免税事業者からの仕入れ控除はどう変わるか(制度改正編)

税理士
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インボイス制度の導入により、免税事業者からの仕入れに係る仕入税額控除は原則として認められなくなりました。ただし、制度の急激な変化を緩和するため、一定期間に限り控除を認める経過措置が設けられています。本稿では、この経過措置の内容と、令和8年度改正による変更点を整理します。


経過措置の基本構造

インボイス制度では、仕入税額控除を受けるためには、原則としてインボイスの保存が必要です。しかし、免税事業者はインボイスを発行できないため、そのままでは仕入税額控除が一切できなくなってしまいます。

この影響を緩和するため、免税事業者からの仕入れについても、一定割合に限り仕入税額控除を認める経過措置が設けられています。


控除割合の段階的縮減

この経過措置の最大の特徴は、控除割合が段階的に縮減される点にあります。

制度導入当初は、免税事業者からの仕入れについて仕入税額相当額の80%を控除することが認められていました。しかし、令和8年度改正により、この割合は次のように変更されます。

  • 令和5年10月から令和8年9月まで:80%
  • 令和8年10月から令和10年9月まで:70%
  • 令和10年10月から令和12年9月まで:50%
  • 令和12年10月から令和13年9月まで:30%

そして、令和13年9月末をもって、この経過措置は終了します。


なぜ控除割合が引き下げられるのか

このような段階的縮減の背景には、制度の公平性とインボイス制度の定着という2つの目的があります。

まず、公平性の観点です。免税事業者からの仕入れについて控除を認めることは、本来納税されるべき消費税の一部が事業者の手元に残ることを意味します。この点については、制度上の歪みがあると指摘されていました。

次に、制度定着の観点です。控除割合を段階的に引き下げることで、事業者に対してインボイス発行事業者との取引へ移行するインセンティブを与える狙いがあります。


上限額の引き下げ

令和8年度改正では、控除割合の縮減に加えて、適用対象となる金額の上限も見直されています。

従来は、1つの免税事業者等からの仕入れについて、年間10億円まで経過措置の適用が可能でしたが、この上限が1億円へと引き下げられました。

この改正は、制度が大規模取引にまで適用されることによる租税回避のリスクを抑制することを目的としています。


課税仕入れの時期判定の重要性

控除割合は、取引の時期によって判定されるため、課税仕入れの時期が重要な意味を持ちます。

役務の提供の場合には、その役務の提供が完了した日が課税仕入れの時期となります。一方、商品の仕入れの場合には、原則として引渡しの日が基準となります。

例えば、令和8年9月と10月にまたがる取引では、同じ契約であっても、完了日や引渡日によって適用される控除割合が異なることになります。


短期前払費用の取扱い

短期前払費用についても、特有の取扱いがあります。

法人税や所得税において短期前払費用として処理される場合には、消費税においても支払った日の属する課税期間に課税仕入れがあったものとして取り扱われます。

このため、例えば年額の保守料を一括で支払った場合には、その支払時点の控除割合が適用されることになります。


実務への影響

これらの改正は、実務に対して大きな影響を与えます。

まず、免税事業者との取引については、控除割合の低下に伴い、実質的なコストが増加します。そのため、取引先の見直しや価格交渉が必要となるケースも考えられます。

また、控除割合の判定や上限管理など、経理処理の複雑化も避けられません。特に、複数の取引時期が混在する場合には、適用割合の誤りが生じやすくなるため注意が必要です。


制度の本質

この経過措置の本質は、「インボイス制度への完全移行を前提とした過渡的措置」にあります。

最終的には、インボイスの保存がなければ仕入税額控除ができないという原則に収束することが予定されています。したがって、この経過措置に依存した取引関係は、将来的に見直しを迫られることになります。


結論

免税事業者からの仕入れに係る仕入税額控除は、段階的に縮減され、最終的には廃止される方向で制度設計がなされています。

この変化は、単なる控除割合の問題にとどまらず、取引構造や経営判断にも影響を与えるものです。したがって、制度の動向を踏まえたうえで、早期に対応方針を検討することが重要です。

次回は、この控除制度の見直しを踏まえ、制度全体の構造をどのように理解すべきかについて整理していきます。


参考

東京税理士会 全国統一研修会配布資料「インボイス・電帳法等」

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