非上場会社の株式には市場価格がないため、相続税や贈与税では一定のルールに基づいて評価を行います。その代表的な方法の一つが「類似業種比準方式」です。
この方式は、上場会社の株価を参考にして非上場会社の株価を算定するもので、中堅・大企業を中心に広く採用されています。一方で、資産管理会社などでは純資産価額方式が適用されるケースも多く、会社の性格によって評価方法が異なります。
今回は、類似業種比準方式の仕組みや純資産価額方式との違い、株式評価への影響について解説します。
類似業種比準方式とは
類似業種比準方式とは、評価対象会社と業種が似ている上場会社の株価を基準に、非上場株式の価値を算定する方法です。
非上場会社には市場価格が存在しませんが、同じ業種で事業内容が類似している上場会社であれば、市場参加者が評価した株価があります。
そこで、その株価を基準として、評価対象会社の規模や利益などを反映させながら株価を計算する仕組みです。
会社が将来利益を生み出す能力を評価に反映しやすい点が、この方式の大きな特徴です。
計算の考え方
類似業種比準方式では、単純に上場会社の株価を当てはめるわけではありません。
国税庁が公表する類似業種ごとの株価を基準にしながら、評価会社の次のような要素を比較します。
- 配当金額
- 利益金額
- 純資産価額
これらを一定の計算式に当てはめることで、評価会社の株価を求めます。
つまり、利益が安定しており、配当や純資産が充実している会社ほど評価額が高くなる傾向があります。
反対に、利益水準が低下すると株価も下がる可能性があります。
純資産価額方式との使い分け
純資産価額方式は、会社が現在保有している資産や負債を重視する評価方法です。
一方、類似業種比準方式は、会社の収益力や事業価値を重視する評価方法といえます。
例えば、多額の土地や賃貸不動産を保有する資産管理会社では、資産価値が株価に大きく影響するため、純資産価額方式が適用されることが多くあります。
一方、製造業やサービス業など、本業によって利益を生み出している会社では、類似業種比準方式の考え方が適しているケースが多くなります。
また、中会社では両方の評価方法を組み合わせる「併用方式」が採用される場合もあります。
株式評価への影響
類似業種比準方式では、会社の業績が株価に大きく影響します。
利益が増加し、配当が安定している会社では評価額が上昇しやすくなります。
一方で、一時的な利益減少や業績悪化がある場合には、株価が低く評価されることもあります。
また、評価の基準となる類似業種の株価水準も影響するため、市場環境によって評価額が変動する可能性があります。
そのため、自社株の評価額は毎年同じになるとは限らず、経営状況や市場動向によって変化することを理解しておく必要があります。
事業承継では評価方式の確認が重要
中小企業の事業承継では、自社株評価が相続税負担を大きく左右します。
しかし、どの評価方式が適用されるかは、会社規模や業種、資産構成などによって異なります。
「類似業種比準方式で評価されると思っていたが、実際には純資産価額方式の割合が大きかった」というケースも少なくありません。
そのため、事業承継を検討する際には、現在の評価方法だけでなく、将来の会社規模や資産構成の変化も踏まえて検討することが重要です。
結論
類似業種比準方式は、上場会社の株価を基準に非上場株式を評価する代表的な方法です。
配当、利益、純資産などを比較することで、会社の収益力や事業価値を株価に反映できる特徴があります。
一方で、資産保有型会社では純資産価額方式が重視されるなど、会社の性格によって評価方法は異なります。
自社株評価は相続税や事業承継に直結する重要なテーマであり、評価方式の違いや制度改正の動向を正しく理解しておくことが、円滑な資産承継につながるでしょう。
参考
税のしるべ
2026年8月3日
「法人が不動産を購入した後の株式の評価方法を見直しへ、『3年しばり』に短いの声」