免税事業者からの仕入れは今後何割控除できるのか 7割、5割、3割へ変わる経過措置編

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

インボイス制度では、適格請求書発行事業者ではない免税事業者などから課税仕入れを行った場合、原則として通常の仕入税額控除を受けることができません。

しかし、インボイス制度の導入と同時に仕入税額控除をすべて認めなくすると、免税事業者との取引に大きな影響が出ます。

そこで、一定期間は仕入税額相当額の一部を控除できる経過措置が設けられています。

令和8年度税制改正では、この経過措置が延長される一方、控除できる割合を段階的に引き下げる仕組みとなりました。

今後は7割、5割、3割という控除割合の変化を意識する必要があります。

インボイスがなければ原則として全額控除できない

消費税の納付税額は、基本的に売上げに係る消費税額から仕入れや経費に係る消費税額を控除して計算します。

この仕組みが仕入税額控除です。

インボイス制度では、仕入税額控除を受けるために、原則として適格請求書などの保存が必要になります。

免税事業者は適格請求書発行事業者になることができないため、免税事業者からの課税仕入れについては原則として通常の仕入税額控除ができません。

ただし、その影響を緩和するために経過措置が用意されています。

現在は80%を控除できる

インボイス制度が始まった令和5年10月1日から、適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れについて、一定の要件のもとで仕入税額相当額の80%を控除できる経過措置が設けられました。

例えば、仕入税額相当額が10万円であれば、その80%に当たる8万円を仕入税額として控除できるという考え方です。

残る20%については控除できません。

インボイスを受け取れない取引でも直ちに控除額が0になるわけではなく、段階的に通常制度へ移行する仕組みです。

令和8年度改正で経過措置が延長された

もともとの制度では、経過措置の控除割合を段階的に縮小し、最終的に仕入税額控除を認めない仕組みとなっていました。

令和8年度税制改正では、この経過措置について適用期間が2年間延長されました。

一方で、同じ控除割合がそのまま続くわけではありません。

経過措置によって控除できる割合は、今後段階的に7割、5割、3割へと引き下げられていきます。

免税事業者との取引を続ける課税事業者にとっては、この割合の変化が実際の消費税負担に影響します。

7割控除とは何か

7割控除の期間では、免税事業者などからの課税仕入れについて、仕入税額相当額の70%を控除します。

例えば、仕入税額相当額が10万円なら、控除できる金額は7万円です。

残る3万円は仕入税額控除できません。

現在の80%控除と比較すると、控除できない部分が20%から30%へ増えることになります。

同じ金額を免税事業者へ支払っていても、経過措置の段階が進むにつれて買手側の消費税負担は増えていきます。

5割控除では半分しか控除できない

次の段階では、仕入税額相当額の50%を控除する5割控除になります。

仕入税額相当額が10万円なら、控除できる金額は5万円です。

残りの5万円は控除できません。

ここまで来ると、適格請求書発行事業者との取引との差がより大きくなります。

取引額が大きい会社ほど、免税事業者などとの取引による消費税負担の差も大きくなる可能性があります。

最終段階では3割控除になる

さらに経過措置が進むと、仕入税額相当額の30%を控除する3割控除となります。

仕入税額相当額が10万円なら、控除できる金額は3万円です。

残る7万円は控除できません。

ここで注意したいのは、個人事業者向けの3割特例と、免税事業者からの仕入れに対する3割控除は別の制度だということです。

3割特例は一定の個人事業者の納付税額を売上税額の30%とする制度です。

一方、ここでいう3割控除は、適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れについて、仕入税額相当額の30%を控除する経過措置です。

同じ3割という表現でも内容はまったく異なります。

経過措置には帳簿と請求書等の保存が必要

経過措置を利用するためには、免税事業者へ代金を支払ったという事実だけでは足りません。

一定事項が記載された請求書等を保存するとともに、経過措置の適用を受ける課税仕入れであることが分かるように帳簿へ記載する必要があります。

インボイスがない取引だから証拠書類を保存しなくてもよいという制度ではありません。

経過措置を利用する取引についても、必要な帳簿と請求書等を適切に保存することが重要です。

免税事業者との取引コストは徐々に変わる

経過措置の控除割合が下がると、同じ価格で仕入れていても課税事業者側の実質的な負担は増えていきます。

例えば、同じ取引について仕入税額相当額が10万円であっても、80%控除なら8万円を控除できますが、30%控除では3万円しか控除できません。

両者の差は5万円です。

取引件数や取引金額が大きくなれば、その影響も積み上がります。

そのため、経理部門だけでなく、仕入先の選定や取引条件を決める部門にとっても重要な問題になります。

取引先ごとのインボイス登録状況を管理する

今後の実務では、取引先が適格請求書発行事業者なのか、それ以外の事業者なのかを継続的に管理することが重要になります。

さらに、適格請求書発行事業者以外との取引については、どの控除割合が適用される時期なのかを確認しなければなりません。

長期契約や年間契約では、契約開始時と支払時で適用される制度が変わる可能性もあります。

単にインボイスの有無を確認するだけでなく、取引時期と経過措置の控除割合をセットで管理する必要があります。

結論

適格請求書発行事業者ではない免税事業者などからの課税仕入れについては、原則として通常の仕入税額控除を受けることができません。

ただし、一定期間は経過措置によって仕入税額相当額の一部を控除することができます。

令和8年度税制改正では経過措置が2年間延長される一方、今後の控除割合は段階的に7割、5割、3割へと引き下げられます。

割合で表すと、それぞれ70%、50%、30%です。

控除割合が低下するほど、免税事業者などとの取引に伴う買手側の消費税負担は大きくなります。

今後は取引先のインボイス登録状況だけでなく、課税仕入れを行う時期と、その時点で適用される経過措置の控除割合を確認することが重要です。

参考

税のしるべ 2026年9月7日 令和8年・役に立つ消費税実務問答集

タイトルとURLをコピーしました