事業所税と法人事業税は何が違うのか 名前が似ている二つの地方税を比較する編

税理士
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事業所税と法人事業税は、名前がよく似ています。

どちらにも事業という言葉が入っており、企業が負担する地方税であることから、同じような税金と思われることがあります。

しかし、二つはまったく別の税金です。

法人事業税は、法人が行う事業そのものに対して都道府県が課税する税金です。

一方、事業所税は、一定の都市で事務所や店舗、工場などを使用して事業を行う者に対して課税される税金です。

法人事業税では所得や付加価値額、資本金等の額などが課税に関係しますが、事業所税では事業所床面積と従業者給与総額が重要になります。

名前は似ていても、誰が課税し、何を基準として税額を計算し、何のために使われるのかが異なります。

法人事業税は都道府県が課税する

法人事業税は地方税の一つで、原則として都道府県が法人の行う事業に対して課税します。

会社が事業活動を行うためには、道路をはじめとするさまざまな行政サービスや社会基盤を利用します。

そのため、事業を行う法人にも行政サービスの費用を負担してもらうという考え方があります。

法人事業税は、このような考え方を背景とする税金です。

法人税が国へ納める国税であるのに対し、法人事業税は都道府県へ納める地方税という違いがあります。

また、事業所税が限られた都市だけで課税されるのに対し、法人事業税は事業所税とは異なる課税体系を持っています。

事業所税は一定の都市だけが課税する

事業所税も地方税ですが、すべての自治体で課税されるわけではありません。

東京都区部、政令指定都市、首都圏や近畿圏の特定の市、その他一定の人口要件などを満たす都市が課税団体となります。

2026年には秋田市と福岡県久留米市が人口要件を満たさなくなったことなどから指定を外れ、課税団体は75団体となりました。

つまり、会社が事業所税を負担するかどうかは、事業所がどこに所在しているのかによって変わります。

同じ規模の会社でも、事業所税の課税団体に事業所を置く企業と、それ以外の地域に事業所を置く企業では事業所税の負担が異なります。

ここは法人事業税との大きな違いです。

法人事業税では所得が課税に関係する

法人事業税では、法人の種類や規模などによって課税方式が異なります。

一般的な所得割では、法人の所得を基準として税額を計算します。

基本的には、所得が大きくなれば税負担も大きくなります。

そのため、法人税と同じように企業の利益と税負担が一定程度連動します。

ただし、すべての法人事業税が所得だけを基準としているわけではありません。

一定規模以上の法人には外形標準課税が適用され、所得以外の要素も税額に影響します。

法人事業税を理解するときには、法人の規模や種類によって課税標準が異なることに注意が必要です。

外形標準課税では赤字でも税負担が生じる

外形標準課税の対象となる法人では、法人事業税の一部について所得ではなく、付加価値額や資本金等の額などを基準として課税します。

そのため、会社が赤字で所得割が発生しない場合でも、付加価値割や資本割などの負担が生じることがあります。

この点では、事業所税と似たところがあります。

事業所税も企業利益を直接の課税標準としていないため、赤字企業でも課税される可能性があります。

しかし、赤字でも課税されることがあるという結果が似ているだけで、計算の基準は異なります。

法人事業税の外形標準課税と事業所税を同じものとして考えることはできません。

事業所税の資産割は床面積で計算する

事業所税の一つが資産割です。

資産割は、事業所床面積を基準として計算します。

税率は1平方メートルにつき600円です。

例えば、課税対象となる事業所床面積が3000平方メートルであれば、単純計算で180万円となります。

会社の所得が1億円でも赤字でも、床面積が同じであれば、その損益が直接資産割の計算に反映されるわけではありません。

また、資産割には事業所床面積1000平方メートル以下という免税点があります。

法人事業税には、このような事業所床面積による免税点はありません。

従業者割は給与総額で計算する

事業所税には、もう一つ従業者割があります。

従業者割は、課税対象となる従業者給与総額に0.25%を掛けて計算します。

例えば、従業者給与総額が10億円であれば、単純計算では250万円となります。

ただし、従業者割には従業者数100人以下という免税点があります。

つまり、事業所税では事業活動の規模を床面積と給与という二つの指標で捉えています。

