ECサイトの購入履歴
などは、すべて電子取引データです。
「スマホだから例外」という扱いはありません。
電子帳簿保存法で定められた保存要件を満たして保存する必要があります。
スマートフォンだけでも対応は可能
国税庁は、スマートフォンしか保有していない場合でも電子帳簿保存法に対応できることを示しています。
つまり、
- スマホで受領する
- スマホで保存する
- 必要なときに表示できる
という状態であれば、制度上対応することは可能です。
もっとも、保存要件や検索要件などを満たしていることが前提になります。
「スマホに残っているだけ」で十分という意味ではありません。
機種変更には特に注意が必要
今回のQ&Aで新たに分かりやすく示されたのが、機種変更への対応です。
一般的にスマートフォンは数年ごとに買い替えます。
一方で、電子取引データは5年から7年間保存する必要があります。
そのため、
- 新しいスマートフォンへデータを移行する
- 保存期間中は古いスマートフォンを利用できる状態にしておく
などの対応が必要になります。
機種変更と同時にデータを消してしまうと、保存義務を果たせなくなる可能性があります。
データ移行でも改ざん防止が必要
新しいスマートフォンへデータを移す場合にも注意点があります。
単にコピーすればよいわけではありません。
データの移行後も、電子帳簿保存法で求められる改ざん防止措置が維持されている必要があります。
例えば、
- 保存履歴が保たれていること
- 訂正や削除の履歴が適切に管理されること
- システムの保存要件を満たしていること
などが重要になります。
機種変更は税務上も重要な手続きであることを意識しておきましょう。
クラウド保存を活用するという選択肢
スマートフォンだけで保存を続けることに不安を感じる人もいるでしょう。
そのような場合は、クラウドサービスを活用する方法があります。
例えば、
- クラウドストレージ
- クラウド会計ソフト
- 電子帳簿保存法対応サービス
などを利用すれば、機種変更の影響を受けにくくなります。
ただし、「クラウドに保存しているから自動的に法律に対応している」とは限りません。
サービスが電子帳簿保存法の要件を満たしているかを確認することが重要です。
スマートフォン時代だからこそ管理ルールを決める
スマートフォンは便利ですが、個人利用と事業利用が混在しやすいという特徴があります。
そのため、
- 保存場所を決める
- 定期的にバックアップする
- データを削除する前に確認する
- 機種変更前に保存状況を点検する
など、自分なりのルールを決めておくことが大切です。
日頃から適切に管理していれば、税務調査への対応もしやすくなります。
結論
スマートフォンだけで事業を行っている場合でも、電子帳簿保存法への対応は十分可能です。しかし、電子データはパソコンと同じように保存要件を満たして管理しなければならず、特に機種変更時にはデータの移行や保存方法に注意が必要です。
スマートフォンは数年で買い替えることが一般的ですが、電子取引データの保存期間はそれより長くなります。クラウドサービスなども活用しながら、長期間にわたって安全かつ適切に保存できる仕組みを整えることが、これからの個人事業主にとって重要な実務といえるでしょう。
参考
税のしるべ
2026年7月27日
電子帳簿保存法Q&Aを更新、7年度改正を踏まえ電子取引関係は10問追加