老後資金は貯めるだけではもったいない 資産取り崩しという新しい考え方

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老後資金といえば、「いくら貯めれば安心なのか」という話題が中心でした。特に「老後2000万円問題」は、多くの人に老後資金への不安を抱かせた出来事でした。

しかし、近年は新しい視点が注目されています。

それは、「いくら貯めるか」ではなく、「どう使うか」です。

現役時代は資産を増やすことが目的ですが、退職後は資産を上手に取り崩しながら人生を豊かに過ごすことが目的になります。ところが、日本では十分な資産を持っていても、減ることへの不安から使えない人が少なくありません。

今回は、資産を取り崩すという考え方について分かりやすく解説します。

老後は資産を使う時代

現役時代は、給与収入があるため、資産を積み上げる生活になります。

一方、退職後は公的年金を受け取りながら、不足する生活費を金融資産から補う生活へと変わります。

つまり、資産を取り崩すことは失敗ではなく、本来予定していた使い方なのです。

それにもかかわらず、多くの人は預金残高が減ることに強い心理的抵抗を感じます。

「将来もっと必要になるかもしれない」
「長生きしたら足りなくなるかもしれない」

こうした不安から、必要以上に節約し、旅行や趣味まで我慢してしまうケースも少なくありません。

日本の高齢者は資産を減らしていない

各種調査を見ると、高齢者世帯は年齢が上がっても保有資産が大きく減っていない傾向があります。

65歳代でも、70歳代でも、平均的な金融資産は大きく変化せず、多くの人が老後になっても相当額の資産を保有し続けています。

もちろん平均値には個人差がありますが、「老後は資産がどんどん減る」というイメージとは少し異なる現実があります。

つまり、資産を十分に活用できていない人が多いとも考えられるのです。

インフレ時代は預金だけでは目減りする

以前の日本は長く物価が上がらない時代でした。

しかし現在は物価上昇が続いています。

例えば毎年2%ずつ物価が上昇すると、100万円の預金があっても、そのお金で買える商品の量は少しずつ減っていきます。

名目上の金額は変わらなくても、実質的な価値は下がってしまうのです。

そのため、高齢者であっても資産運用を全くしないという選択肢は、以前よりリスクが高くなっています。

老後を二つの期間に分けて考える

近年提案されている考え方が、「老後を二つの期間に分ける」という方法です。

最初は65歳から80歳頃までです。

この期間は、資産を運用しながら必要額を取り崩して生活します。

運用益を得ながら使うことで、資産の減少スピードを緩やかにできます。

そして80歳以降は、資産運用を終了し、預金を計画的に取り崩す期間と考えます。

高齢になると判断能力が低下する可能性もあるため、複雑な運用を続けるよりも、シンプルな資産管理へ移行する考え方です。

80歳時点の目標額を決める

資産計画では、65歳時点の必要額を考えるよりも、まず80歳時点でいくら残したいかを考える方法があります。

例えば、

毎月10万円を公的年金に上乗せして使いたい場合、

20年間では約2400万円が必要になります。

つまり、

80歳で2400万円残っていれば、その後100歳頃まで計画的に取り崩せるという考え方です。

すると逆算して、

65歳から80歳までは資産を運用しながら取り崩すため、65歳時点では約2800万円程度でも目標を達成できる可能性があります。

運用を取り入れることで、最初から4000万円を準備する必要がなくなるというわけです。

運用しながら取り崩す仕組み

この方法では、

年3%程度で資産を運用しながら、

毎年資産残高の約4%を取り崩します。

すると、

資産は毎年少しずつ減るものの、

運用収益があるため減少ペースは緩やかになります。

もちろん毎年必ず3%の運用成果が得られる保証はありません。

しかし、長期間で分散投資を行えば、極端なリスクを避けながら資産寿命を延ばせる可能性があります。

高齢になるほどリスクは下げる

現役時代は20年、30年という長い運用期間があります。

一方、退職後は運用期間が短くなるため、資産配分も見直す必要があります。

一つの考え方として、

今後10年間に必要な生活費を預金で確保し、

それ以外を投資信託などで運用する方法があります。

生活費は預金から支払い、

不足した分だけ投資資産を少しずつ売却します。

この方法なら自然に投資比率が下がっていき、年齢とともにリスクも抑えられます。

現役時代の運用にも良い影響がある

老後の取り崩し計画が決まると、現役時代の資産運用も変わります。

「老後には4000万円必要」と考えるより、

「65歳時点で2800万円あれば十分」と考えられるなら、必要以上に高い運用利回りを狙う必要はありません。

無理なリスクを取らず、安定した資産形成を目指しやすくなります。

老後の出口戦略を考えることは、現役時代の投資にも大きな影響を与えるのです。

結論

老後資金は、「いくら貯めるか」と同じくらい、「どう使うか」が重要です。

資産を減らすことを恐れすぎると、十分なお金があっても豊かな生活を送れない可能性があります。

一方で、計画的な取り崩しと適度な資産運用を組み合わせれば、資産寿命を延ばしながら生活の満足度を高めることも可能です。

人生100年時代では、「資産形成」だけでなく「資産活用」まで考えて初めて、本当の意味で老後設計が完成するといえるでしょう。

参考

日本経済新聞(2026年7月22日夕刊)
マネー相談 黄金堂パーラー〉老後2000万円問題(下)資産取り崩し

日本経済新聞(2026年7月22日夕刊)
有価証券減らしリスク抑制 フィンウェル研究所代表 野尻哲史さん

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