2階建て住宅ローンの最大の特徴は、月々の返済額を抑えられることです。
記事で紹介されたドコモSMTBネット銀行の期日一括返済併用型住宅ローンでは、元金の50%を最終返済日まで据え置きます。
例えば1億円を借りれば、5000万円を最後に一括返済します。
高額な住宅を購入するとき、毎月の返済額が小さくなることは大きな魅力に見えます。
しかし、この住宅ローンが自分に向いているかどうかを判断するとき、本当に見るべき数字は毎月の返済額ではありません。
最後に残る5000万円をどう返すのかです。
高収入だから向いているとは限らない
高額な住宅ローンを利用する人には、高い収入があるケースも多いでしょう。
毎月の収入が多ければ住宅ローンの返済余力も大きくなります。
しかし2階建て住宅ローンでは、現在の収入だけで適否を判断することはできません。
現在年収が高くても、30年後や35年後には働き方が変わっています。
定年を迎えている可能性もあります。
収入が大きく減っていることも考えられます。
最終返済時に5000万円が残るなら、その時点で5000万円を用意できるかを見る必要があります。
十分な金融資産がある人は選択肢が増える
2階建て住宅ローンを考えやすいのは、住宅以外にも十分な金融資産を形成できる人です。
例えば最終返済時に5000万円の元金が残っていても、それを大きく上回る預貯金や金融資産があれば返済方法を選べます。
住宅を売却する。
金融資産から返済する。
両方を組み合わせる。
選択肢が複数あります。
重要なのは、住宅を売らなければ返せない状態と、住宅を売らなくても返せる状態ではリスクが大きく違うことです。
金融資産に余裕があれば、住宅市場が悪い時期に無理に売却する必要も小さくなります。
将来の資金計画が明確な人
元金を最後まで据え置くなら、その間に返済資金を準備する計画が必要です。
例えば5000万円を最終的に返すのであれば、35年後に突然5000万円を用意するのではありません。
毎年少しずつ金融資産を形成していく考え方があります。
月々の住宅ローン返済額が減った分を貯蓄や投資に回す方法も考えられます。
記事でも、通常の住宅ローンとの返済額の差額をNISAの投資信託などに回したいという考え方が紹介されています。
ただし投資による運用益は確定していません。
将来の返済額は決まっていても、将来の運用成果は決まっていないという違いがあります。
投資を続けられる人かどうかも重要
毎月返済額を減らして投資へ回す戦略は、実際に投資を続けて初めて成立します。
住宅ローン返済が月10万円減ったとしても、その10万円をすべて生活費に使ってしまえば金融資産は増えません。
返済負担が軽くなったことで生活水準を上げてしまう可能性もあります。
一方、返済額との差額を長期間にわたって計画的に積み立てられる人なら、将来の一括返済資金を形成できる可能性があります。
金融商品の仕組みだけではなく、自分自身の資金管理能力も問われる住宅ローンです。
住宅売却を前提にする場合
最終返済日に住宅を売却して元金を返す方法もあります。
例えば5000万円の元金が残っているとき、住宅が8000万円で売却できれば、売却代金から住宅ローンを返済できます。
しかし将来の住宅価格は確定していません。
8000万円で売れるかもしれません。
6000万円かもしれません。
4000万円まで下がっている可能性もあります。
住宅売却を出口にするなら、希望する価格で売れるケースだけではなく、価格が下落したケースまで考えておく必要があります。
売却価格が下がっても返せるか
住宅売却を前提とする場合に重要なのは、どの程度の値下がりまで対応できるかです。
例えば最終的な住宅ローン残高が5000万円だとします。
住宅を7000万円で売れるケース。
5000万円でしか売れないケース。
4000万円まで下落するケース。
複数の条件で考えます。
4000万円でしか売れなければ、単純計算では1000万円不足します。
さらに実際の売却では費用が発生する場合があります。
この不足額を金融資産などから用意できるかを確認します。
退職金だけを当てにしない
最終返済時期によっては、退職金を住宅ローン返済に利用することも考えられます。
しかし退職金には老後生活を支える役割もあります。
住宅ローンを完済した結果、老後の生活資金がほとんど残らなくなれば、家計全体では安全とは言えません。
さらに退職金の金額が将来も現在の想定通りとは限りません。
2階建て住宅ローンを利用するなら、退職金だけではなく、預貯金や金融資産など複数の返済原資を考えておくことが重要です。
最後の返済時の年齢を見る
住宅ローンでは借入時の年齢だけでなく、完済時の年齢を見る必要があります。
例えば35歳で35年間の住宅ローンを組めば、70歳まで返済が続きます。
最終返済時に5000万円が残るなら、70歳で5000万円を返す方法を考えなければなりません。
その時点では給与収入が現在より少なくなっている可能性があります。
若いうちなら長期間借りられるというだけでなく、その長い期間の最後に何が起きるのかまで確認する必要があります。
毎月返済額ぎりぎりの人には慎重さが必要
2階建て住宅ローンを使わなければ購入できないほど高額な住宅を選ぶ場合には、特に慎重な検討が必要です。
毎月返済額を小さくすることで何とか家計が成立する状態では、予定外の支出や収入減少への余裕が小さくなります。
さらに最後には大きな元金が残ります。
現在の家計にも余裕がない。
金融資産も十分ではない。
住宅売却以外に返済方法がない。
こうした条件が重なるほど、将来の住宅価格に家計が左右されやすくなります。
住宅を売らなくても返せるかで考える
2階建て住宅ローンを検討するときには、1度住宅売却を計画から外して考えてみる方法があります。
例えば1億円を借りて5000万円が最後に残るとします。
住宅を売らないと仮定した場合、その5000万円を返せるでしょうか。
預貯金。
長期間形成してきた金融資産。
退職金の一部。
その他の資産。
これらを組み合わせても無理なく返済できるなら、住宅を売却するかどうかを自分で選びやすくなります。
反対に住宅を売却しなければ絶対に返せないのであれば、将来の住宅価格への依存度は高くなります。
利用者を選ぶローンという意味
記事では、専門家が2階建て住宅ローンについて利用者を選ぶローンだと指摘しています。
これは単純に高所得者向けという意味ではありません。
最後の返済まで見通せるかどうかが重要です。
十分な金融資産がある。
将来の資産形成を継続できる。
住宅売却以外の返済方法も持っている。
住宅価格が下落した場合にも対応できる。
こうした条件がそろうほど、返済方法の自由度は高くなります。
反対に毎月返済額が安くなることだけを理由に利用すると、将来大きな問題が表面化する可能性があります。
結論
2階建て住宅ローンが向いているかどうかは、現在の収入だけでは判断できません。
記事で紹介された商品では元金の50%を最終返済日まで据え置きます。
1億円借りれば5000万円です。
重要なのは、毎月の住宅ローン返済額を払えるかではありません。
最後の5000万円を返せるかです。
十分な金融資産がある。
長期間にわたって返済資金を形成できる。
住宅価格が下落しても不足額を補える。
住宅を売却しなくても返済できる選択肢がある。
こうした条件を確認する必要があります。
毎月の返済額が小さくなることは、借金が小さくなることではありません。
現在の返済を将来へ移しているだけです。
2階建て住宅ローンを考えるときは、入口である月々の返済額ではなく、出口である最終返済額から逆算する。
それが、この住宅ローンを使いこなせるかどうかを判断する最も重要な視点です。
参考
日本経済新聞 2026年9月17日 朝刊 タワマン購入へ「2階建て」ローン、月々の負担減に落とし穴