法人事業税の所得割が企業の所得を見るのに対し、事業所税ではオフィスや工場の広さ、そこで働く人への給与といった外形的な事業規模を見ることになります。

同じ給与でも二つの税金で意味が違う

法人事業税の外形標準課税と事業所税では、どちらも人件費に関連する数字が税額に影響する場合があります。

しかし、その仕組みは同じではありません。

外形標準課税の付加価値割では、報酬給与額などを含む付加価値額を基準として税額を計算します。

一方、事業所税の従業者割では、従業者給与総額そのものが課税標準になります。

また、事業所税には100人という免税点があり、従業者の範囲についても独自の取扱いがあります。

給与という同じ数字が登場しても、どの税金のどの計算に使うのかによって意味が異なるため、単純に同じ人件費データをそのまま使えるとは限りません。

課税する自治体も違う

二つの税金では、課税主体も異なります。

法人事業税は都道府県税です。

これに対して事業所税は、原則として一定の市などが課税する市町村税です。

東京都23区については東京都が課税します。

例えば、ある会社が事業所税の課税団体となっている市に工場を持っている場合、法人事業税と事業所税の両方が関係する可能性があります。

法人事業税を納めているから事業所税を納めなくてよいという関係にはありません。

それぞれ別の税金として納税義務を判定する必要があります。

事業所税は目的税という特徴がある

二つの税金では、税収の使われ方にも違いがあります。

事業所税は目的税です。

道路、上下水道など、都市環境の整備や改善に関する事業の費用へ充てることを目的としています。

企業や人口が都市へ集中することで生じる特別な行政需要について、その都市で一定規模の事業を行う事業者にも負担を求めるという考え方です。

これに対して法人事業税は普通税であり、事業所税のように使途が特定の都市環境整備事業に限定される税金ではありません。

この違いを理解すると、なぜ事業所税の課税団体が大都市などに限定されているのかも分かりやすくなります。

法人事業税を払っていても事業所税は別にかかる

企業側からすると、どちらも事業活動に関連する地方税なので、二重に負担しているように感じるかもしれません。

しかし、課税の根拠と課税標準が異なります。

法人事業税は法人が事業を行うことに着目し、所得や外形的な事業規模などを基準として課税します。

事業所税は一定の都市に事業所を設けて事業を行うことに着目し、床面積と給与総額を基準として課税します。

そのため、一つの会社について法人事業税と事業所税の両方が発生することがあります。

さらに法人税、法人住民税、固定資産税などが関係する場合もあります。

企業が負担する地方税は、一つの税金だけで事業活動全体を捉えているわけではありません。

事業所を移転すると事業所税だけ変わることもある

二つの税金の違いは、企業が事業所を移転した場合にも表れます。

例えば、会社が事業所税の課税団体である都市から、事業所税を課税していない自治体へ本社を移転したとします。

法人として事業を続ける以上、法人事業税そのものが単純になくなるわけではありません。

一方、事業所税については所在地が課税団体かどうかが重要なので、課税関係が大きく変わる可能性があります。

また、同じ課税団体内でもオフィスを縮小した結果、床面積1000平方メートル以下になれば資産割が免税となることがあります。

このように、事業所税は事業所の立地や規模の変化を受けやすい税金です。

結論

事業所税と法人事業税は名前が似ていますが、まったく別の地方税です。

法人事業税は原則として都道府県が法人の事業に対して課税し、所得割では法人の所得、外形標準課税では付加価値額や資本金等の額なども税額に関係します。

これに対して事業所税は、一定の都市で事業を行う事業者に課税され、資産割では事業所床面積、従業者割では従業者給与総額を基準として税額を計算します。

また、事業所税には資産割1000平方メートル、従業者割100人という免税点があります。

さらに、法人事業税が都道府県税であるのに対し、事業所税は原則として一定の市などが課税する目的税という違いもあります。

法人事業税を納めているから事業所税はかからないという関係ではなく、一つの企業に両方が課税されることもあります。

二つの税金を区別するポイントは、名前ではありません。

誰が課税するのか、何を課税標準とするのか、そして何のために設けられている税金なのかを見ることが重要です。

参考

税のしるべ 2026年8月10日 事業所税の課税団体が減少、人口減で30万人以上の要件を満たせず

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