健康のためには運動が大切だと分かっていても、毎日の生活に運動時間を組み込むのは簡単ではありません。
仕事や家事に追われていると、30分や1時間を運動のために確保すること自体が負担になります。
そこで発想を変えてみてはどうでしょうか。
最初から1日8,000歩を目指すのではなく、今より1,000歩多く歩くことから始めるのです。
1,000歩であれば、生活の中の小さな工夫でも増やすことができます。
重要なのは、運動を新しい予定として追加するのではなく、すでに行っている生活行動の中に歩く機会を組み込むことです。
いきなり8000歩を目指さない
厚生労働省は、成人について歩行と同程度以上の身体活動を1日60分以上行うことを推奨しています。
歩数にすると1日8,000歩以上が一つの目安です。
しかし、普段4,000歩程度しか歩いていない人が、翌日から8,000歩を目指せば、生活をかなり変えなければなりません。
これでは長続きしない可能性があります。
それよりも、まず現在の歩数を知り、そこから少し増やす方が現実的です。
4,000歩なら5,000歩。
5,000歩なら6,000歩。
小さな目標を積み重ねていく考え方です。
1000歩なら生活の中で増やせる
1,000歩という数字を見ると、それなりに歩かなければならないように感じるかもしれません。
しかし、まとめて歩く必要はありません。
朝に少し歩く。
昼休みに少し歩く。
帰宅時に少し歩く。
買い物で少し歩く。
こうした短時間の歩行を積み重ねればよいのです。
例えば、職場でエレベーターだけに頼らず階段も使う方法があります。
昼食をいつもより少し離れた店まで買いに行くこともできます。
自動車通勤なら、駐車場の少し離れた場所に車を止めることもできます。
一つ一つは小さな行動でも、1日を通して考えると歩数は増えていきます。
通勤は最も利用しやすい
働く世代にとって、歩数を増やす機会として注目したいのが通勤です。
通勤は原則として毎日の行動だからです。
運動のために新しい予定をつくる場合、その予定を毎日続けるには強い意志が必要になります。
一方、通勤は仕事に行く限り続きます。
駅まで少し遠回りする。
駅では階段を利用する。
会社まで少し長い経路を歩く。
自動車通勤なら駐車位置を工夫する。
こうした行動を通勤に組み込めば、運動するかどうかを毎朝判断する必要がなくなります。
習慣化という意味では大きな違いです。
スニーカーが行動を変える
歩数を増やそうとしても、革靴やヒールなど歩きにくい靴では、積極的に歩こうという気持ちになりにくいものです。
そこで注目されているのがスニーカービズです。
福井県では2017年から取り組みを進めており、スニーカービズを実施した日は歩数が平均1,273歩増えたとされています。
歩幅も平均5センチ伸びました。
興味深いのは、大規模な運動施設を整備したわけではないことです。
歩きやすい靴を履くという比較的小さな変化が、実際の行動変化につながっています。
服装や靴といった身近な環境を変えることが、身体活動を増やすきっかけになるわけです。
昼休みも貴重な時間になる
昼休みも歩数を増やしやすい時間です。
昼食を職場の机で済ませ、そのまま仕事を再開すれば、ほとんど歩かないまま午後を迎えます。
反対に、昼食後に少し外を歩くだけでも身体を動かす機会になります。
重要なのは、昼休みに本格的なウオーキングをしようと考えないことです。
数分でも構いません。
コンビニまで歩く。
少し離れた飲食店へ行く。
職場の周辺を一周する。
こうした行動なら仕事のある日でも取り入れやすくなります。
買い物も運動に変えられる
日常生活には、ほかにも歩数を増やせる場面があります。
代表的なのが買い物です。
地方ではスーパーまで自動車で行くことが一般的ですが、自動車を使ってはいけないわけではありません。
店舗入口から少し離れた場所に駐車するだけでも歩く距離は増えます。
大型商業施設なら、目的の店だけを訪れるのではなく、店内を少し歩いてから買い物をする方法もあります。
重要なのは、自動車か徒歩かという二者択一にしないことです。
自動車を利用しながら、その前後に歩く時間をつくることもできます。
車社会の地方では、こうした発想の方が現実的でしょう。
週末だけ頑張るより毎日少し歩く
運動不足を感じると、休日にまとめて運動しようと考えがちです。
もちろん休日の運動にも意味があります。
しかし、身体活動を習慣にするという意味では、平日の生活を見直すことも重要です。
毎日少しずつ歩く仕組みをつくれば、「今日は運動する日かどうか」を考える必要がありません。
歯磨きをするように、通勤や買い物の中で自然に歩く。
健康づくりを意思の力だけに頼らないことが、継続のポイントになります。
スマートフォンは記録装置として使う
現在は多くのスマートフォンで歩数を確認できます。
これを競争の道具ではなく、生活を振り返るための記録として使う方法があります。
例えば1週間の歩数を確認すると、平日は歩いているものの休日になると極端に減っていることがあります。
反対に、自動車通勤では平日の歩数が少なく、休日の買い物や外出時の方が多い人もいるでしょう。
自分がいつ歩いていないのかが分かれば、対策も考えやすくなります。
大切なのは他人の歩数と比較することではなく、自分自身の生活の変化を見ることです。
企業も1000歩を後押しできる
従業員個人だけでなく、企業側にもできることがあります。
スニーカーでの通勤を認める。
昼休みに外出しやすい雰囲気をつくる。
階段を利用しやすくする。
長時間座り続けないよう休憩を促す。
社内で歩数を競わせる必要はありません。
むしろ、身体を動かしやすい職場環境をつくることの方が重要です。
健康経営を特別なイベントにするのではなく、日々の働き方に組み込むという発想です。
完璧を目指さないことが続けるコツ
健康づくりというと、どうしても目標数字を達成することに意識が向きます。
しかし毎日必ず8,000歩を歩かなければならないと考えれば、それ自体が負担になることがあります。
雨の日もあります。
仕事が忙しい日もあります。
体調がすぐれない日もあります。
大切なのは1日単位の達成度だけを見るのではなく、以前より身体を動かす生活になっているかを見ることです。
昨日より少し歩く。
先月より少し歩く。
その程度の変化でも、長く続けば大きな積み重ねになります。
結論
歩数を増やすために、いきなり生活を大きく変える必要はありません。
まずは現在より1,000歩多く歩くことを意識するところから始めてもよいでしょう。
通勤で歩く。
階段を使う。
昼休みに歩く。
買い物で歩く。
駐車場所を少し変える。
一つ一つは小さな工夫です。
しかし、その小さな工夫を毎日の生活に組み込めば、特別な運動時間を設けなくても身体活動量を増やすことができます。
健康づくりで重要なのは、一時的に頑張ることではありません。
頑張らなくても続いてしまう生活をつくることです。
1日1,000歩という小さな一歩から、日常生活そのものを少しずつ変えていくことが、無理なく健康を維持する方法なのではないでしょうか。
参考
日本経済新聞 2026年10月6日朝刊 歩かぬ地方、都市との差1日30分 「スニーカービズ」通勤で歩数稼げ